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ちあきの星空コラム

第92回 星雲、星団は肉眼で見えるか? (2011/03/04)

肉眼でも見える星雲、星団

M42オリオン大星雲

M42オリオン大星雲


オリオン座とM42オリオン大星雲の位置

オリオン座とM42オリオン大星雲の位置:オリオン座は1等星のベテルギウス、リゲル及び三つ星の存在でとても有名な星座ですが、よく見ると肉眼でオリオン大星雲の存在を確かめることができます。

3月を迎え、日が長くなってまいりました。
午後8時ころに星空を見上げると、南から西の空にかけてはまだ冬の星座が見えていますが、北東の空には春の星座のおおぐま座が明るく輝いています。
ところで、星々に目をこらしてよく見ると、まさか肉眼では見えないと思っている星雲や星団を見ることができます。
といっても明るい天体に限られますが、この時期に見られる冬の星座の中からは、おうし座のプレアデス星団、ヒヤデス星団が見られ、また、オリオン座の中にはM42オリオン大星雲の姿をみつけることができます。春の星座の中ではかに座の中にM44プレセペ星団をみつけることができます。
星雲や星団を確かめるときは、街灯などの明かりが直接目に届かない場所で、月明かりのない夜が望ましく、星座の星と星の間のどの辺にあるかを星座早見や星図で見極めて実際の空で確認します。
野外で星図を使うときは、懐中電灯に赤いセロファンなどをかぶせて眼が星空を見るときに順応しやすい赤色光にして使うと良いでしょう。   

双眼鏡ではもっと見える

肉眼でみつけられたら、双眼鏡でさらにその形状などを確かめましょう。 
また、肉眼でみつからない場合も双眼鏡では見えることがあります。
天体用にもっとも多く使用されている倍率が7倍で、対物レンズの口径が50ミリメートルの双眼鏡(双眼鏡には7×50と表示)を使うと見かけ視界が広く、効率よく対象をみつけるのに最適な観測道具といえますが、7×50双眼鏡では肉眼で見ることができなかった、ぎょしゃ座の散開星団M36、M37及びM38やふたご座のM35星団、おおいぬ座のM41星団などを観ることができます。   

ヒヤデス星団はおうし座の1等星アルデバランとともにみつけましょう。プレアデス星団は和名「すばる」といって古くから親しまれてきた星団です。

天体望遠鏡ではさらに見える

  
当然のことながら天体望遠鏡を使えば、さらに多くの星雲星団をみつけることができます。
 18世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエが小型の天体望遠鏡で観測して作ったM(メシエ)天体カタログでは星雲、星団が110個掲載されていますが、このカタログに掲載されている天体は、現在市販の小型の天体望遠鏡でも口径が8センチ~10センチクラス以上の天体望遠鏡を使えば全て観測することができます。
 天文ファンの中には毎年春にメシエマラソンと称してM天体を観測し、その数を競い合ったり、見え方のちがいなどを参加者の天体望遠鏡を覗きあって、確認したりして楽しんでいます。   

かに座の中心部にあるM44プレセペ星団

かに座の中心部にあるM44プレセペ星団

メシエマラソンのおさそい

神津牧場天文台では4月2日(土)午後6時から翌日の朝まで、メシエマラソンを開催します。競技性よりもM天体を観望し、楽しむイベントとして実施します(神津牧場天文台=群馬県下仁田町南野牧・電話0274-84-2655電話は当日のみ対応)。
ちょっと遠いけれども星見を満喫したい、M天体を自分の目で確かめたいとお考えの方はぜひ参加しましょう!お天気が悪いときは中止となりますが、晴れた夜には私をはじめ天文台のスタッフがM天体をご案内します。
ほかに、つくばに比較的近い位置では、福島県田村市にある星の村天文台でも4月2日(土)メシエマラソンが開催予定です。
いずれも開催地が山間部ですので、防寒対策を十分にしてお出かけください。   

3月の天文情報

曜日月齢天文現象など
26.0明け方の空で月が金星と接近
27.0 
28.0 
29.0 
0.3新月 月が天の赤道を通過(北半球へ) 
1.3啓蟄(二十四節気) 月の距離が最遠
2.3夕空に月と木星が並ぶ
3.3 
4.3 
105.3 
116.3 
127.3 
138.3上弦の月 月の赤緯が最北
149.3 
1510.3夕空で水星と木星が接近
1613.0 
1714.0 
1815.0 
1916.0月が天の赤道を通過(南半球へ)
2017.0満月 月の距離が最近 
2118.0春分の日 春分(二十四節気) 
2219.0 
2320.0水星が東方最大離角(夕方の西空)
2421.0 
2522.0月の赤緯が最南 
2623.0下弦の月
2724.0 
2825.0 
2926.0 
3027.0 
3128.0明け方の空に月と金星が並ぶ

3月の星空

夕空ではまだ冬の星座が輝き、夜が更ける頃 
になると春の星座でいっぱいになるのが3月の星空です。春の星座でもっとも早くから見えているのがかに座、それからしし座が見えてきます。
北の空にはおおぐま座、南にはうみへび座のくねくねとした長い胴体をたしかめましょう。
なお、土星がおとめ座にありますので、おとめ座の1等星スピカとその輝きのちがいをたしかめましょう。土星はあまりチカチカ(キラキラ)とまたたかないでボーと輝いているように見え、スピカはつねにまたたいて見えることでしょう。   

3月の星図(黒)

3月の星空(黒)

3月の星図(白)

3月の星空(白)

3月中旬の午後9時前後の星空です。月及び月明かりの影響は省略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができ、また、プリントアウトして星座さがしにも利用しましょう。この星図及び本コラムでは、アストロアーツ(株)の許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.9」から加工した星図を使用しています。

 

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ  

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。  

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。  

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。  

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。