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ちあきの星空コラム

第191回 天体望遠鏡と電波望遠鏡 (2019/06/03)

天体望遠鏡と電波望遠鏡

国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡

野辺山宇宙電波観測所の10m干渉計(電波望遠鏡)

光学式(屈折式)の小型天体望遠鏡の例

はじめに

天体観測には様々な観測装置を使用しますが、もっとも代表的なものは天体望遠鏡と呼ばれる観測装置です。これはレンズまたは反射鏡を使って光学的に天体を見たり撮影したりする装置ですが、もうひとつ、電波望遠鏡という言葉もよく耳にします。
電波望遠鏡とはどのような装置だろうか、どんな観測をするのだろうか疑問がわいてきます。
電波望遠鏡の観測成果として先月のコラムで掲載しましたが、国立天文台から世界で初めてブラックホールの撮影に成功したことが発表されました。
これは地球上の8つの電波望遠鏡を結合させた国際協力プロジェクト(イベント・ホライズン・テレスコープ)により成功したものです。
電波望遠鏡とはどんなものなのか、疑問をここで解き明かしましょう。

今回発表されたブラックホールの電波望遠鏡による写真(国立天文台発表)

電波望遠鏡でブラックホールの写真が撮影されたM87銀河を神津牧場天文台の76cm反射望遠鏡(光学望遠鏡)で撮影。ジェットの噴出の様子がとらえられていますが、ブラックホールは可視光では表現できません。 撮影:神津牧場天文台 伊藤清世

電波望遠鏡では画像をどのようにつくるのか?

電波望遠鏡は、宇宙からやってくる電波を観測する道具です。
宇宙からは多くの電波がやってきます。それらは宇宙のガスやちりから出ていますが、可視光の電磁波だけは光学望遠鏡(いわゆる天体望遠鏡)でとらえることができます。しかし可視光以外の電磁波、冷たい物質からは光を出していないので光学望遠鏡では見ることはできないのです。
それを電波でとらえようというのが、電波望遠鏡です。
電波望遠鏡はパラボラアンテナという大きなおわん型の形状をしたアンテナと、そこで受信した宇宙からの電波の種類や強さなどを解析するコンピュータで構成されています。
では、見えない電波を今回のブラックホールの画像のように表現するのはどのようにつくりだすのでしょうか。
その仕組みとしては電波の性質に応じた「色」を設定して情報を読み取ることができるようにしています。電波望遠鏡である銀河を観測したとしますと、銀河の中のそれぞれの部分でとらえられたそれぞれの種類の電波の強弱の数値を色に置き換えるのです。
そうすることによって、部分ごとの電波の強さの差により着色された映像ができあがるわけです。
実際には南米チリにあるALMA望遠鏡では、波長が一番長い電波は赤色を使って表し、それより少し短い波長の電波はオレンジ色、さらに黄色、緑色と段階的に色で画像を表現しています。
波長が一番短い電波は青色を使って表し、電波がとても弱い部分には黒色を使い、また、たくさんの電波を出している領域には明るい色を使い、弱い領域は暗い色を使います。そうしてできあがった二次元的画像によって、私たちが見る画像ができあがっているわけです。
こうしてできた銀河の画像と光学望遠鏡で撮影した同一箇所の写真を比べ、銀河のどの部分がたくさんの電波を出していて、どの部分の電波が弱く暗く見えているのかを確認します。
また、電波望遠鏡で観測したデータは、必ず画像にするわけではなく、グラフや数字を使って表し、データを解析することもあるそうです。
いかがでしょうか。少しは電波望遠鏡のことが理解できたでしょうか。
これからも電波による宇宙での発見は画像で登場してくることでしょう。楽しみですね。

今回のブラックホール写真に参画した世界各地の電波望遠鏡(国立天文台発表)

6月の惑星の位置と見え方など

6月は梅雨の時期でもあり、お天気が悪いという先入観からあまり夜空を見上げることをしない読者も多いことと思います。
それでもすべての日が夜空に星が見えないわけではありませんので、お天気を見ながら星空が見られそうなときは星座をさがし、また、輝く惑星の位置を確かめましょう。

水星

6月24日に当方最大離角を迎える水星は、夕空の西の低空に見られます。
特に6月16日から19日にかけては火星と接近して見られますので、一度に両惑星を観察するチャンスといえます。
なかなか見るチャンスに恵まれない水星ですが、晴れさえすれば今回はチャンスといえます。明るさは、-(マイナス)0.8等級です。

金星

金星は、太陽に近い方向にあり、観測には適しません。

火星

夕空の中に見られ、あまり見やすいとはいえませんが、6月5日の日没直後には月齢2の細い月の上側に見ることができます。
なお、地球からは遠い位置にあるため、天体望遠鏡で見てもあまり大きくは見えません。

木星

6月11日に木星は衝(しょう)となり、観測の好期をむかえます。
木星の観測では、本体の縞模様と4個のガリレオ衛星が小型の天体望遠鏡でもわかりやすく、観測の入門にもってこいの対象です。
木星の本体縞模様は長年の観測により変化している様子がわかりますし、ガリレオ衛星は、木星本体に影を落としたりする現象も見られますので、観測がとても楽しくなります。明るさは-2.6等級で明るく輝いています。

土星

土星はいて座の中で輝いています。明るさは0.1等級で、環の傾きも大きく、深夜に観測しやすい位置の南の空の中に見られます。ぜひ、天体望遠鏡で観測してみましょう。

6月の星空

6月はお天気が悪い日が多いものの、晴れる日もありますので、あきらめずに晴れた夜は春の星座や夏の星座をさがしてみましょう。
また、ひときわ明るく輝く木星や土星もさがしましょう。
おおぐま座の中にある北斗七星の柄の部分から曲線を伸ばして、うしかい座の1等星アルクトゥ―ルス、さらに延伸した先にあるおとめ座の1等星スピカを探してみましょう。この星探しに使える春の大曲線は、親しみやすい北斗七星からスタートすることで多くの方々に春の星座をさがす手段として親しまれています。
そのほかの星座も星図を参照して、その位置関係を確認してみましょう。

6月の天文情報

曜日月齢天文現象など
25.8
26.8細い月と金星が接近
27.8新月
28.8
0.2細い月が火星接近 月の赤緯が最北
1.2芒種(二十四節気)
2.2月とプレセぺ星団が接近
3.2月の距離が最近
4.2
105.2上弦の月 14時月面Xが見える
116.2入梅 木星が衝
127.2月が天の赤道儀を通過(南半球へ)
138.2
149.2
1510.2
1611.2月と木星が大接近
1712.2満月
1813.2
1914.2水星と火星が最接近 月が土星に最接近 月の赤緯が最南
2015.2
2116.2
2217.2夏至(二十四節気)
2318.2月の距離が最遠
2419.2水星が東方最大離角
2520.2下弦の月
26 21.2月が天の赤道儀を通過(北半球へ)
2722.2
28 23.2
2924.2
3025.2

6月の星図

南の星空

6月の南の星空(背景黒)

6月の南の星空(背景白)

北の星空

6月の北の星空(背景黒)

6月の北の星空(背景白)

6月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の範囲によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。

さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。