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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第43回 金星と土星

2月の夕空に金星と土星

昨年は明けの明星(みょうじょう)として輝いていた金星が、今年に入ってからは夕空に見られるようになりました。夕空に見られる金星は、宵の明星と呼ばれ、一番星として夕方の黄昏(たそがれ)時から西の空に夕焼けとともに輝く様子が見られます。
金星の明るさは、−3.9等星で、月を除けば他のどの星よりも明るく見られますので、めだちますが、夕暮れ時しか見られず、みなさんが星座ウオッチングをされると思われる時刻(午後8時とか9時頃)にはもう見ることができません。その頃には西の地平線の下に沈んでしまっているのです。

それから東の空には夕方から土星が見られるようになります。明るさは0.2等星で、金星には及びませんが、西に金星、東に土星とふたつの惑星を見ることができるわけです。
土星は、夜が更ける頃には高度も高くなり、見やすい位置まで昇っていきます。天体望遠鏡で見る土星の姿は、リングを持つ姿として私たちに宇宙の不思議や神秘的な印象を与えてくれます。

では、金星はどのように見えるのでしょうか?今年の2月の金星の姿は、楕円型といいますか卵形のような円形よりもややゆがんだ形に見えます。天体望遠鏡では100倍くらいの倍率をかけて、その形を確認してみましょう。ただし、西の低空にあるため、空気の揺らぎによって、ゆらゆら陽炎(かげろう)のように揺れる金星の姿を見ることとなります。

宵の明星

西空の低空に、まだ空が夕焼けに染まっているうちから見られます。ほかの恒星が輝き出す前から明るく目立ちますからすぐ発見できるでしょう。夜空がすっかり暗くなる頃には西の地平線に沈んでしまいます。この写真は今年の1月20日に福島県石川町で撮影したものです。

西の夕空(星図)

西の夕空の中に輝く金星は、星座をかたちづくる星々が見え始める前から一番星として輝きますので、だれでもすぐにみつけることができます。

東の夕空(星図)

東の夕空には、春の星座とともに、土星の輝きがあります。時間経過とともに高度が高くなり、天体望遠鏡で見ると、その環をもつ姿がはっきり見られるようになります。

2月の星座案内(冬の星空)

今月の満月は2月2日。この前後の日にちは、夜空の星を鑑賞するのではなく、月の輝く透き通った光線で地上の景色が照らされている美しい風景などを見るのもいいでしょう。
星座の星々は、月が下弦を迎える2月10日ごろから上弦を迎える2月24日ころまでが適しているといえます。
先月は冬の1等星を結んでつくる六角形のお話しをしましたが、次にはそれぞれの1等星がある星座の星々をしっかり確認しましょう。2月は冬の星座が午後9時ころに、ちょうど見頃となります。夕食後に防寒対策をして、スターウオッチングに挑戦しましょう。 晴れた夜空を仰ぎ見れば天頂付近にはぎょしゃ座の主星カペラが輝き、おうし座のアルデバランやすばるも頭上高くに見ることができます。南の空では、全天一明るい恒星シリウスのあるおおいぬ座をはじめ、こいぬ座やオリオン座などが見られ、寒さに凍てつく星々のするどい輝きがチカチカとまたたき、何ものにも代えがたい美しさで眺められ、私たちに感動をあたえてくれます。
光害(ひかりがい)の少ないところで夜空を見るチャンスがありましたら、ぎょしゃ座からいっかくじゅう座にかけて淡く輝く冬の天の川も合わせてみつけてみましょう。

2月の星座案内図

星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※この星図は、株式会社アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています。

双眼鏡がほしい(シリーズ3)

双眼鏡で観測する

彗星や星雲、星団などの観測には天体望遠鏡よりも双眼鏡を多用します。両目でのぞくため、淡い対象を見やすく、はっきりと見ることができます

双眼鏡がほしいシリーズも今月で3回目となりましたが、「どのような星が見られるの?どんな天体観測に役立つの?」といった問い合わせがありました。今月はそれにお答えして、見られる対象や天体観測に使っている例などを述べたいと思います。双眼鏡ではその口径で能力に違いがあることは先月のコラムで述べましたが、今回の観測は7×50程度の双眼鏡を使用することを前提にしています。

星雲、星団観測に最適

夜空には輝いて見える恒星以外に、宇宙にあるガスで恒星された星雲が見られます。また、恒星が群がっているように見られる星団、さらに私たちの銀河系(天の川)よりも外に存在する銀河(以前は「小宇宙」などといった呼び名もありましたが、現在は銀河に統一されています)などが見られますが、これらの観察に双眼鏡が向いています。
双眼鏡や天体望遠鏡の明るさ(光明度)は、口径が大きいほど、また、倍率が低いほど明るく対象を見ることができ、星雲の観測においては、この明るさが大きく影響してきます。従って、手持ちで使用する双眼鏡で口径が大きく倍率が低い7×50(7倍、口径50ミリ)を使用するという前提で述べますと、有名な明るい星雲をこれで見ることができます。冬ですとM42オリオン大星雲、夏ではM8干潟星雲、それから秋ですとM33アンドロメダ銀河などが初心者でも容易にみつけ、またその姿に感動を覚える対象といえましょう。
星団ですと冬の星座では散開星団M45(すばる)やふたご座のM35、ぎょしゃ座のM36,37,36、おおいぬ座のM41など、また、春の星座ではかに座のM44プレセペ星団などの星の集団をはっきりと確認することができます。
残念ながら春の星座のしし座やかみのけ座それにおとめ座などに見られる銀河(M65,M66など)は対象が小さく、口径50ミリクラスの手持ちの双眼鏡では確認がむずかしく、80ミリクラスの双眼鏡を三脚に取り付けて観測することとなります。

