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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第36回 梅雨明け

7月に入り、梅雨がいつ明けるか気になるところですが、梅雨が明けるとしばらくは天候が安定していて、夏の天の川を初め多くの星座を見ることができます。
海や山に出かけるチャンスも多いこの時期、つくばの星空よりも光害(ひかりがい=街灯やネオンサインなどによって、空や植物が照らされ、星空が見えにくくなったり、稲やその他の植物の生育などに影響を及ぼすこと)が少ないところに出かけたときにはぜひ、星空を見て、星座をさがしてみましょう。

6月21日に夏至を迎えて、あまり日数のたっていない今月は、実は夜が暗くなるのが遅く、日没後の薄明が終わるのが午後8時過ぎとなります。ですからこの時期の星座さがしは午後9時以降が適しているといえましょう。
また、満月近くの数日間は月明かりの影響が大きく、光害の少ない郊外に出かけたとしても星が見えにくいので、要注意です。7月の満月は7月11日ですので、星座さがしであれば7月16日(日)以降の方がいいでしょう。

見える星座は、天頂から西の空にはまだ春の星座が見られ、おおぐま座やうしかい座などをみつけることができます。夏の星座は東の空から天頂にかけて見られ、時間が進むにしたがって、東の空の低空にあった星座たちも空高く昇ってきますので、観察しやすくなります。

七夕の星
七夕の星(↑クリックすると拡大します。 )
6月のコラムで添付した星座早見をプリントアウトして自作するか、下に掲げる星図をたよりに星座をみつけていきましょう。
天頂付近には春の星座との境界付近にかんむり座やヘルクレス座が見られ、天の川付近の東の空には、わし座、こと座そしてはくちょう座など。また、南の空にはてんびん座、さそり座、へびつかい座そしていて座などが見られます。夏休みを利用して星空を満喫してみるのはいかがでしょうか。

月歴(旧暦)と七夕

現在は、太陽暦(たいようれき)という暦(こよみ)で私たちは生活を送っていますが、明治5年までは太陰暦(たいいんれき=月の運行をもとにしたこよみで、正式には太陰暦を改良した太陰太陽暦が使われていました。この太陰暦のこよみを旧暦といったり、最近では月歴「つきごよみ」とも呼んだりもしています。)のこよみで生活をしていました。
しかし、その後も太陽暦を使いつつも併用して旧暦が生活の中に溶け込んでおり、今から50年くらい前からようやく現在のような太陰暦を意識しない生活となりました。それでも、伝統的なお祭りの日程が旧暦で決められていたり、いろんな習わしや行事が旧暦の風習のまま継続されているものがあります。

現在使っている太陽暦は、1年間の長さ(約365日)でいえば合理的な決定ですが、潮の満ち引きをはじめ、生き物の生活リズムは月の運行による影響が大きく、生活リズムとうまくマッチしていない点もあるのです。その点、旧暦は、月齢を基本としているために、月のリズムと生活リズムとがマッチしていて、こよみは毎月1日が新月、そして15日がほぼ満月となるように設定されていましたから、自然との生活の中で違和感がなく、太陽暦よりも生活する上で便利なこよみともいえました。

さて、7月における星のもっとも大きな伝説や行事といえば7月7日の七夕祭りですが、この七夕を例にとって旧暦のことを考えてみましょう。
旧暦では、秋の始めの7月7日が七夕祭りでしたから、現在のこよみのように梅雨の最中ではなく、今年のこよみ(太陽暦)では7月31日(月)が七夕ということになります。
旧暦の七夕7月7日は、どの年でも月齢でいえば7(上弦の少し前の月)で、位置的には夏の天の川に月がかかります。織女星(こと座のベガ)と牽牛星(わし座のアルタイル)が、1年に1度の再会をこの月を船に乗っておこなったという言い伝えがあります。
なるほど上弦前のほぼ半欠けの月の姿は、船と形が似ていますね。
七夕の星の再会の仕方にはいろんな言い伝えがある中で、この月を船にみたててという話は初めて知る方も多いと思います。私は本物の天体を観察してつくられていて、しかもロマンチックな感動を呼び起こす、もっともすてきな再会のお話しだと思っています。
昔の伝説や神話などに思いをはせて本物の星空をながめると感慨深いものがあり、さらに星を好きになるかもしれませんね。

7月の星座案内図

6月の星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図
夏の大三角
夏の大三角
それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

この星図は、株式会社アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています。

星見のイベントが今年も花立山で行なわれます

毎年夏に行なわれている花立山星まつりが今年も7月29日(土曜日)午後4時から常陸大宮市主催で開催されます。
会場は、旧美和村の花立自然公園で、恒例の星空落語や星空教室をはじめ、多くの催し物が用意され、花立山天文台(愛称「美スター」)の主砲82センチ反射望遠鏡も公開されます。
天文ファンにかぎらず、どなたにでも楽しんでもらえるイベントですので、ぜひご参加ください。
問い合わせ先 茨城県常陸大宮市美和総合支所経済課 電話0295−58−3851

2006年7月3日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。