つくばでバードウォッチング 片山 秀策 |
第13回 冬鳥が帰ってきました 9月は残暑が続いていましたし、10月に入っても真夏日があったりしましたが、季節は確実に冬に向かっていて、だんだん肌寒くなってきました。シベリアはもう雪が降っているのではないでしょうか。北国で繁殖した鳥達は、南の越冬地に向けて渡りを続けています。早い時期に渡りを始めた鳥は、今頃は越冬地に到着しているのではないでしょうか。シベリアからオーストラリアまで非常に長距離を渡る鳥や、日本の国内を移動する鳥がいます。数年前、フランスの「WATARIDORI」という記録映画がつくばでも公開され、ダイナミックな鳥の渡りを見ることができました。 そろそろ、つくば市内の公園や住宅地にも、冬を過ごす鳥達が戻ってくる頃になりました。去年のフィールドノートを見ると、10月15日にカケスが山から下りてきていました。今年はいつ頃になるでしょうか。カケスはドングリが大好きなので、ドングリの落ちているような公園や遊歩道に出没するかもしれません。渡ってきたばかりのころは、警戒心が強く、人の前に現れてくれません。林の中で「ジェイ ジェイ」と鳴く声が聞こえたら、カケスが戻ってきています。 「チャチャ チャチャ」と植え込みの中で鳴いているのはウグイスです。同じような日陰の場所で「チッ チッ」とアオジも鳴いていますが、まだ数は少ないと思います。ウグイスやアオジは、繁殖期には非常に綺麗な声でさえずりますが、冬には外敵に見つからないように小さな声で仲間と連絡するようになります。このような鳴き声を「地鳴き」といいます。
つくば市内の公園の池には、カモ達が戻ってきています。この時期のカモは雄も雌も同じような地味な羽の色で、見分けが付きません。よく見ると雄と雌は違っているところがあるので、慣れてくるとすぐに違いがわかるようになります。定期的に見ていると、雄の羽が生え替わって、だんだんと綺麗な繁殖羽に変わるところを見ることができます。羽が生えかわることを「換羽(かんう)」といいますが、野鳥は飛べなくなると外敵から逃げることができなくなるので、少しずつ羽を生えかわらせるのです。
【ワンポイントメモ】 フィールドノート(野帳)を書く バードウォッチングはただ鳥を見ていても楽しいのですが、何を見たかを記録しておくと、一層楽しさが増します。一年間の記録があると、「去年はいつ頃モズが鳴き始めたけれど、今年は少し早いので、寒くなるかもしれないな」とか「この季節はあそこに行けばヨシガモを見ることができる」といった自然の変化を知るための情報源になります。また、知らない鳥を見た時には、特徴を記録しておくと、後から調べるのに役立ちます。 また、少しずつ見た鳥の種類が増えてくると、何種類の鳥を見たかリストを作りたくなってきます。そんな時に記録があると正確なリストを作ることができます。普通、自分の見た鳥のリストをバードウォッチャーは「ライフリスト」と呼びます。このライフリストを増やすことを目標にするバードウォッチャーもいます。「ザ・ビッグイヤー」というノンフィクションを読むとバードウォッチャーにとって記録の面白さが判ります。 見た鳥の名前を書くだけですから、どのようなノートでも良いのですが、アウトドアで使うことを考えるとやはり適したものがあります。一般的に、写真の右側の緑色の測量用の「野帳(フィールドノート)」を使っている人が多いようです。シャツの胸ポケットにちょうど入る大きさで、表紙がしっかりしているので片手で持って記録できます。左側の茶色の野帳は、表紙がビニルで、中は合成紙を使っているので、雨の中でも使え、水に落としても大丈夫なものです。 次に、筆記具ですが、屋外で野帳に記録するのは、鉛筆がいいのですが、書いているページの裏の文字の黒鉛が反対側のページに移ってしまい文字が読みにくくなりします。といって普通のボールペンは、寒くなると書けなくなったり、暑くなるとインクが漏れたりと屋外での利用には向きません。 私は今、特殊なインクを使って、インクを加圧しているので、気温が−20度でも、水の中でも、上を向けても書ける「パワータンク(三菱鉛筆)」というボールペンを使っています。このボールペンはアウトドアの記録用に最適でおすすめです。 2005年10月11日 |
片山秀策さんのプロフィール |
死ぬまでに日本で記録のあった鳥を全部見たいと不可能な企てに挑戦中。 日本野鳥の会茨城支部会員、NPO宍塚の自然と歴史の会監事、つくば農林野鳥の会代表幹事 |