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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第30回 星空の輝き

新年がやってまいりました。大晦日から元旦にかけての深夜に星見を行ない、やや薄雲が見られましたが初日の出ならぬ初星見を無事、行なうことができました。ちょうど、おおいぬ座のシリウスが南中(真南にくること)の時で、青白い輝きが印象的でした。
冬の時期、晴れ渡った夜の空には、オリオン座をはじめとする冬の星々が、澄んだ空気とジェット気流の影響できらきらと輝きます。星は、太古の昔から輝いていたわけですが、この星空を眺め、昔の人はどのように感じ、何を考えていたのでしょうか。美しいと感じたのか、また、神秘的と感じたのでしょうか。それとも人の手の届かない天上界を宇宙と呼ぶ概念がないころは、神様のつくった世界と考えていたのでしょうか。
ところで、夜空に輝く無数の星々は私たちの身近にある「太陽」と同じようにみずから光を放ち、輝いている恒星ですが、はるか昔には、この恒星と太陽系内の土星や火星といった太陽の反射光で輝いて見える星との光る原理の違いが解明されていませんでした。
恒星は、それぞれ太陽と同じ核融合反応によって輝いており、現在までの観測、研究の結果から私たちの銀河系(天の川)には約2000億個程度存在するといわれています。
その銀河の端から端までの距離は10万光年あるといわれていますので、いかに広大かおわかりいただけると思います。
空間だけでなく、時間的にも気が遠くなるような長い時間が経過しており、太陽が生まれて既に50億年程度経過しているといわれ、人類の歴史などは、ほんの一瞬に相当するような感じかもしれません。
さらに、お隣の銀河であるM31アンドロメダ銀河までは約200万光年の距離があるといわれています。なんだか気の遠くなるような数字です。
そうした遠い距離にあって、また、億年単位の長い間、輝き続けている星々を私たちは、見ることができるわけです。M31でいえば、200万年前の姿を見ていることになります。実際の空でM31を見るには、郊外地では肉眼で見ることができ、つくばの市街地でも双眼鏡か天体望遠鏡を使えば容易に見ることができます。

夜空の星を仰ぎ見る楽しみ

はるか光年の輝きを天体望遠鏡などで楽しむ趣味をスターウオッチング(天体観測、天体観望)といい、心にゆとりを持つ趣味のひとつとして、最近、注目を集めています。
定年退職者が増え、老後の楽しみとしても知的好奇心を刺激する天文学やスターウオッチングはお薦めだと思います。さらに同好の人たちで集う同好会活動やアウトドアーとして星見に出かける行為は、生きがいとして大変有効だと考えられます。
私自身も多くの天文同好会にかかわり、各地の天体観望会に講師やスタッフとして参加することによって、たくさんの生きがいを得ています。私としては、多くの方々が人生の楽しみとして、この知的好奇心を満たし、しかもアウトドアースタイルのスターウオッチングがますます普及することを願っているところです。
みなさんもぜひ、チャレンジしてみませんか?
マイペースで星見を楽しめばいいことですし、知識もあわてることなく、ゆっくりと積み重ねていけばいいわけですから、なにもむずかしいことはありません。星座をおぼえると、夜空の星座を仰ぎ見ることでも四季の移りかわりを感じることができるようになります。きっと、すてきな趣味のひとつになることと思います。ぜひお薦めします。

1月の星空

1月の星空では、昨年12月に写真を紹介したオリオン座が南の空に畏怖堂々と見られますが、その周囲に冬の星座が取り巻いています。すなわち、東にすばるのあるおうし座が見られ、そこから反時計回りに見ていくと、ぎょしゃ座、ふたご座、こいぬ座、いっかくじゅう座、おおいぬ座、うさぎ座そしてエリダヌス座と見ていくことができ、ふたたび元のおうし座に戻っていきます。
1等星以上の明るい星も多く、オリオン座には赤く輝くベテルギウスと青白いリゲル、おうし座にはオレンジ色のアルデバラン、ぎょしゃ座には黄色いカペラ、ふたご座にはポルックス、こいぬ座の白く輝くプロキオンそしておおいぬ座には全天一明るい恒星のシリウス(天狼星)があります。
また、冬の天の川も見られます。暗い夜空の場所まで出かければ、ぎょしゃ座からいっかくじゅう座にかけて、夏の天の川に比べたら淡い輝きが静かにそっと輝いているように感じます。
宮沢賢治の童話「よだかの星」や「銀河鉄道の夜」などには星や星座がたくさん登場してきますが、物語を読みながら、本物の星を想い浮かべることができたらきっとステキなことですよね。そう感じたらぜひ、あなたも本物の星座さがしにチャレンジしてみてください。

ぎょしゃ座の説明星図
ぎょしゃ座の説明星図
ぎょしゃ座の写真
ぎょしゃ座の写真(星座線を記入しています)
天頂に輝くぎょしゃ座は、一等星のカペラから線で結ぶと五角形ができ、比較的みつけやすい星座です。ここは星団の宝庫で、天体望遠鏡ではM36,37,38といった散開星団を観望することができます。
※↑それぞれクリックすると、拡大します。

1月の星座案内図

1月の星空 1月の星空
それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。

この星図は、株式会社アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています。

スキー場での星空

冬はスキーシーズンともいえますが、スキー場はたいてい山奥深いところにあり、ナイタースキーから宿へ帰ってくるときに夜空をながめると、そこには都会では見られない星の多さ、近さに感動してしまいます。
私も信州東御市の西川ペンション星の宿に泊まって家族で湯の丸高原スキー場にいったときの冬の星空が脳裏に焼き付いています。
読者の方々も、もしスキーに出かけられることがありましたら、夜にはぜひ星空を眺めてみてはいかがでしょうか?

2006年1月4日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。