つくばでバードウォッチング 片山 秀策 |
第28回 荒磯で冬越し 寒の入りで、一段と寒さが増してきているようです。早朝は、つくばの街も霜が降りて真っ白です。白い息を吐きながら散歩するのも、真冬の楽しみでしょう。 冬将軍は元気になってきていても、一日の長さは少しずつ長くなっていて、着実に春が近づいてきています。湖や池で越冬しているカモ達も、雄が雌の周りを回って、頭とお尻を近づける結婚のためのダンスを始めています。もう伴侶を見つけてペアになっているカモもいます。ホオジロやウグイスも、気の早い雄は今月の末頃から、さえずりの練習を始めることでしょう。 今月はひたちなか市の海岸の荒磯で越冬しているちょっと変わり者のシノリガモを紹介しましょう。シノリガモに会うには、阿字ヶ浦から那珂湊漁港までの海岸を巡って、波で洗われている岩礁の周辺を探します。白く波が砕ける岩礁の近くで潜水して、海底の海草を採って食べている姿を見ることができます。大きな波が来ると、潜って波を避け、時折、岩礁の上にあがって休んでいます。 雄と雌では模様が違います。どちらも遠目で見ると黒っぽいカモですが、望遠鏡でよく見ると、面白い模様の顔をしています。シノリガモの英名は、Harlequin Duckと呼ばれるように、道化者ガモと呼ばれるのが良くわかります。でもよく見ると、派手ではありませんが、非常にきれいな色のカモです。 シノリガモは、不思議なことに、他のカモのように波のない静かな池や湖にはいかず、波の荒い岩場を好んで越冬しています。シノリガモの繁殖地は、流れの早い渓流のある所ですから、同じような環境の荒磯海岸を越冬地に選んでいるのではないかと考えられています。 もう一つ、他のカモ達と違うのは、繁殖の方法です。シノリガモは、大きな木にできた空洞で産卵して、卵をかえすのです。生まれた雛は、木の上から落ちるようにして、地上に降りて、渓流で親と一緒に泳いで、成長します。どうして、そのような厳しい環境を選んでいるか判っていません。 シノリガモは、越冬する環境が限られるので、どこでも見ることができる訳ではありません。多様な自然環境のあり茨城県だから見ることのできるカモだと思います。是非時間を作って見に行くことをお勧めします。 2007年1月18日 |
片山秀策さんのプロフィール |
死ぬまでに日本で記録のあった鳥を全部見たいと不可能な企てに挑戦中。 日本野鳥の会茨城支部会員、NPO宍塚の自然と歴史の会監事、つくば農林野鳥の会代表幹事 |