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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第49回 流れ星に願いごと!

ペルセウス座流星群(りゅうせいぐん)が見られる!

毎年、8月には流れ星(流星)がたくさん流れることが知られています。特に8月12日前後に見られるペルセウス座流星群がもっとも有名で、今年は、8月13日の朝にピークを迎えます。多いときには1時間に40〜60個くらい流れるといわれるペルセウス座流星群ですから、必ず見ることができることでしょう。

実際に観測をするときは、8月12日の夜に観測を始め、13日の明け方まで、それぞれ1時間単位で何個流れたかを数えてメモなどをとるといいでしょう。

今月は13日がちょうど新月で、まったく月明かりがない、観測に最高の好条件の空となります。
観測場所は、自宅であればベランダなどでもかまいませんが、筑波山などに出かけられれば、まち明かりをさけて光害(ひかりがい)の少ないところを選んで観測するといいでしょう。

何個か流星を観測しているうちに、その流星の経路を逆方向にたどっていくと、ペルセウス座の方角から流れてくるように見られることに気づくはずです。流星群の流星は、一方向から放射されるように見られ、その放射点(輻射点)の位置がペルセウス座にあるので、ペルセウス座流星群と呼ばれています。

流星は、音もなくスーと流れ、その見えている時間は1秒以下ですので、お友達が「見えた!」といってからその方角を見ても、間に合いません。12日の深夜には夏の星座でいっぱいだった空も、夜半を過ぎ、13日の夜明け前にはすっかり秋の星座に入れ替わっていますので、ゆっくり頭上で回転していく星座を夏から秋まで楽しみながら、流れ星を見つける夜を過ごしてみましょう。


流星

流れているときに3回願いごとを唱えると、願いがかなうといわれている流れ星ですが、発光している継続時間は1秒以内のものが多く、なかなか願いは天に届いてくれないですね。


ペルセウス座流星群の放射点

ペルセウス座から放射されているように見られるペルセウス座流星群ですが、流れ星の見られる位置はペルセウス座の方向だけではなく、全天で見られます。南向きベランダで、ペルセウス座が見えない場所でも流星の観測はできます。

8月28日に皆既月食

皆既月食

地球の影の中にすっぽり入ってしまった月は、真っ黒で何も見えなくなるのかというとそうではなく、この写真のように赤黒く見られます。赤銅色に見えるという人もいます。

8月28日に満月が地球の影に入る皆既月食が見られます。つまり、太陽と地球と月がこの日は一直線に並ぶわけです。
観測は、夕方の東の空から始まります。肉眼でも十分観測できますし、双眼鏡を用いても天体望遠鏡を使っても良いでしょう。
夕方、午後6時過ぎに少しかけ始めた月が東の空から昇ってきます。
皆既月食と呼ばれる月の全体が地球の影の中に入ってしまうのは、午後6時52分ころから午後8時22分頃までで、その後は、また段々と明るい月が姿を現してきて、午後9時24分には完全に普通の満月に戻ってしまいます。
感動的なこの月食の姿をぜひ、ごらんいただきたいと思います。

8月の星座案内

8月の空は、夕立などで夕方曇ることも多いのですが、夕立の止んだ後の夕涼みのときなどに空を見上げてみましょう。
天頂にはこと座のベガ(織姫星)が輝き、天の川の対岸にはわし座のアルタイル(彦星)が見られます。
天の川の中にははくちょう座、たて座そして南の方にいて座などが見られます。
天の川を境に西の空には、ヘルクレス座やかんむり座、へびつかい座などが見られ、天の川の東側にはいるか座、こうま座、やぎ座などが見られます。
また、北の空にはケフェウス座やカシオペヤ座なども昇ってきています。
ぜひ、天の川の見られる光害(ひかりがい)の少ない郊外に出かけて、星空を楽しんでください。

8月の星座案内図

星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※この星図は、(株)アストロアーツの天文シミュレーションソフトステラナビゲータVer.8から出力し、加工したものを使用しています。

天体望遠鏡がほしい(シリーズ第4回)

色(いろ)収差(しゅうさ)って何?

