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つくばでバードウォッチング 片山 秀策

第31回 霞ヶ浦の惨劇

桜の花が散って、つくば市内の色々なところで春の花が咲き競っています。住宅地も昔は里山だったので、タンポポやぺんぺん草に混じって、道端や公園の隅にスミレやヘビイチゴなどの花を見つけることができます。

木々や野草の花に誘われて、鳥の繁殖期に入り、ペアになった鳥たちが姿を見せるようになっています。もちろん、雄達は大きな声で囀り始めています。鳥の言葉はわかりませんが、「僕の髪が肩まで伸びて・・・・・」などと歌っているのかもしれません。

キジやコジュケイが林の奥で鳴いていたり、カラスが枝を咥えて飛んでいたりしてます。犬を飼っている家では、犬の抜けた毛を集めに来る鳥を見ることができるかもしれません。犬の毛は、巣の中に敷き詰めて、卵や雛が暖かくできるように最後の仕上げに使うのです。

ヨーロッパやアメリカでは、鳥のために、この時期に色とりどりの毛糸を短く切って軒先に吊して置くことがあります。鳥が子育ての終わった後に、カラフルな毛糸を使った巣を貰って飾ったりするようです。

5月になると、まだ良く飛べない巣立ちビナが目立ちますが、くれぐれも誘拐しないようにしてください。近くに親鳥がいて、餌を運んできたり、誘導したりしていて、決して迷子になっていません。人が近づいたので、親鳥が姿を隠しているだけです。親鳥が心配していますので、そのままにして、その場を離れてください。

前置きが長くなりましたが、今、霞ヶ浦の蓮田で起こっていることを報告しておきたいと思います。

数年前から霞ヶ浦の蓮田は、ほ場整備といって、蓮田の作業がしやすいように、農道を整備したり、蓮田の畦をコンクリートにして水が漏れないようにしたりといった工事が進んでいます。その工事の中で、蓮田に野鳥が入り込まないように、防鳥網を張り巡らせています。カモがハスの芽を食べるのを防ぐというのが防鳥網の目的のようです。

この防鳥網に野鳥が絡んで、抜けられなくなり、死んでしまうという問題が起こっています。今使われている防鳥網は、柔らかな素材で作られているので、鳥の足や羽が挟まると、鳥の重みで網が閉じてしまい、もがけばもがくほど、網が強く締まってしまうのです。見つけて直ぐに外すことができれば、鳥の命は助かるのですが、何時も見回りすることもできないので、なかなか上手くいかないようです。

農作業が始まると鳥の死体は取り外されることが多くなるのですが、それまでは写真にあるように沢山の鳥の死骸がぶら下がっています。網にかかったカモを狙ってきたタカやフクロウが、網に絡むという、二次災害も起こっています。

鳥がぶつかっても、跳ね返されて、絡むことがない新しい網が開発されています。日本野鳥の会茨城支部はこの状況を調査して、茨城県に対策を要請した結果、茨城県はこの新しい網を使う場合に、補助金を出すなど普及を図っていますが、農家としては追加の投資が必要なことから、残念なことに普及が足踏みしています。

バードウォッチングしていると、こんな悲しい現実に直面することがあることも、頭の片隅にとどめて置いてください。

2007年4月23日

片山秀策さんのプロフィール


北海道で暮らしていた時に、庭に来る鳥を見てバードウォッチングに開眼して以来、野鳥の虜に。

死ぬまでに日本で記録のあった鳥を全部見たいと不可能な企てに挑戦中。

日本野鳥の会茨城支部会員、NPO宍塚の自然と歴史の会監事、つくば農林野鳥の会代表幹事