星の明るさを比較する

恒星には明るさによって等級付けがなされ、1等星、2等星といった呼び方をしていますが、先月のコラムに登場したオリオン座のベテルギウスをはじめ、多くの明るさが変動する恒星(変光星)があります。変光星の等級を確認する(観測する)には、変光星と周囲にある恒星の明るさを双眼鏡で見て比較することによって確認できます。

このように付近の星の明るさと比較して目的の変光星の観測時の明るさを決定することが変光星の観測なのです。
変光星は、数多く存在し、手引き書も市販されていますので、興味を持ったらぜひ、継続的な観測をお勧めします。役に立つ観測を行なうことができます。

いて座付近の天の川

天の川付近には星が多く、肉眼で見えない暗い星も双眼鏡では見ることができ、また、星雲や星団もたくさん見ることができます。

月や惑星では?

月の満ち欠けの様子を毎日観測し、記録するといった観察では双眼鏡が威力をはっきします。また、三日月のころの月には地球に反射した太陽の光が月の暗い部分を照らし、わずかに見えます。これを地球照(ちきゅうしょう)といいますが、三日月でも月が丸いことを確認できます。この地球照は、視力の良い人では双眼鏡を使わなくても見ることができますが、双眼鏡を使えば誰でもはっきりと確認できます。
月食の様子などももちろん肉眼よりも双眼鏡を使うことで、より詳細にその様子を観察できます。
惑星では、天体望遠鏡と違って、そのディティールは見ることができませんが、木星の4個のガリレオ衛星は確認することができます。
残念ながら金星の満ち欠けの様子や、土星の環は見ることができません。
水星や火星では見かけ上、星座の中を移動していくのが速く、毎日観測すると恒星の間を移動していく様子がわかります。付近に見られる星との位置関係をスケッチなどしておくと、翌日にはその移動した位置関係がはっきり確認できます。

そのほかの天体など

二重星はどうでしょうか?肉眼でも視力の良い人なら見ることができる北斗七星のミザール(2.2等)とアルコル(4等)は、肉眼二重星と呼ばれたりしますが、視力がよくないと実際は肉眼ではふたつの星には見えません。それが双眼鏡では確実にふたつの星であることがわかります。

次に双眼鏡を天の川に向けてみましょう。天の川は、冬の星座の中に見られ、2月ですと明け方には夏の天の川も東の空に登場します。その天の川の実体は、川といっても水の流れではありません。そのボヤーと淡く輝く全てが星で構成されている星の集団だということが双眼鏡を使ってみるとわかります。そこには、数多くの星々が輝き、星雲や星団も加わって、双眼鏡を使って天の川の中を見ていくと、まるで宇宙を遊泳しているような気分にさせてくれます。双眼鏡の醍醐味とはこうしたことをいうのでしょう。みなさんにもぜひ、実体験してみましょう。

ヘール・ボップ彗星

双眼鏡で楽しむ天体の中で、彗星を見るのは、格別の迫力と感動を与えてくれます。位置の予報にしたがい双眼鏡で天空の中の彗星を発見したときの喜びはひとしおです。

彗星も新聞に報道されるような顕著なものは、たいてい明るく、双眼鏡で迫力のある姿としてとらえることができます。彗星核から放出されるガスが太陽風によって流されて尾をひいた姿は彗星独特のもので、その尾の様子まではっきりと確認することができます。

私は双眼鏡で今までに、ハレー彗星、百武彗星、ヘール・ボップ彗星などたくさんの彗星を見て感動してきました。たいていの彗星は天体望遠鏡でなく双眼鏡で観測してきましたが、双眼鏡の方が視野は広いし、しかも明るく見え、淡い彗星などの観測には適しているといえます。

ここで、重要な注意を申し上げます。夜空のいろんな天体を見ようと、双眼鏡を購入すると、もちろん昼間も使えるわけで、バードウオッチングや空を飛ぶ飛行機を追いかけたり、スポーツ観戦にと、使い方はいろいろありますが、その中で、太陽だけは決して眺めないでください。不注意で誤って太陽を視野に入ると大変危険ですから、眼を痛めないように「太陽は絶対に見ない」ことを心がけてください。

お知らせ

今年も3月23日(金)から25日(日)まで、東京お台場のビックサイトでPIE2007(フォト イメージング エキスポ2007=カメラや写真用品の見本市)が開催されますが、そこに社団法人日本望遠鏡工業会も天体望遠鏡や双眼鏡を出展いたします。多くの望遠鏡メーカーが出展しますので、製品を一度にたくさんチェックできるチャンスです。ぜひ、ご興味がある方は、足を運んでください。
3月24日(土)の午前11時45分から12時45分までの1時間、特設会場で私の講演も予定されています。講演内容は「望遠鏡による天体観測の楽しみ方」です。誰にでもわかりやすく天体望遠鏡や双眼鏡を使った星の楽しみ方を解説いたしますので、ぜひ、お楽しみいただきたいと思います。

2007年2月5日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。