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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第27回 今年も火星大接近

火星の大接近!?

一昨年に火星は超大接近して、天文界は大いににぎわいました。このコラムのスタートもそのころでしたので、第1回目の話題は火星でした(バックナンバーをご覧ください)。このときは、6万年ぶりの超大接近などとマスコミでさわがれたわけですが、それ以後にもう火星は接近しないのかというと実は地球には2年2か月おきに接近するのです。

地球の公転周期(太陽の周りを地球が一周する期間)は1年。そして、火星の公転周期は1.88年。結果として地球と火星が近づき合うのは、2年2か月おきとなります。
しかも、火星の公転軌道が地球よりもつぶれた楕円軌道を描いているために地球との接近の度合いが、大きいとき(大接近)と小さいとき(小接近)ができるのです。こうした中で、今年の接近は比較的大きな接近といえるのです。
火星が地球にもっとも接近するのは10月30日ですが、その日だけ接近するわけではありませんので、10月初めから11月いっぱいは比較的大きく見ることができます。最接近のときの視直径(見える大きさを角度で表したもの)は20.2″(秒:角度を表す単位)となり、一昨年の約25.1″にはかないませんが、それでも充分に大接近といえるサイズに見えます。ぜひ、火星を観測してみましょう。

超大接近した
一昨年、超大接近した火星
(↑クリックすると拡大します)

どこにどんな風に見られる?

空には多くの星が輝いていますので、その中から火星を見つけだすこととなります。
火星とほかの星との見かけ上の違いはいくつかあります。まず、明るさですが、秋の星々(星座をかたちづくる恒星)がいずれもあまり明るくなく、1等星は、みなみのうお座のフォーマルハウトひとつだけで、それ以外は2等星かそれよりも暗い星で構成されていますが、そうした中にあって、火星だけは−(マイナス)2.3等星という、きわだった明るさで輝いています。
次に火星の色ですが、みなみのうお座のフォーマルハウトなどは青白く輝いて見えますが、火星はほかの星と違って赤く(朱色っぽく)輝いています。しかも星のまたたきがほかの星(恒星)とちがって、ほとんどないのです。
さらに、火星が見られる方角は、10月上旬では午後8時過ぎにみつけようとすると、東の空、高度角にして30度くらいの高さにみつけることができます。星座でいうとおひつじ座の中にあります。

天体望遠鏡で見る

つくばでは天体観望会は、つくば植物園やつくばエキスポセンターなどで定期的に行われていますので、日時や参加可能かどうかを問い合わせてみてみましょう。
そのほかにも学校主催などで行われることもありますので、チラシや情報誌などにご注目ください。
天体望遠鏡では火星表面の模様がわかりますし、色もはっきりわかります。火星の南極にはドライアイスで白く凍った様子も見られます。
天体望遠鏡をお持ちの方は、ぜひ、火星観測にチャレンジしましょう。
この際、天体望遠鏡を買いたいとお考えの方は、天体望遠鏡専門店で購入されることをお勧めします。前回の火星接近の時は、格安な粗悪品まで売り切れたというほど天体望遠鏡は良く売れましたが、読者の皆様が決して粗悪品を購入されませぬよう、お気をつけいただきたいと思います。

10月17日部分月食を見よう

今年の中秋の名月(旧暦8月15日、十五夜)は、9月18日でした。中秋の名月は別名「芋名月」とも呼ばれ、この日はお団子や芋、ススキなどのお供えをしてお月見をするという風習が、奈良、平安のころから行なわれてきました。もともとは中国からの伝来だといわれています。

月食
部分月食

日本独特の風習は、旧暦の9月13日(今年は10月15日、十三夜)に月見団子のほかに栗、枝豆などをお供えするという風習があり、栗名月、後の月などとよばれています。
ちょっと横道にそれましたが、10月の満月は10月17日となります。この日は、月がわずかだけ欠ける部分月食が見られます。
数年前の部分月食の写真を掲載しますが、この写真よりも少ししか欠けませんので、はっきり確認するには双眼鏡なども併用して観察されるといいでしょう。
午後9時前後の1時間しか見られませんので、チャンスをのがさないようにウオッチングしてみましょう。

秋の星空

秋の星座は1等星がひとつしかないこともあって、地味だといわれています。しかし、空気が澄んでいることもあって、快晴の夜に星座をさがしてみましょう。
ペガススの四辺形からペガスス座とアンドロメダ座をみつけ、続けて北の空にカシオペヤ座、ケフェウス座それからペルセウス座などをみつけましょう。ペガススの南にはうお座、みずがめ座、みなみのうお座などがみつかります。星図を参考にしてくじら座あたりまでみつけられればもう完璧です。
先月のコラムから星図を見やすくするように工夫しています。プリントアウトしてご使用ください。
なお、星座さがしには、星座早見盤なども併用されるとなお、みつけやすくなります。天体望遠鏡ショップや書店などで、500〜2000円程度のものが販売されています。ぜひ、ご活用ください。

10月の星座案内図

10月の星空

クリックすると、星図が変わります。

この星図は、株式会社アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています。

2005年10月3日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。