つくばのこと、もっとわかれば もっとたのしい! 茨城県つくば市のケーブルテレビ局ACCSによる地域情報サイト

ちあきの星空コラム

第154回 火星接近 (2016/05/02)

火星の観測シーズン

火星の姿(天体望遠鏡で撮影)

火星の姿(天体望遠鏡で撮影)

火星が地球に接近しています。
接近するにつれ明るく見えてきます。2年2か月おきに地球に接近する火星は、今年の5月31日に地球に最接近します。
未来にもし、人類が惑星に基地を建設して住むならば大気があり、地球に近い位置にある火星がもっとも有力といえます。
火星は、さそり座の方向に見えており、他の星と違って煌々と赤く輝いています。
付近の星を見ても赤く輝くのはこの火星とさそり座の1等星アンタレスだけです。
他の星は、白色や青みがかって見えており、そうした意味でとても神秘的な感じがします。さらに近くに土星も見えますが、火星の方が明るく目立ちます。
天体望遠鏡で見ると表面に黒っぽく模様が見え、また、北極、南極付近には白く輝き凍っている部分があることもわかります。
肉眼でもさそり座付近を探すと最も明るい星が火星ですからすぐにみつけられますし、天体望遠鏡で見るチャンスがあればぜひ、表面模様まで観測してみましょう。

午後9時頃、南東の空に明るく見られる火星は肉眼ではっきりと確認できます。

午後9時頃、南東の空に明るく見られる火星は肉眼ではっきりと確認できます。
(この星図は、アストロアーツのステラナビゲータ10を使用して出力したものです。)

天体望遠鏡を買う

天体望遠鏡の一例

天体望遠鏡の一例

火星接近の年には、過去には天体望遠鏡が売れることが多く、今年もまた、多くの天体望遠鏡が売れて宇宙の神秘に近づける方が多いといいなと思っているところです。
天体望遠鏡を使えば、天体が大きく見えるだけでなく、暗い天体も明るく見ることができますし、人間の肉眼よりも高い解像力で天体の姿を見ることができますから、天体観測や天体観望会などに活用することができます。
また、デジタルカメラと併用して、天体の姿を写真で撮る「天体写真」撮影の楽しみも持てます。

天体望遠鏡で月を見る

天体望遠鏡にスマートフォンのレンズを向けて撮影した月面

天体望遠鏡にスマートフォンのレンズを向けて撮影した月面

天体望遠鏡で月を見てみましょう。
月は明るく見え、天体望遠鏡を向けるのも容易でピントも合わせやすく、もっともみつけやすく見やすい天体といえます。
天体望遠鏡を入手すると、まず望遠鏡を向けるのが月でしょう。
その月は上の写真のように表面に黒い海と呼ばれる模様(パターンがうさぎに見える)やクレータと呼ばれる隕石孔、さらに山脈や谷などが見られます。
月面図と比較して、クレータの名前などを確認したり、写真に撮ったりと楽しみ方はたくさんあります。

天体観望会で月や惑星を見る

天体観望会で月や惑星を見る

惑星を見る

この春は惑星観測が楽しめる時期です。
冒頭に述べましたように5月31日には火星が最接近しますし、木星はしし座の中でとても明るく輝いています。
さらに火星の近くに輝く土星はユーモラスな環をもった姿に人気があります。
天体望遠鏡があれば、惑星を拡大して見ることができますので、ぜひ惑星観測を楽しんでいただきたいと思います。

今年の4月17日に天体望遠鏡を使い、スマートフォンで撮影した木星

今年の4月17日に天体望遠鏡を使い、スマートフォンで撮影した木星

5月の星空

5月の星空は春の星座で彩られています。冬の代表的なオリオン座のような目立つ星座はありませんが、プレセペ星団のあるかに座や、流星群でおなじみのしし座、それにおとめ座、うしかい座、うみへび座、おおぐま座などが見られます。
星座の中の明るい星を結んでできる図形としてはしし座のデネボラ(2等星)、おとめ座のスピカ(1等星)それにうしかい座のアルクトゥールスを結んでできる春の大三角が有名です。今年はデネボラの近くに木星も輝いています。
星図を参考に、星図を南の空に向けて星座をさがしてみましょう。

5月の天文情報

曜日月齢天文現象など
23.7八十八夜
24.7
25.7憲法記念日
26.7みどりの日 月が天の赤道を通過(北半球へ)
27.7こどもの日 立夏(二十四節気)
28.7みずがめ座η流星群が極大 月の距離が最近
0.3新月
1.3アルデバランの食
2.3
103.3月の赤緯が最北
114.3
125.3
136.3
147.3上弦の月
158.3月と木星が接近
169.3
1710.3月が天の赤道を通過(南半球へ)
1811.3
1912.3月の距離が最遠
2013.3小満(二十四節気)
2114.3
2215.3満月 月と土星が接近
2316.3
2417.3月の赤緯が最南
2518.3
2619.3
2720.3
2821.3
2922.3下弦の月
3023.3
3124.3火星が地球に最接近

5月の星図

5月の星空(背景黒)

5月の星空(背景黒)

5月の星空(背景白)

5月の星空(背景白)

5月の中旬、午後9時ころの星空です。月の位置及び月明かりの影響は略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。このコラムに用いている星図やシミュレーション画像は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。