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ちあきの星空コラム

第143回 梅雨時期の星空 (2015/06/02)

6月に見られる天体や天文現象

梅雨時は雨の降らない日も水蒸気が多く、星空も見えにくいのではないかと考えてしまいますが、その日の天候によって星空が良く見える日と見えにくい日がありますので、星見に都合の良い日もあります。あきらめずにじっさいの星空で確かめ、星見を楽しみましょう。
ここでは、6月に見られる天文現象などをご紹介しますので、お天気が良い場合はチャンスを逃さずに観察しましょう。写真に撮ってみるのもいいかもしれません。

金星の東方最大離角

宵の西空に金星(宵の明星)が輝いていることはご存知のことと思いますが、その金星が東方最大離角といって地球から金星を見たときに太陽との離角が東方に最大に離れて見られる日がやってきます。6月7日にこの東方最大離角を迎え、それ以降はまた、太陽との離角がだんだんと小さくなってきます。
この最大離角の頃がもっとも太陽から離れているために金星の姿を長い時間見ることができます。しかも明るさは-(マイナス)4.3等級でほかのどの星よりも明るく見えます。ぜひご覧ください。

金星がプレセペ星団の近くを通る
かに座にあるプレセペ星団に金星が接近

かに座にあるプレセペ星団に金星が接近

その金星が6月13日には、かに座の散開星団プレセペ星団と接近します。
金星は、かに座の中のプレセペ星団のある台形状の星の配列の内側まで入り込みますので、超大接近といえるでしょう。
肉眼でも楽しめますが、双眼鏡や天体望遠鏡を使っての観測も楽しめます。

月や木星とも接近
月と金星と木星の接近

月と金星と木星の接近

金星と地球は、双方が太陽の周りを公転していますので、地球から見て金星は日々星座の中を移動していくように見えます。
同じく星座の中を移動していくように見られる月と木星を含めて宵の西空で6月19日から21日にかけて見ることができます。
つまり、3個の天体が夕焼けが残る西の空に美しく輝く様子が見られるということです。
その木星と金星はその後さらに接近し、7月1日には超大接近します。
肉眼で見ても、天体望遠鏡で見てもこの接近の様子は、きっと感動することでしょう。

金星と木星の大接近

金星と木星の大接近

梅雨時の天文の楽しみ方

梅雨時は星空が見えにくいものですから、晴れたときは逃さず星空観察と行きたいところですが、曇った日には何を楽しめばよいのでしょうか。
雨の日や曇った日には、星の本を多く読むとか、プラネタリウムに行くという方法がありますが、そのほかに、天文マニアであれば天体望遠鏡や双眼鏡をメーカーにオーバーホールに出す期間に利用したり、星の仲間同士の会合などに充てる月にするなどという星の楽しみを行っているようです。
マニアとまではいかなくても天文ファンであれば情報収集を兼ねて天文ショップに出かけるというのも楽しみのひとつになることでしょう。天文ファンにとってはあこがれの天体望遠鏡を身近に見ることができるだけでなく、じっさいに買い物もできますし、星のいろんな情報が入手できる有意義な時間になることも期待できます。
もちろん、定番のプラネタリウム鑑賞や博物館見学といったメニューも忘れてはなりません。
お天気が悪くても星のことを前向きに考えれば星を身近に感じる楽しみを実行できるかもしれませんね。

6月の天文情報

曜日月齢天文現象など
13.9月と土星が接近
14.9
15.9満月 木星の衛星ガニメデがエウロパを隠す(皆既食)
16.9月の赤緯が最南
17.9
18.9芒種(二十四節気)
19.9金星が東方最大離角(光度-4.3等)
20.9木星の衛星エウロパがイオを隠す(部分食)
21.9
1022.9下弦の月  月の距離が最近  月が赤道を通過北半球へ
1123.9入梅
1224.9
1325.9金星とプレセペ星団が接近
1426.9
1527.9月と水星が接近(鹿児島の一部地域よりも南では水星食となる)
1628.9新月
170.5月の赤緯が最北
181.5
192.5
203.5月と金星が並ぶ  木星の衛星イオの影にエウロパが入る(部分食)
214.5
225.5夏至(二十四節気)
236.5
247.5上弦の月  月の距離が最遠  月が赤道を通過南半球へ
258.5水星が西方最大離角
269.5
2710.5
2811.5
2912.5月と土星が接近
3013.5

6月の星空

6月でも晴れた夜には星座も惑星もあるいは月も見られますので、最初からあきらめないで、晴れ間のある日はベランダや庭に出て星空を眺めましょう。
6月は二十四節気の夏至(6月22日)もやってきます。昼間の時間が長く、宵闇が迫ってくるのも遅い時間帯となります。
したがって、薄明も終わる午後9時台に星を眺めることにしましょう。ただし、夕暮れ時から見られる金星などはもう少し早い時間帯から観察しましょう。
さて、6月の星空は天頂から西の空では春の星座が見られますが、東の空からはすでに夏の星座が姿を現しています。「6月の星空」の星図をご覧ください。
時刻の経過とともに日周運動によって星は東から西へ刻々と移動していきます。ゆっくりした運動なので、肉眼で見ているうちに移動している様子は確認できませんが、時間をかけて観察すれば確認できます。
この観察ではずっと続けて観察するのではなく、1時間おきの星座の位置をチェック(紙などに記録するか写真に撮影する)することによって確認でき、観察を自ら行うことで実感として理解することができます。
時間があるときにぜひチャレンジしてみましょう。

6月の星空(背景白)

6月の星空(背景白)

6月の星空(背景黒)

6月の星空(背景黒)

 

全天星図

全天星図sikakul

6月の中旬、午後9時ころの星空です。月の位置及び月明かりの影響は略しています。今月は全天星図も掲載しました。
「6月の星空」は、画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。
このコラムに用いている星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。