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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)


第72回 日本から日食が見える-3

日食観測

関東地方での最大の食
関東地方での食の最大の頃の様子
7月22日11時13分ころ

いよいよ日食が見られる7月22日が近づ
いてまいりました。日本全国で見られるの
で、大いに盛り上がることが期待できます。
欠け具合は右の図に見られるように地域に
より大きな差があります。
遠くにいる親戚や友人の方とどのくらい欠
けたか、連絡をとりあって比べてみるのも
いいですね。

日本全国の日食
日食メガネ発売のアイソテックの案内チラシ

日本の中では、トカラ列島や屋久島などで100パーセント太陽が月に隠される皆既日食になります。そうした場所では、はるばる出かけて皆既日食を観測するマニアや観光客でにぎわうことでしょう。
皆既食にならない区域でも沖縄や九州では90パーセント以上欠ける様子を見ることができますし、関東地方でも75パーセント近く欠けますので、日食の進行具合を観察して楽しむことができます。

部分日食を安全に見る

先月のコラムでも述べましたが、部分日食の観察では太陽を直視してはいけません。
見るときは必ず日食観測専用のグラスなど(日食メガネなどの名前で売られています)を使用しましょう。
使ってはいけないものを次に掲げます。

黒い下敷き:黒以外のカラーの下敷きでももちろんダメ!
ススをつけたガラス:ススのすき間から太陽光が透過するのでダメ!
写真フィルム:赤外線などが遮断されない危険性があるのでダメ!
通常のサングラス:太陽を見るものではありません。眼を痛めます!
双眼鏡や天体望遠鏡:直接太陽を見ると失明の危険性があります!

もちろん、肉眼そのもので直接太陽をみてはいけません。念のため!
安全に見るためには、市販されている日食専用のメガネ(市販品では300円〜2000円程度の価格)を使用してください。観察する人が複数の場合、人数分の日食メガネがなくても交代で観察すればすみます。
また、安全といわれる日食専用メガネですが、これも天体望遠鏡や双眼鏡を使って観測するときに用いると焼けることもあり、絶対に併用してはいけません。
天体望遠鏡では投影法といって専用の太陽投影板を使用して投影した太陽像を見るようにします。写真を参照してください。
では、晴れてみなさんが日食を見られるようにお祈りしながら私は中国に出かけてきます。

太陽投影板

太陽投影板

天体望遠鏡でも太陽を直接見てはいけません。見るときは専用の太陽投影版(写真上)に投影して安全に太陽を見ましょう

7月の天文情報

曜日 月齢 天文現象など
1 8.3  
2 9.3 半夏生(太陽黄経100°)
3 10.3 木星の衛星イオがエウロパを隠す(部分食)
4 11.3 さそり座α(アンタレス)の食(17時54分)
5 12.3 月が最南
6 13.3  
7 14.3 七夕 小暑(二十四節気) 満月 半影月食
8 15.3 月の距離が最遠
9 16.3
10 17.3 海王星と木星が最接近(00°33.7′)
11 18.3  
12 19.3  
13 20.3 月が天の赤道を通過(北半球へ)
14 21.3 木星の衛星ガニメデがエウロパを隠す(部分食)
15 22.3 下弦の月
16 23.3  
17 24.3  
18 25.3 プレアデス星団の食
19 26.3 夏の土用 月が最北
20 27.3 海の日
21 28.3 木星の衛星ガニメデの影にエウロパが入る
22 0.0 日食(奄美、屋久島地方では皆既日食)
23 1.0 大暑(二十四節気)
24 2.0  
25 3.0 月が天の赤道を通過(南半球へ)
26 4.0  
27 5.0 木星の衛星イオがエウロパを隠す(部分食)
28 6.0 みずがめ座δ流星群(南群)極大
29 7.0 上弦の月
30 8.0 木星の衛星ガニメデの影にイオが入る
31 9.0  

7月の天文現象

7月の最大の天文現象は7月22日の日食といえますが、そのほかにもめずらしい現象があります。
まず、7月7日七夕の日の満月に見られる半影月食(はんえいげっしょく)です。満月の月が東の空から昇ってくる19時4分ころには既に半影月食は始まっていて、19時45分ころに終了します。通常の月食のようにはっきり欠けて見えるわけではなく、地球の半影により、やや明るさが落ちるといった程度で意識して観測しないとわからない程度の月食です。
それから7月4日にはさそり座の1等星アンタレスが月に隠される現象があります。つくばでは17時54分ころに明るい空の中で月にアンタレスが隠される現象として見られます。双眼鏡などがあると観測しやすいでしょう。
7月10日には木星と海王星が接近して見られます。天体望遠鏡があれば、ぜひ観測してみましょう 。
さらに7月19日の明け方、東の空で月と金星と火星が集合します。写真に撮るとしたら2〜10秒程度の露出で撮影できることでしょう。コンパクトデジタルカメラでも三脚を使って撮影ができるかも知れません。チャレンジしてみましょう。

7月の星座

梅雨が明けるといよいよ本格的な夏空がやってきます。
今年も夏の大三角と天の川をさがしましょう。
星座さがしは星図や星座早見をたよりに夏の大三角からスタートしてこと座、わし座、はくちょう座がみつかったら次は南の空のさそり座、てんびん座、いて座などをみつけましょう。
ちいさな星座もメジャーな星座に寄り添うようにそっと輝いていますので、それらもみつけましょう。こぎつね座、や座、いるか座、こうま座、みなみのかんむり座などみつけたときの喜びは大きな星座に負けないくらいうれしいものです。
キャンプや海水浴などで夜空の暗い郊外地に出かけたときが星座さがしのチャンスです。お出かけの際は星座早見などを持参することをお忘れなく!

7月の星座案内図

星図(黒地) 星図(白地)

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※このコラムで使用している星図は、(株)アストロアーツの天文シミュレーションソフトステラナビゲータ.8から出力し、加工したものを使用しています。

2009年7月3日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。