ちあきの星空コラム
第91回 カノープスを見る (2011/02/03)
見納めとなる木星
宵の西空にひときわ輝く木星も今月が見納めです。肉眼でも日を増すごとに高度が低くなってくる様子が観察されます。
天体望遠鏡で観測すれば、日々、表面模様が木星の日周運動によって異なっていることや周囲を巡る4個のガリレオ衛星の位置が変化していく様子を観察できますが、木星の位置が低空になってしまいますと気流の関係から像がぼやけて、はっきり見えなくなってまいります。
黄昏時(たそがれどき)のまだ真っ暗になる前(薄明)の時間帯では、やや木星高度が高いので、そのころから観測するといいでしょう。

木星と天王星:1月4日に最接近した木星と天王星は徐々にその位置関係が離れて行きますが、写真は1月7日に撮影したものです。2月に入ってもふたつの惑星は比較的近い位置関係にあり、双眼鏡か天体望遠鏡で確認できます。
細い月と輝く星
先月のコラムで、明け方の細い月と明星(金星)などが見られる美しい光景を紹介しました。みなさまはじっさいに見られましたでしょうか。
私は1月1日に写真に撮りましたので、ご覧ください。当日はとても天気が良く、初日の出の前の星景色として、聡明な空に背景を彩る星座の星々が輝き、さらに明るく月や明星などが煌めき、とても感動を受けました。
さて、今月は2月6日の夕空(西空)に木星と三日月の接近した様子が見られ、翌7日には木星と月がさらに接近します。帰宅途中などに西空に注目してみましょう
また、明け方の空では金星とともに細い月が見られるのは2月28日から3月2日にかけてです。朝5時ころから早起きをして、夜明けまでのすてきな光景をながめてみましょう。
カノープスを見る
カノープスをご存じですか?りゅうこつ座にある1等星カノープスは全天にある恒星の中でシリウスに続いて2番目に明るい星ですが、関東地方から見ると南の空の地平線近くにちょっとだけ顔をのぞかせる程度の見え方で、ほとんど見ることができない星といわれていますが、千葉県房総半島方面では南の方角に海があり、視界が開けているところが多いため、見られるチャンスが比較的多く、布良星(めらぼし)とか入定星(にゅうじょうぼし)などと呼ばれて親しまれています。さらに南の地方に行けば簡単に見られる星ともいえますが、逆に東北地方ではほとんど見ることができません。アマチュア天文家が山形県月山で観測に成功したのが、最も北での観測とされています。
つくば周辺地域であれば筑波山系で確認するのが最も見られる確率が高いことでしょう。実際に観察する際は、下表のカノープスの南中時刻表を参考にして、その前後数分の間に観察するといいでしょう。なお、1日のズレは約4分ですから、途中の日付のときも時刻を計算できます。
カノープスの南中時刻表
月 日 | 見やすい時刻(つくば市での南中時刻) |
---|---|
2月 1日 | 21時18分 |
2月10日 | 20時42分 |
2月20日 | 20時3分 |
2月28日 | 19時32分 |
2月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 火 | 27.7 | |
2 | 水 | 28.7 | |
3 | 木 | 0.0 | 新月 |
4 | 金 | 1.0 | 立春(二十四節気) |
5 | 土 | 2.0 | |
6 | 日 | 3.0 | 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
7 | 月 | 4.0 | 月の距離が最遠 |
8 | 火 | 5.0 | |
9 | 水 | 6.0 | |
10 | 木 | 7.0 | |
11 | 金 | 8.0 | 建国記念の日 上弦の月 |
12 | 土 | 9.0 | |
13 | 日 | 10.0 | 月の赤緯が最北 |
14 | 月 | 11.0 | |
15 | 火 | 12.0 | ふたご座μ星(2.9等)の星食(月に隠される) |
16 | 水 | 13.0 | |
17 | 木 | 14.0 | |
18 | 金 | 15.0 | 満月 |
19 | 土 | 16.0 | 雨水(二十四節気) |
20 | 日 | 17.0 | |
21 | 月 | 18.0 | |
22 | 火 | 19.0 | 月の距離が最近 |
23 | 水 | 20.0 | 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
24 | 木 | 21.0 | |
25 | 金 | 22.0 | 下弦の月 |
26 | 土 | 23.0 | 月の赤緯が最南 |
27 | 日 | 24.0 | |
28 | 月 | 25.0 |
2月の星空
冬の星座が美しい2月の星空です。寒さに負けずに星図をたよりに星座観察を楽しみましょう。カノープスをさがすための全天魚眼レンズの写真を掲げていますが、この写真では全天の星座の位置がわかりますので、星座さがしの参考になります。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。