ちあきの星空コラム
第95回 あと1年をきった金環(きんかん)日食(にっしょく) (2011/05/31)
来年5月に金環日食
来年の5月21日には、日本で金環日食が見られます。
金環日食が日本で見られるのは25年振りのことで、この先は2030年まで待たなければなりませんので
今回のチャンスはなんとしても逃すことはできません。
早い時期から準備をし、日食グラスなども早めに入手しましょう。
金環日食では、月が太陽の前面を通過するものの見かけ上、太陽よりも月の方が小さく見えるので、太陽の縁が見え続けます。
金環中の太陽は、まるで輪ゴムのように細く見えるのです。
金環日食は、九州から本州にかけて見られ、その範囲以外でも全国で大きく欠ける部分日食を見ることができます。
右図はつくば市内からの見え方で、地域により見え方や時刻が異なりますが、めずらしい天文現象ですから見逃さないように今のうちから意識して待つようにしましょう。
金環日食が見られる午前7時30分頃には太陽の位置は、ほぼ真東で高度角が35度くらいの見やすい位置となります。
当日は、午前4時28分ころ日の出を迎え、日食の開始(欠けはじめ)は6時20分頃、金環日食になるのは7時33分少し前から7時38分少し前くらいまでの約5分間です。ただし、このデータはつくば市を基準にしたもので、各地域での金環食の時刻には差があります。正確には日食の時期になりましたら新聞報道等で地域ごとの時刻が発表されることでしょう。
じっさいの観察では、あらかじめ観察場所を選定しておきましょう。東の空が良く見える場所で電柱や樹木などの障害物を避けて観察できる場所を選びましょう。
太陽は強烈な光と熱を持っていますので、直視すると眼を痛めます。道具として、必ず日食グラスを入手し、それを使って見るようにしましょう。
天体望遠鏡や双眼鏡で見る場合は、日食グラスでは力不足となりますので、太陽観測用の専用装置を取り付けて観測してください。絶対に直接のぞいてはいけません。また、ルーペなどを用いて太陽をのぞくことも大変危険ですので、絶対に行わないようにしましょう。
今月は部分日食と部分月食があります
今年は6月2日(木)に部分日食、そして6月16日(木)に皆既月食が見られます。6月2日の部分日食は、北陸、東北それに北海道で見ることができますが、つくばを含む関東地方などでは見ることができません。
6月16日未明に見られる皆既月食は、関東地方では前半部を見ることができます。
すなわち、欠け始め(午前2時24分)から欠けゆく様子を観察できますが、皆既月食となる午前4時22分ころにはちょうど月が西の地平線に沈んでしまいます。
また、皆既食となるころは夜明けとなり、空が明るくなってしまいますので、どんな具合に見えるか(あるいは見えなくなるのか)観察する価値がありそうです。
この時期は梅雨によりお天気が悪い日も多いのですが、ぜひ晴れてほしいものですね。天気予報に注目して晴れそうであればぜひ、観察してみましょう。
土星とおとめ座γ星が近づく
土星の観測好機が続いていますが、6月10日ころには土星のそばにおとめ座γ星(ポリマ)が近づいて見られます。土星は明るさが0等星そしてポリマは2.74等星で両方ともかなり明るい星です。肉眼よりも双眼鏡や天体望遠鏡を使えば接近している様子をはっきりと確認できます。この接近の様子を楽しむのは、最接近の6月10日だけでなく、6月中は接近している様子をずっと楽しむことができます。
また、最接近の6月10日には月も付近に輝いており、肉眼でも十分に見て楽しめます。
6月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 水 | 28.8 | |
2 | 木 | 0.2 | 新月 北陸、東北、北海道で部分日食 |
3 | 金 | 1.2 | |
4 | 土 | 2.2 | |
5 | 日 | 3.2 | |
6 | 月 | 4.2 | 芒種(二十四節気) |
7 | 火 | 5.2 | |
8 | 水 | 6.2 | |
9 | 木 | 7.2 | 上弦の月 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
10 | 金 | 8.2 | 土星がおとめ座γ星に最接近 |
11 | 土 | 9.2 | |
12 | 日 | 10.2 | 月の距離が最近 |
13 | 月 | 11.2 | |
14 | 火 | 12.2 | |
15 | 水 | 13.2 | 月の赤緯が最南 |
16 | 木 | 14.2 | 満月 皆既月食 |
17 | 金 | 15.2 | |
18 | 土 | 16.2 | |
19 | 日 | 17.2 | |
20 | 月 | 18.2 | |
21 | 火 | 19.2 | |
22 | 水 | 20.2 | 夏至(二十四節気)月が赤道通過(北半球へ) |
23 | 木 | 21.2 | 下弦の月 |
24 | 金 | 22.2 | 月の距離が最遠 |
25 | 土 | 23.2 | |
26 | 日 | 24.2 | |
27 | 月 | 25.2 | |
28 | 火 | 26.2 | |
29 | 水 | 27.2 | |
30 | 木 | 28.2 | 月の赤緯が最北 月と金星が接近(明け方の東空) |
6月の星空
6月は梅雨なので、夜空を見るチャンスが少なくなりますが、上旬にはまだ、星空を仰げることができる日も案外あります。
また、梅雨も中休みがあったりしますので、天文現象の夜は晴れを期待し、観察できそうなときはあきらめないで観察準備をしましょう。
星座は春の星座からだんだんと夏の星座に移行しつつあります。
雨上がりの夜空には、東の空から天の川を従えてこと座のベガ(織姫星)がきっと感動的に見られることでしょう。
また、南東の空からはさそり座も昇ってきますし、へびつかい座やヘルクレス座も見ごろになっていますのでさがしてみましょう。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。