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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第51回 この秋の天文現象など

この秋の天文現象など

10月に入り、空気中の水蒸気が減った乾燥した夜には、明るい星だけでなく、微光星まで見ることができます。つくばの街中では、4等星くらいまでしか見えませんが、筑波山などに行けば、6等星くらいまで見ることができます。月明かりの影響がなく、全天快晴の夜には思い切って深夜ドライブがてら夜空を見上げてみましょう。

この秋に見られる注目すべき天体としては、まず、火星接近があげられます。火星の地球への最接近は、12月19日ですが、観測シーズンとして考えるならば、その前後を含めて4か月くらいはアマチュア用の天体望遠鏡でも火星観測を十分楽しむことができます。
火星は現在、ふたご座に位置し、10月中旬ですと午後10時ころには東の空から昇ってきます。赤い色をした特徴的な星なので、肉眼ですぐにみつけることができることでしょう。

次に、流星群ですが、10月9日にはジャコビニ流星群が見られます。この流星群は、北の方角にあるりゅう座付近から飛ぶように見られますが、出現数が毎年異なり、多い年と少ない年があります。


火星

天体望遠鏡があれば小型機であっても小さな円盤状の表面が見られます。肉眼でも明るく輝く火星を見つけることができ、ふたご座の中で他の星よりも明るく、また赤く輝いて見えます。火星の位置を日々観察すると星座の中を移動していく様子を確認することができます。

10月21日にはオリオン座流星群がピークを迎えます。この流星群は、ハレー彗星が起源といわれ、ハレー彗星の軌道と地球の軌道との巡り合いの箇所を地球が通過するためにハレー彗星が撒き散らしていったダストが流星となって見られるのです。
夜半から観測を始め、夜明け前まで観測を楽しめます。その時刻には月明かりもない好条件となり、1時間に10個程度、最大で20個程度見られるかも知れませんので、ぜひ流星を数えてみましょう。
さらに、11月18日は、有名なしし座流星群を見ることができます。今年はかつてのような大流星群の出現はないでしょうが、確実に流星群の流星を見ることができます。
さらに、12月には15日未明に、ふたご座流星群が見られます。寒さに耐えて一瞬の光を地上にまで届けてくれる星屑の光をお楽しみください。

明け方の金星などを見る

夜明け前の天体ショー

月は地球照により、細い姿とともに丸く薄く影の部分も見られるはず。金星、土星、レグルスはそれぞれ星の色のちがいを観察しましょう。もちろん明るさの違いも。

金星は明けの明星(みょうじょう)として、夜明け前に東の空に見えていますが、もし、早起きのチャンスがあればぜひ、眺めてみましょう。
東の空には、金星のほか、土星も輝いていますが、10月7日にはこれに月が加わって、明けの空に美しい光景を見ることができます。図で見ていただくとそのときの様子がお分かりいただけると思いますが、月、金星、土星そしてレグルス(しし座の1等星)と、明るい天体が東の空に煌々(こうこう)と輝くのです。
早起きと東の空が眺められる地理的条件に加え、お天気も良いことが条件となります。この空のショーは実は、翌日の10月8日でも、月の高度がちょっと低くなるだけで、似た光景を楽しむことができます。

10月の星座案内

10月に入っても、夕暮れ直後の頭上にはまだ夏の大三角が見られます。秋を迎え、昼間が短くなって夜が長くなったので、夏の名残の星空がまだしばらくは見られるわけなのです。
運動会シーズンもそろそろ終わり、秋の夜長は、秋の星座をさがしてみましょう。
夜10時頃にはすっかり秋の星座で埋め尽くされ、ギリシャ神話の中でエチオピヤ王国の物語に登場してくるケフェウス座、カシオペヤ座、アンドロメダ座、ペルセウス座そしてくじら座などをみつけましょう。これらの星座は、くじら座をのぞいては天頂から北側の方角に見られます。
では南の空はといいますと、やぎ座、みなみのうお座、みずがめ座、うお座、ペガスス座などが見られます。
星座を見つけるには、白星図の方をプリントしてじっさいの空にかざして星と対比します。星図は、真ん中下部が南となっており、身体と視線を南の方角に向けて、星図も南の方角に向けて星との対比によって星座をひとつずつみつけていくといいでしょう。最初にペガススの四辺形(星図に表記しています)をみつけられたら、あとはその四辺形との位置関係を見ながら探すと効率よくみつかります。

10月の星座案内図

星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※この星図は、(株)アストロアーツの天文シミュレーションソフトステラナビゲータVer.8から出力し、加工したものを使用しています。

天体望遠鏡がほしい(シリーズ第6回)

