ちあきの星空コラム
第124回 アイソン彗星がやってくる(2) (2013/11/01)
アイソン彗星は明るくなるか?
アイソン彗星の報道がいろんな媒体で見られるようになりました。
はたしてこの先、どのくらい明るくなるのか、肉眼で簡単に見られるようになるのか、興味津々ですが、太陽に近づきつつある11月の時点では、徐々に明るさが増してくるといわれています。そして、太陽に最も近づく11月29日の近日点通過以降は、長い尾をひいた彗星らしい形になって見られると期待されています。
太陽に近づいた彗星は本体にある氷が太陽の熱で溶かされ、蒸気となって長い尾を引いた形として見られる可能性が高いといえます。
明け方の東の空に注目して見ましょう。
アイソン彗星はどこにあるのか?
アイソン彗星は11月、12月ともに、明け方の東の空に見られますので、早起きして見晴らしの良い場所で観察する必要があります。
どの位置にどのような姿で見られるのでしょうか?星座でいうとおとめ座の方向に見られます。先月のコラムでも掲載した下図を参考に夜明け前の南東の空を探してみましょう。
もし、とても明るくなれば肉眼でも容易にみつけることができますが、道具をつかうとしたら、双眼鏡がお薦めです。口径は40~50ミリ、倍率7~9倍程度のものが適しています。もちろん、天体望遠鏡をお持ちの方は、それでも観測可能ですが、倍率は極力低くして観測します。
金星の明るさが最高に!
夕空に金星の輝きが見られるようになって、夕焼けの中に一番星として明るく輝く金星の姿に見とれてしまうほどですが、11月1日には、太陽との離隔が最も大きくなる東方最大離隔を迎えます。その頃の金星の姿は上弦の月のように欠けた姿をしていることが天体望遠鏡を使って観察するとわかります。
金星も月と同じように満ち欠けをして見られるのですが、11月の終わり頃には三日月状に欠けて見られるようになり、12月の末にはとても細い縁だけが見られる姿に変貌します。天体望遠鏡のある方は、連続観測によって、その様子を確認しましょう。
金星を肉眼で楽しむのに最も適しているのが、11月6日頃の細い月と金星が並んで見られる光景です。

11月6日、7日そして8日の午後6時ちょうどの月と金星の位置関係を表したシミュレーション場像です。合成画像のため、恒星は1個の星が3個の星として並んで表現されていますが、金星に対して月がどの位置関係にあるのかがわかります。
11月の天文情報
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 金 | 27.1 | 金星が東方最大離隔 |
2 | 土 | 28.1 | |
3 | 日 | 29.1 | 文化の日 新月 |
4 | 月 | 0.6 | 振替休日 |
5 | 火 | 1.6 | おうし座南流星群が極大 |
6 | 水 | 2.6 | 月の赤緯が最南 月の距離が最近 |
7 | 木 | 3.6 | 立冬(二十四節気) 夕刻の西空に月、金星が接近して見られる |
8 | 金 | 4.6 | |
9 | 土 | 5.6 | |
10 | 日 | 6.6 | 上弦の月 |
11 | 月 | 7.6 | |
12 | 火 | 8.6 | おうし座北流星群が極大 |
13 | 水 | 9.6 | 月が天の赤道通過(北半球へ) |
14 | 木 | 10.6 | |
15 | 金 | 11.6 | |
16 | 土 | 12.6 | |
17 | 日 | 13.6 | |
18 | 月 | 14.6 | 満月 しし座流星群が極大 アイソン彗星がスピカに接近 |
19 | 火 | 15.6 | |
20 | 水 | 16.6 | 月の赤緯が最北 |
21 | 木 | 17.6 | |
22 | 金 | 18.6 | 小雪(二十四節気) エンケ彗星が近日点通過 |
23 | 土 | 19.6 | 勤労感謝の日 |
24 | 日 | 20.6 | 明け方の空で、水星、土星、アイソン彗星、エンケ彗星が接近 |
25 | 月 | 21.6 | |
26 | 火 | 22.6 | 下弦の月 土星と水星が最接近 |
27 | 水 | 23.6 | 月が天の赤道通過(南半球へ) |
28 | 木 | 24.6 | |
29 | 金 | 25.6 | アイソン彗星が近日点通過 |
30 | 土 | 26.6 |
11月の星空
11月には空気の澄んだすっきりとした星空の夜が望めることでしょう。
秋の星座は、案外地味できわだった明るい星はないものの、2等星クラスの星々を結んで星座を構成しているので、最初にペガスス座をみつけるとその位置関係から星図を参照しながら周りの星座もみつけることができます。
晴れた夜に星座探しにチャレンジしてみましょう。
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。