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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)


第71回 日本から日食が見える-2

皆既日食を見に行く

7月22日に見られる日食が近づいてまいりました。最近はこの日食のことがマスコミなどにも取りあげられるようになって広く知られるようになってきましたね。
観測者やマニアの方々は皆既日食が見られる皆既帯まで出かけようとしていますが、その皆既帯が通る範囲の陸地は、中国上海付近や日本ではトカラ列島付近に限られてしまいます。今から出かけようと発起しても宿泊のホテルなどは満室で、船や飛行機といった交通手段もたぶん予約が殺到していることが予想されます。船から日食を見る洋上ツアーも満席になっているかもしれません。
したがって、今から皆既日食ツアーなどに参加しようと決意したならば、天文雑誌などに出ている情報や広告を頼りに探し回ることになるでしょう。
今回の皆既日食では太陽黒点が少ない時期に当たることから、コロナ(太陽の光球の外側に広がるプラズマ状の輝き)の見え方が、写真で示すアフリカ南部日食のような広がったコロナの姿とならず、タイ日食で見られたときのように伸びたコロナが見られる極小型ではないかと予想されます。
皆既日食ではコロナの他に、太陽が月にすべて隠されてしまう直前と直後の2回、美しい輝きのダイヤモンドリングと呼ばれる現象を見ることができるのも大きな楽しみとなります。
こうした現象を目の当たりにみると、地球が宇宙の一部だということが実感できます。
もし、これからでも見に行きたいという方がいらっしゃいましたら大至急、旅行者などに問い合わせ、旅行の手はずを整えることをお奨めします。


日食
2001年アフリカ南部日食

日食
1995年タイ日食

日食
ダイヤモンドリング
(2006年トルコ日食)

日食は、その都度大きな感動をもって迎えることとなりますが、特にコロナの様子は、皆既日食ごとにその姿が異なり、感動します。今回はタイ日食のときのような姿が予想されます。

部分日食を身近に見る

日食
かけ始め 9時56分頃

日食
少し欠けがわかる10時02分頃

日食
10時26分頃

日食
10時50分頃

日食
11時13分食の最大

日食
11時37分頃

日食
12時1分頃

日食
12時25分頃

日食
12時30分頃

日食の様子は時刻とともに変化していきます。このシミュレーション写真を参考にじっさいの日食をお楽しみください

今回の日食は、部分日食としては全国的に見られます。お天気は心配ですが、ぜひ身近に天体の神秘を実感していただきたいと思います。
日食を見る場合、何時頃、どのくらい欠けて見えるのか、何時に始まり何時に終わるのか?食の最大は何時頃か?といった情報が必要ですが、関東地方で日食が始まり太陽がかけ始めるのは9時56分ごろ、日食の終了は12時30分頃の予想で、最も欠けて見られるのは11時13分頃になります。
全国各地でこの時刻や欠け具合は異なりますので、それぞれの地域の情報は新聞などに掲載される地域ごとの予報をご覧ください。
左に示すように日食当日のシミュレーション画像を作成してみました。本物の空での臨場感とはいきませんが、イメージを駆り立てるように写真画像にしてみました。

日食グラス
日食グラスを使って安全に太陽を見る

当日、じっさいに観察する際は、必ず日食グラスまたは日食メガネといった商品名で売られている日食観測専用のメガネを使用して太陽を見てください。こうした専用のメガネをつけずに直接太陽を見てはいけません。
黒い下敷きやろうそくのススをつけたガラス、それからフィルムの黒い切れ端などで太陽を見ると眼を痛める危険性がありますので絶対にしてはいけません。
専用の日食メガネなどは、現時点では横浜のアイソテック、京都の国際光器それに望遠鏡メーカーのビクセンなどから発売されており、最寄りの望遠鏡ショップやカメラ店などで入手できます。

日食の当日が近づいてまいりますと売り切れることも予想されますので、早めの注文、受け取りを済ませ、準備万端で当日を迎えるようにしましょう。

6月の天文情報

曜日 月齢 天文現象など
1 7.6 月が天の赤道を通過(南半球へ)
2 8.6 木星の衛星ガニメデがエウロパを隠す(部分食)
3 9.6  
4 10.6  
5 11.6 芒種(二十四節気)
6 12.6 金星が西方最大離角(太陽から45度51分離れる−4.3等)
7 13.6 木星の衛星エウロパがイオを隠す(部分食)
8 14.6 満月、月が最南
9 15.6
10 16.6  
11 17.6 月の距離が最遠、入梅
12 18.6  
13 19.6 水星が西方最大離角(太陽から23度27分離れる)
14 20.6 木星の衛星エウロパがイオを隠す(部分食)
15 21.6 月が天の赤道を通過(北半球へ)
16 22.6 下弦の月
17 23.6  
18 24.6  
19 25.6  
20 26.6 月と金星と火星が接近
21 27.6 夏至(二十四節気)
22 28.6 月が最北
23 0.3 新月、月の距離が最近
24 1.3 土星の衛星タイタンが土星の影から出現(19時51.9分)
25 2.3  
26 3.3 木星の衛星イオがエウロパを隠す(部分食)
27 4.3  
28 5.3 月が天の赤道を通過(南半球へ)
29 6.3 上弦の月
30 7.3 木星の衛星ガニメデの影にカリストが入る

6月の星座

6月は梅雨空、夜も当然のことながら曇りや雨の日が多く、満天の星空を仰ぐことがむずかしい時期です。
雲間に見られる明るい星があっても、ある程度広域に晴れ間がないと星座をさがすのはむずかしいものですが、雲間から1等星がのぞいたとき、何の星か言い当てることができるようになればベテランといえます。
星空をながめるとき、星図を持って星座をたしかめていると、方角と日にちと時刻でどの星がどの方角にあるのかわかるようになります。
貴重な梅雨の晴れ間を生かして春の星座をみつけましょう。

6月の星座案内図

星図(黒地) 星図(白地)

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※このコラムで使用している星図は、(株)アストロアーツの天文シミュレーションソフトステラナビゲータ.8から出力し、加工したものを使用しています。

2009年6月3日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。