先月の分解能に続いて今月もレンズに関するお話です。今月は色収差について述べます。
色収差というのは、レンズの中を通った光が、光の波長ごとに屈折率が異なるため、ピントがシャープにならない収差をいい、色収差があると、望遠鏡を覗いたときに虹色に見えるぼけた像が見られます。
これは、プリズムをとおして見た景色が虹色に見えるのと同じ原理で、レンズというのは、プリズムの連続した集合体ともいえます。
虹色のきれいな像が見えるともいえるのですが、見ようとする目的の物体がぼけて見えることにもつながりますので、決して好ましくはありません。
屈折式天体望遠鏡にとって、この色収差を克服することはピントの良い天体望遠鏡をつくる大きな課題のひとつとして、今でもレンズ設計の大きなテーマになっています。

色収差の克服

17世紀はじめにオランダで望遠鏡が発明されてまもなく、イタリアのガリレオ.ガリレイは自分で考案して製作した望遠鏡を天体に向け、世界で始めて天体望遠鏡による天体観測をおこないました。ガリレオが始めて天体に望遠鏡を向けた頃は対物レンズは1枚の凸レンズでした。当然のことながら月を見ても木星を見ても、対象の縁の部分には、はっきりと虹色の色収差が見られました。
この色収差をいかにして少なくするかということが光学の世界では課題となりました。
最初の改良は、対物レンズの焦点距離を長くすれば色収差が目立たなくなることがわかり、焦点距離の長い望遠鏡をつくり、天体観測に用いたようです。
やがて、17世紀後半に入り、色収差のない天体望遠鏡をイギリスのアイザック.ニュートンがつくりました。これは、現在、ニュートン式と呼ばれている反射望遠鏡で、今もこのタイプは市販の多くの天体望遠鏡にも採用されているすぐれた方式です。
一方、屈折式の望遠鏡も改良が加えられ、18世紀に入って屈折率の異なる2枚のレンズを凸(とつ)レンズと凹(おう)レンズに磨き、その2枚を組み合わせることで色収差を少なくすることができるレンズが発明されました。


屈折式天体望遠鏡

屈折式の天体望遠鏡では、普及タイプにアクロマートレンズが採用されており、高級品は、アポクロマートタイプのものが多くなっています。写真はEDガラスを使ったアポクロマートレンズ採用の13センチ屈折望遠鏡の例です。


ニュートン式天体望遠鏡

ニュートンの発明したニュートン式反射望遠鏡は色収差がないという特徴を持っていましたが、当時は金属を磨いた金属鏡でしたので、さびやすい欠点がありました。今ではガラス表面を磨いてアルミメッキを施した反射鏡が使われており、表面のコーティングも行なわれて、長期使用に耐えられるようになりました。

これをアクロマートレンズといい、別名色消しレンズとも呼ばれています。色消しということばのために、見える像がモノクロ(白黒)に見えると誤解を与えそうですが、見える像はもちろんカラーで、色収差を消したという意味からこう呼ばれているのです。
市販の天体望遠鏡や天文台の屈折式天体望遠鏡は当然のことながら、このアクロマートレンズを備えたものが多いのですが、近年はさらに完全色消しレンズと呼ばれるアポクロマートレンズが高級品には採用されています。このアポクロマートレンズでは、レンズの材料に蛍石(ほたるいし)や屈折率の低いEDレンズと呼ばれるガラスを採用して色収差を極端に少なくしたレンズが作られています。

一般市販品の色消しは大丈夫?

現在、市販されている天体望遠鏡は、よほどの格安品とか粗悪品でないかぎり、アクロマートレンズが採用されていますので、色収差で見たい対象が良く見えないといったことはあまりありませが、新たに購入を予定するときは、天体望遠鏡に必要なそのほかの性能も合わせて検討することが大事です。よりシャープに見える製品をめざして開発されたアポクロマートレンズを備えた高級品も市販されていますので。カタログで確かめると、性能のほかに価格の違いも大きいことがわかります。
また、参考のために申し上げますと、フィールドスコープや双眼鏡もアクロマートレンズが採用されており、天体望遠鏡と同様に高級品ではアポクロマートレンズを備えたものもあります。

2007年8月7日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。