ちあきの星空コラム
第89回 今年も見られるふたご座流星群 (2010/12/03)
今年も見られるふたご座流星群
起源は小惑星ファエトン
毎年、確実に観られるふたご座流星群は、多くの天文ファンに流れ星の楽しみを与えてくれ、今年もたくさん見られることが期待されます。
流星群の流星は、空の1か所から放出されるように見られますが、これは宇宙の放浪者といわれる彗星から放出されたダスト(チリなど)が彗星軌道上に帯状に漂っており、その軌道と地球軌道とが交差することによって、ダストが地球に降り注ぎ、流れ星が見られるのです。
ところが、ふたご座流星群の母体は彗星ではなく小惑星のファエトン(小惑星番号3200)だといわれています。
今年は12月14日20時頃に流星数のピークがやってくるといわれていますが、ちょうどその時刻には上弦過ぎの月が木星の近くで明るく輝いており、見られる星の数が少なく流星も見えにくいことが心配されます。
しかし、月は日周運動とともに西に傾き、日付が変わる頃ころには西の地平線に沈んでしまいますので、この頃から明け方までの時間帯が観測の好機となります。
どこに流れるのか?
ふたご座流星群という名前から、ふたご座で流れるのかというとそうではなく、全天のどの方角を見ても流れる可能性がありますので、どの方角を見て観測してもOKなのですが、サマーベットなどに寝そべって天頂付近の光害(ひかりがい)の少ない夜空を仰ぎ見る方が星が見えやすく、観測の効率が良いといえましょう。
流星が見られたら、その流れた軌跡を逆にたどっていくと、ふたご座の付近を通ります。複数の流星を観測すると流星群の出発点がふたご座の1等星カストルの付近にあることがわかります。
その流星の出発点のように見える位置を放射点(輻射点ともいいます。)といい、同じ放射点から出たように見られる流星は、群流星と呼んでいます。
夜空をしばらく観測し、流星を数えていると群流星と違う方向から流れる流星も見られます。これらは散在流星と呼んで群流星とは区別しています。
1時間ごとの流星数を数えるだけでも立派な観測といえますから、観測したらメモもとっておくといいでしょう。
寒さ対策は充分に!
流星の観測は、じっと動かずに星を見続けるので、寒さ対策を充分にしましょう。ダウンジャケットなどの上着を着ることはもちろんのこと、手袋、帽子やマフラーなども用意しましょう。カイロなども有効です。膝掛け毛布などもあるといいですね。
見る姿勢は、立ってみるよりは椅子に掛けてみる方がラク、さらにサマーベットなどがあれば寝そべって見られるので首がラクです。地面にシートを敷いて天頂付近を見やすくするのも観測上は有効といえますが、これは寒さもひとしおですので、寒さ対策の工夫が必要です。
自宅の庭やデッキがあれば電気炬燵を持ち出して足下を暖めるといった工夫もできますね。暖かい飲み物なども用意して、無理せずに流れる流星をウオッチングしましょう。
1月4日にはしぶんぎ座流星群が見られる!
年を越して2011年1月4日にも実は多くの流星を見ることができます。お正月気分が抜けきれない1月3日の夜から4日の朝にかけての観測ですが、今年の星見始めとして、ぜひ流れ星を見ましょう。
しぶんぎ座流星群は、8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群とともに3大流星群のひとつに位置づけられています。
現在はしぶんぎ座という星座名はなく、りゅう座の一部ですが、過去の星座名の名残から流星群の名称はしぶんぎ座流星群と継続して呼ばれています。
放射点はりゅう座とおうし座の境目あたりで、1月3日の夜から4日の夜明け前までが観測好機で1時間に20個以上の流星が流れることが期待されます。
皆既月食が見られる
12月21日に今年3度目の月食が見られます。しかも今回は皆既月食で、地球の影にすっぽり入ってしまった月が、東の地平線から昇ってきます。
午後5時ころには夕焼け空がだんだん夜の色に変化して暗くなり星が良く見えるようになりますが、東北東の地平線に注目しましょう。地球の影の中に入って、赤銅色に染まった満月がゆっくりと昇ってくる様子を見ることができます。
その月もおおよそ午後6時ころには皆既食の原因の地球の影から抜け出だして部分月食に変化しますが、ゆっくりと天高く昇っていきながら部分食から通常の満月に変化していきます。午後7時を過ぎる頃にはすっかり満月の輝きをとりもどします。
今回は、夕方から見られる月食のため、時間帯としてお子さんを含め観察に適した月食といえます。ぜひ、赤銅色に染まった皆既月食とその後の部分月食をお楽しみください。
ハートレイ彗星みましたか?
先月のコラムで紹介したハートレイ彗星は、12月にも継続して見ることができます。
場所は、おおいぬ座のシリウスの東側(左側)冬の星座の中に見られます。
だいぶ暗くなってきましたので肉眼でみつけるのはむずかしく、天体望遠鏡でさがしましょう。青緑色の神秘的な彗星の姿を確認しましょう。
12月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 水 | 24.9 | 月の距離が最近 |
2 | 木 | 25.9 | |
3 | 金 | 26.9 | |
4 | 土 | 27.9 | 金星が最大光度(-4.7等) |
5 | 日 | 28.9 | |
6 | 月 | 0.4 | 新月 月の赤緯が最南 |
7 | 火 | 1.4 | 大雪(二十四節気) |
8 | 水 | 2.4 | |
9 | 木 | 3.4 | |
10 | 金 | 4.4 | 月、金星、火星の接近(夕方の西空) |
11 | 土 | 5.4 | |
12 | 日 | 6.4 | |
13 | 月 | 7.4 | 上弦の月 月が天の赤道を通過(北半球へ)月の距離が最遠 |
14 | 火 | 8.4 | ふたご座流星群の極大(出現期間12月5日~12月20日) |
15 | 水 | 9.4 | |
16 | 木 | 10.4 | |
17 | 金 | 11.4 | |
18 | 土 | 12.4 | |
19 | 日 | 13.4 | |
20 | 月 | 14.4 | 月の赤緯が最北 |
21 | 火 | 15.4 | 満月 皆既月食 |
22 | 水 | 16.4 | 冬至(二十四節気) |
23 | 木 | 17.4 | 天皇誕生日 |
24 | 金 | 18.4 | |
25 | 土 | 19.4 | 月の距離が最近 |
26 | 日 | 20.4 | |
27 | 月 | 21.4 | 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
28 | 火 | 22.4 | |
29 | 水 | 23.4 | 下弦の月 |
30 | 木 | 24.4 | |
31 | 金 | 25.4 | おおみそか |
12月の星空
ジングルベルの曲が流れるまちかどには、人工のイルミネーションの星がきれいですね。しかし、本物の星の方が遠く光年の世界から届く安定した光の美しさと力を感じます。
すばる(プレアデス星団)の輝きが目立つこの季節は木枯らしとともに空気が澄んで星座もみつけやすくなります。落葉樹が葉を落としたこの季節は、上空の視界が広くなって星空を仰ぎ見るのにも適しています。
12月は1年中で一番夜の長い季節でもありますから、ぜひ星座さがしを楽しみましょう。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。