ちあきの星空コラム
第118回 春の夜空 (2013/05/02)
土星を見たい!
春の夜空に輝く星の中でもっとも注目すべきは、てんびん座の中に輝やく土星です。
0等星の明るさで輝いていますから肉眼で見てもすぐにみつけることができます。付近にはおとめ座のスピカが1等星の明るさで輝いていますので、対比して見てみましょう。
スピカは白く輝き、キラキラとまたたく様子も見られますが、土星はくすんだ黄色みがかった色に見え、あまりまたたきませんから、すぐに区別できます。
天体望遠鏡で見ると写真にあるように環をもった不思議な姿が見られますので、天体観望会などでは一番の人気者です。
ただし、いつでも見られるわけではなく、今年はてんびん座にありますからてんびん座の見える時期にしか見ることができません。ということから、梅雨に入る前の5月にぜひ、肉眼でその存在をみつけ、機会があれば天体望遠鏡で眺めてみましょう。
夕空の惑星共演
5月下旬になりますと、夕暮れ時の西空に惑星が集合します。といっても、土星はてんびん座ですからむしろ東寄りの空に見られ、西空に集まる惑星は水星、金星それに木星の3星で、肉眼で充分観察可能ですが双眼鏡でも三個の星が同一視野の中に入りますので、わくわくするような楽しい光景を見ることができます。
また、この惑星集合が見られるのはこの日だけでなく、5月25日ころから5月28日ころまで集合した様子が続きますので、お天気さえ良ければ毎日、観察することができます。ぜひ夕空を眺めて確認しましょう。
彗星を写真に撮る
先月のコラムではパンスターズ彗星の尾を引いた姿の写真を掲載しましたが、だんだんと暗くなって、5月には容易に小型双眼鏡でみつけるのがむずかしくなっています。
しかし、彗星の位置は北極星に近づき、一晩中見える位置になってきました。
もし、肉眼や双眼鏡を使っても見つからない場合は、一眼デジタルカメラなどで、彗星がある方角にカメラを向けて撮影すれば、彗星が写ることもあります。
上の写真は4月23日に撮影したものですが、10秒露出でこのように写っていました。位置は、5月上旬にはケフェウス座、下旬には北極星のあるこぐま座付近に見られます。先月のコラムに星座の中の位置が掲載されていますので、位置を確認しましょう。
今月もまた、撮影にもチャレンジしましょう。彗星の姿がみつけられなくても彗星のある方角の星座へ三脚にセットしたカメラを向け、ピントを∞(無限大)、絞りは絞らずに5~10秒間程度露出してみましょう。
彗星を大きく写すためには、望遠レンズや天体望遠鏡が必要になってきますが、作例のように星座の星々の中に見られる姿であればカメラと三脚さえあれば比較的容易に写すことができますので、ぜひチャレンジしてみましょう。
5月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 水 | 20.3 | 下弦の月 八十八夜 |
2 | 木 | 21.3 | |
3 | 金 | 22.3 | 憲法記念日 |
4 | 土 | 23.3 | みどりの日 |
5 | 日 | 24.3 | こどもの日 立夏(二十四節気) 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
6 | 月 | 25.3 | みずがめ座η流星群極大 |
7 | 火 | 26.3 | |
8 | 水 | 27.3 | |
9 | 木 | 28.3 | |
10 | 金 | 29.3 | 新月 |
11 | 土 | 0.7 | |
12 | 日 | 1.7 | 月の赤緯が最北 |
13 | 月 | 2.7 | 月の距離が最遠 |
14 | 火 | 3.7 | |
15 | 水 | 4.7 | |
16 | 木 | 5.7 | |
17 | 金 | 6.7 | |
18 | 土 | 7.7 | 上弦の月 |
19 | 日 | 8.7 | |
20 | 月 | 9.7 | 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
21 | 火 | 10.7 | 小満(二十四節気) |
22 | 水 | 11.7 | 月とスピカが接近 |
23 | 木 | 12.7 | |
24 | 金 | 13.7 | |
25 | 土 | 14.7 | 満月 金星と水星が最接近 |
26 | 日 | 15.7 | 月の距離が最近 月の赤緯が最南 |
27 | 月 | 16.7 | 木星と水星が最接近 |
28 | 火 | 17.7 | |
29 | 水 | 18.7 | 木星と金星が最接近 |
30 | 木 | 19.7 | |
31 | 金 | 19.7 |
5月の星空
大きな高気圧が張り出してくる夜は、とても星空が良く見えますので、天気予報から晴れマークのある日を選んで春の星座をさがしてみましょう。
北の空の頭上高くに見られる北斗七星をみつけ、北斗の柄の部分の延長にあるうしかい座のアルクトゥールスを春の大曲線をたどってみつけることができれば、さらに大曲線を延長しておとめ座のスピカをみつけられますし、春の大三角も比較的容易にみつけることができることでしょう。春の大曲線の説明写真は先月号のコラムをご覧ください。
北斗七星はおおぐま座の一部であり、北極星はこぐま座の中にある2等星です。
南の空には、大きく長いうみへび座があり、うみへび座のそばにはコップ座やからす座をみつけられます。
晴れた夜に、ぜひ土星の観望とともに春の星座探しを楽しみましょう。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。