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ちあきの星空コラム

第168回  天体観測のシーズン (2017/07/03)

天体を観測する

夏休みがやってまいります。夏には海や山に出かける機会が多くなりますが、こうした機会は天体観測をするチャンスともいえます。
観測のほかに天体観望という言葉もありますが、何が違うの?と尋ねられました。わかりやすく言えば、天体観測は、観測した内容や時刻、あるいは天体の明るさなどを測定し、記録に残したりすることですが、天体観望は天体を見て楽しんだり、感動したりすることを観望と呼んでいます。
観測も観望もどちらも楽しく天体を楽しむことが大事です。
今年の夏は、ぜひ天体観測などにチャレンジしてみましょう。
もっとも簡単な流星観測などは、肉眼と時計、記録用紙などさえあればできます。
惑星観測は、天体望遠鏡で見ること(観望)に加え、写真撮影やスケッチなどを行うことによって天体観測に発展します。
私は子供のころからこうしたことに夢中で現在まで続いています。
その気になった時がもっとも大事なチャンスです。あなたも天体観測やってみませんか?
梅雨明けからの夏の星空は、天の川が濃く見える季節ですし、惑星も木星と土星の姿を見るチャンスといえます。また、7月、8月は流れ星も多く見られる季節です。
ぜひ、天体観測あるいは天体観望を楽しんでみませんか。

夏の天の川の神秘的な輝き

夏の天の川の神秘的な輝き

天体望遠鏡

天体望遠鏡は宇宙をのぞく窓として天体観測にはぜひ使いたい道具です。
高価なので買えないとあきらめている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は廉価でも良いものが市販されていますので、ぜひ、安くて良いものをお求めください。
しかし、廉価な天体望遠鏡の中には粗悪なものもあります。よく確かめて、失敗のない買い物をしましょう。
やたら高倍率をうたい文句にしている広告に乗せられて衝動買いをしないように気をつけましょう。天体望遠鏡の対物レンズの口径は8センチクラスが入門機に最適です。これ以上の口径ですと、星の光を集める能力が求められる天体望遠鏡として、十分な能力を発揮してくれます。
三脚や架台(望遠鏡を支え、いろんな方角に向ける機能の付いた装置)がしっかりしたつくりのものが必要です。入門用には架台が縦、横に動く経緯台が扱いやすく、比較的廉価なのでお薦めです。
値段を聞かれることも多いのですが、「買値でおよそ5万円くらいする口径8センチくらいの経緯台式望遠鏡がお薦めです」と答えます。定価5万円が1万9千8百円などといった広告につられてはだめです。売値で5万円くらいからのものから天体観測ができるいわゆるおもちゃではなく、本物の天体望遠鏡がありますので、天文に詳しい方やお店の方から情報を仕入れてから買い物されるのがよろしいかと思います。
また、双眼鏡も天体観測に有効な道具です。双眼鏡では、明るい星雲、星団などを見ることができますし、二重星や月の姿などもはっきり確認されます。また、彗星がやってきたときなどもさがすのに最適な道具が双眼鏡といえます。
双眼鏡は、口径が40ミリ~50ミリくらい。倍率は7~10倍くらいのものをお求めいただくといいかと思います。ズーム式双眼鏡はお薦めできませんし、倍率が高い双眼鏡も、画像が暗くなり、きりっとした良い星像を見せてくれません。
一流メーカーのあまり値引きしない製品の方が優れていることが多く、割引率の高いものや、やたら高倍率をうたっているものは避けた方が良いでしょう。

天体観測を仲間と楽しむ

天体観測を仲間と楽しむ

星図とガイドブック

じっさいに星を見て、星座をさがしたり、惑星や彗星の位置を確かめたりするのには、星図(せいず)といういわゆる星空の地図のようなものが必要になります。書店の天文書籍のコーナーなどで販売されています。
また、パソコンでシミュレーションできるソフトやスマートフォンなどで、星座探しができるソフトも最近では活用されてきています。
星座早見という星座さがしの道具も書店などで売られています。ひとつは持っていると便利な道具です。ぜひ、入手しましょう。
天文現象や星に関する知識は、天文書籍を購入することをお勧めしますが、特に、もうすぐ見られる天文現象などの情報は、天文雑誌がお薦めです。
月間の天文雑誌として、毎月5日発売で、星ナビと天文ガイドが市販されています。
毎月新しい情報が得られるのが天文雑誌の良いところです。最初は書店で立ち読みで内容を確認し、気に入ったらぜひ購入しましょう。

7月の星空や天文現象など

7月のもっとも大きな星の行事は「七夕」(たなばた)です。ただし、関東地方はお天気が悪い時期ですっきりした星空を望むのは、梅雨明けからとなります。
梅雨明けした星空を見ると、夏の星座にすっかり入れ替わった星空を見ることができ、郊外地では天の川も見ることができます。
この季節にもっともめだつ星座は夏の大三角を構成する明るい星を持つ星座のこと座、わし座そしてはくちょう座です。三角形をつくる3つの星は、ベガ(織姫星=こと座)、アルタイル(彦星=わし座)、デネブ(はくちょうざ)ですが、星図などを活用して星空の中でみつけてください。
流星群では活発な活動を見せるみずがめ座δ(デルタ)を見ましょう。
7月中旬から8月中旬まで長い期間見ることができる流星群で特に7月30日前後には活発な流星群の活動による流れ星を見ることができます。

7月の天文情報

曜日月齢天文現象など
7.0上弦の月 月と木星が接近 月が天の赤道通過(南半球へ)
8.0
9.0
10.0
11.0
12.0月の距離が最遠
13.0小暑(二十四節気) 七夕
14.0月の赤緯が最南
15.0満月
1016.0
1117.0
1218.0金星とヒヤデス星団が接近
1319.0
1420.0
1521.0
1622.0月が天の赤道を通過(北半球へ)
1723.0海の日 下弦の月
1824.0
1925.0夏の土用
2026.0アルデバランの食
2127.0
2228.0月の距離が最近 月の赤緯が最北
2329.0新月 大暑(二十四節気)
240.7
251.7水星の食
262.7
273.7
284.7月が天の赤道を通過(南半球へ)
295.7
306.7みずがめ座δ南流星群が極大 水星が東方最大離角
317.7上弦の月

7月の星図

7月の星空(背景黒)

7月の星空(背景白)

7月の中旬、午後9時ころの星空です。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座探しに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。