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つくばでバードウォッチング 片山 秀策

第34回 野生化したアヒルの仲間 バリケン

つくば市周辺の野鳥の子育ても終盤に入っています。霞ヶ浦の湖岸のアシ原で大きな声で「ギョギョシ ギョギョシ」と大合唱していたオオヨシキリもだんだんと静かになってきました。子育てが終わった鳥たちは、静かになり、見つけづらくなってしまいます。

ですから、真夏は、バードウォッチングをお休みにするか、海岸に行ってアジサシの仲間を捜したり、休耕田を廻ってシギ・チドリの仲間を捜すことになります。でも、これはちょっとマニアックですから、今回はちょっと変わった話題にします。

池のある公園でバードウォッチングをしていると、写真の鳥を指さして「あれは何という鳥ですか」とよく聞かれます。確かに、赤いブツブツのある奇妙な顔をした鳥で、普通の鳥ではないような感じです。

この鳥は、「バリケン」といって、中南米原産のアヒルの仲間です。野生のバリケンの「ノバリケン」は、メキシコより中央アメリカを経て南アメリカのアマゾン川ラプラタ川流域までの地域に留鳥として生息しています。

このノバリケンを、ヨーロッパで肉やフォアグラを取るために家畜化したのが「バリケン」です。「フランスガモ」、「タイワンアヒル」、「麝香アヒル」などと呼ばれることもあります。羽の色は、全体が白から、まだら模様、黒まで多様です。よく見ることができるのは、頭が白で体が黒のバリケンでしょう。

日本へは、肉用として持ち込まれましたが、逃げ出したものや、捨てられたものが各地で繁殖して、生息地を広げているようです。野生化しているうちに飛翔能力が戻り、相当遠くまで飛ぶものもいます。以前、利根川上空を飛ぶ黒い点のように見える鳥を双眼鏡で見るとバリケンでした。バリケンは、公園の池を中心に生息域を広げているようです。

つくば市周辺では、洞峰公園や乙戸沼公園で見ることができます。体は雄の方が大きく、顔の赤い部分が大きくなっています。雄は、近づくと「シャー シャー」というような声を出して威嚇してきます。乙戸沼では、季節と関係なく真冬でも繁殖していてヒナを見ることがあります。

乙戸沼では、普通のアヒルとバリケンが交配して、混血のアヒルが生まれています。バリケンとアヒルのハイブリッドを「ドバン(土蛮)」と呼びます。ドバンは、頭は丸くてアヒル、嘴は赤くバリケン、尾羽は尖ってバリケンと、バリケンとアヒルの特徴をもっています。野生の条件では、ドバンは生まれにくいので、探してみてください。

バリケンだけでなく、アヒルやガチョウなど家畜化した野鳥についても機会があれば紹介したいと思います。

2007年7月17日

片山秀策さんのプロフィール


北海道で暮らしていた時に、庭に来る鳥を見てバードウォッチングに開眼して以来、野鳥の虜に。

死ぬまでに日本で記録のあった鳥を全部見たいと不可能な企てに挑戦中。

日本野鳥の会茨城支部会員、NPO宍塚の自然と歴史の会監事、つくば農林野鳥の会代表幹事