光学系の種類と特徴(屈折式、反射式)
光学系には屈折式と反射式がありますが、今月はその種類と特徴などについてお話します。
天文台の天体望遠鏡だけでなく、アマチュア用に市販されている天体望遠鏡にも光学系にいろんな種類があります。実際にみなさんが天体望遠鏡を購入するときの参考にしてください。

屈折式
屈折式にはガリレオ式とケプラー式の2種類があり、現在の天体望遠鏡はそのすべてがケプラー式となっています。ガリレオ式に比べて、高倍率が出しやすいこと、視野の広いアイピースを使えることが特徴で、天体の像を安定して見ることができ、取り扱いも比較的容易なため、小型の天体望遠鏡では、その大半が屈折式の望遠鏡となっています。

1.ガリレオ式
17世紀のガリレオが天に向けた天体望遠鏡は、1枚の凸レンズを用いた対物レンズと1枚の凹レンズを用いたアイピース(接眼レンズ)で構成された望遠鏡でした。
ガリレオ式は像が正立で見える利点がありますが、視野が狭く、また高倍率が出しにくい欠点も持っていて、現在では2〜3倍の倍率をもったオペラグラス(観劇用)にしか利用されていません。したがって、天体望遠鏡としては適さない光学系といえます。

2.ケプラー式
現在の天体望遠鏡、双眼鏡をはじめ、測量器械やフィールドスコープなどの屈折式光学系は、ケプラー式の光学系を使用しています。
ケプラー式の基本光学系は1枚の凸レンズの対物レンズと、同じく凸レンズのアイピースで構成された構造で、見える像は倒立像です。実用上、対物レンズは色収差を除くために2枚以上のレンズ構成となっていて、アイピースも複数のレンズの組み合わせになっています。
さらに、双眼鏡やフィールドスコープなどでは像を正立にするために、正立プリズムや正立レンズを用いています。
天体望遠鏡では、レンズ構成をシンプルにしてガラスの中を通過する光の吸収を抑えるため、正立のためのレンズ類は使用せず、倒立像のままのレンズ構成となっています
小型の天体望遠鏡では、圧倒的に屈折式の人気が高いのですが、口径が10センチクラスを超え、15センチクラスになると一気に高価になり、手が出せなくなるほどの価格となります。

反射式
反射式の天体望遠鏡は、屈折式に比べて光軸が狂いやすく、筒内で気流が発生して像が安定しないなどの欠点を持っていますが、大きな口径の天体望遠鏡が比較的安価に製造できることから、口径15センチ以上の天体望遠鏡では反射式が格段に多くなります。世界各地の天文台でも大口径の天体望遠鏡は、反射式を採用しています。また、反射鏡を自ら磨いて自作するファンもいます。

1.ニュートン式
対物レンズに相当する部分に、放物面をもった凹面の反射鏡(主鏡)と光を90度曲げて横から覗けるように平面鏡の二次鏡(副鏡)を用いた光学系です。17世紀後半にニュートンが発明したこの方式は、当初は金属を磨いて作られていましたが、現在ではガラスを磨いて表面にアルミニウムを真空蒸着(メッキ)した鏡が用いられています。中心像は無収差で、シャープな像を見せてくれますが、周辺部での像はコマ収差が目立つ欠点があります。
価格は比較的安価で、口径で比べると屈折式よりも大きな口径の天体望遠鏡を購入することができます。
また、大きな口径の望遠鏡が比較的安価に製作できることから、主鏡口径が25〜40センチクラスのドブソニアンと呼ばれる経緯台式架台をもった機種も根強い人気を持っています。

2.カセグレン式
主鏡はニュートン式同様に凹面鏡ですが、二次鏡が凸面鏡を利用した天体望遠鏡です。接眼部は、ニュートン式ですと筒の横から覗く感じですが、カセグレン式では、屈折望遠鏡同様に手前側から覗くようになります。

カセグレン式の市販品は、あまり多くありませんが、天文台では多く採用されています。最近は、主鏡及び二次鏡の鏡面構成を作りやすい球面に製造して、接眼部付近に補正レンズを用いて収差補正をしたものなどが市販されています。

3.シュミットカセグレン
カセグレン式と同様に主鏡と二次鏡に反射鏡を使った構成ですが、鏡を製造しやすい球面鏡にして、発生する収差を抑えるために、筒先に補正板と呼ばれている薄いレンズを取り付けたタイプ。アメリカにミードとセレストロンという2大メーカーがあって、日本でも愛用者が多く、主に口径20センチ以上の大きな望遠鏡に人気があります。
反射光学系の補正に屈折式の補正板を利用しているために、反射屈折式とよぶこともあります。

2007年10月3日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。