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ちあきの星空コラム

第115回 木星とシリウスの輝き (2013/02/04)

木星とシリウスどっちが明るい?

木星とシリウスの位置関係

木星とシリウスの位置関係

2月の夜空を仰ぎ見ると、天空には木星が煌々と輝いています。
木星の位置はおうし座の中にあり、すぐ近くにヒヤデス星団や1等星アルデバランがありますが、木星の輝きに圧倒されてなんだか迫力負けしています。
冬の星空は1等星が多く、四季を通じてもっともにぎやかな星空ですが、その中でもひときわ明るい恒星がおおいぬ座のシリウスです。
シリウスの輝きは、全天にある恒星の中でもっとも明るく見える星で、他の星を圧倒する堂々とした輝きを持っています。それもそのはず、シリウスのじっさいの明るさは-(マイナス)1.44等星なのです。
輝く色も青白く、ジェット気流の影響を受けてチカチカとまたたきながら輝いているように見え、とても神秘的に感じられます。
一方、惑星の木星はやや黄色みがかった色に感じられ、あまりまたたきがなく、どっしりとした光を投げかけています。
明るさは-2.5等星ととても明るく輝き、この時期、全天で一番明るく輝いて見えます。
木星とシリウスは明るさも少し違い、色も違い、さらにまたたきがあるなしで、見る人に異なった印象を与えてくれますので、見るときは対比しながら見てみましょう。

木星を天体望遠鏡で見る
木星にはしま模様が見える 撮影:浦辺守

木星にはしま模様が見える 撮影:浦辺守

木星は天体望遠鏡で見ると、木星の周囲を巡るガリレオ衛星はもとより、本体にしま模様が確認できます。
3月にはパンスターズ彗星もやってきますし、もし、天体望遠鏡をお求めになられましたら、まずは木星に天体望遠鏡を向けてみましょう。
ガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ及びカリストの4星)は、公転周期が短く、時間をおいて再度観測すると衛星の相互位置関係がずれていくことが確認できます。さらに木星本体の自転周期は、約10時間と早く時間をおいて観測観測すると、木星本体のしま模様の位置がずれて自転している様子が確認できます。

2月18日には木星と月が接近

2月18日には月と木星が接近し、すぐ近くに見えます。しかも1等星アルデバランを含むヒヤデス星団も近い位置にあり、7倍程度の倍率の双眼鏡では、同一視野内に月、木星、アルデバランが入ってしまいます。
21時40分ころに月と木星がもっとも接近する時刻となりますが、それより前から観察していると、段々と月が星間を移動していく様子が観察できます。

月と木星ヒヤデス星団の接近の様子(18日22時ころ)

月と木星ヒヤデス星団の接近の様子(18日22時ころ)

シリウスを天体望遠鏡で見る

シリウスを天体望遠鏡で見るととても明るく見えますが、恒星は地球との距離が遠いために星の像は大きくならず、木星のように表面模様は見ることができません。
しかし、他の星と比較して、明るさや色の違いなどがわかり、恒星を天体望遠鏡で眺めることも楽しいものです。
また、近くには散開星団M44もあり、星が散らばったように見える星団の姿も楽しむことができます。

彗星の接近にそなえて天体望遠鏡や双眼鏡がほしい?

1997年に見られたヘール・ボップ彗星

1997年に見られたヘール・ボップ彗星

3月~4月にかけて見られるパンスターズ彗星は、天文ファンならずとも楽しみとなります。肉眼で見られるほど明るくなることが予想されますので今のうちから期待感が高まり、この際、天体望遠鏡を買いたいと思っている読者も多いことと思います。肉眼でも見られる彗星ですが、より詳細に見ようとすれば天体望遠鏡で見る方がより拡大して詳細に見ることはできます。
しかし、私は双眼鏡をお奨めします。
双眼鏡は視野が広いため、対象を探しやすく、彗星だけでなく、星雲星団も見ることができますので、天体望遠鏡を買ってからも継続して使い続けることができる便利な道具です。もちろん私も持っています。私のもっている双眼鏡は7×50(倍率7倍、対物レンズ口径が50ミリ)この倍率、口径では夜間でも明るく見える代表格といえ天体観測用に人気があります。
長年、愛用できる性能の良い双眼鏡をこの機会に求め、末永く愛用されることを期待します。

2月の天文情報

曜日月齢天文現象など
20.3
21.3
22.3下弦の月
23.3立春(二十四節気)
24.3
25.3月の赤緯が最南
26.3月の距離が最近
27.3
28.3
1029.3新月
110.8建国記念の日
121.8月が天の赤道を通過(北半球へ)
132.8
143.8
154.8
165.8
176.8水星が東方最大離隔
187.8雨水(二十四節気) 上弦の月  月と木星が接近
198.8月の距離が最遠 月の赤緯が最北
209.8
2110.8
2211.8
2312.8
2413.8
2514.8
2615.8満月
2716.8
2817.8

2月の星空

2月の星空も先月同様に冬の星座で埋め尽くされています。
2月の寒い冬空に、オリオン座やふたご座を仰ぎ見て、そのほかの星座もさがしましょう。寒空の夜空は、上層大気の流れによって星々がまたたき、その輝きは「こんなにたくさんに星があったの?」と驚くほどたくさんの星が見られます。
空気の澄んだ月明かりのない夜には、冬の天の川も見られる可能性があり、多くの輝く星々と天の川が天空から地上の方向へ流れ落ちるように見られる光景はまさに圧巻です。スキーや山間部の温泉などに出かけるチャンスがあれば、そうしたときもぜひ夜空を仰いでみてください。
そうしたときは、星座早見や、星図を参考にして冬の星座探しにもチャレンジしてみましょう。

2月の星空(背景黒)

2月の星空(背景黒)

2月の星空(背景白)

2月の星空(背景白)

2月中旬、21時ころの星空です。月の位置及び月明かりの影響は省略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。このコラムの星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ9」を使用しています
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。