つくばのこと、もっとわかれば もっとたのしい! 茨城県つくば市のケーブルテレビ局ACCSによる地域情報サイト

ちあきの星空コラム

第130回 春は気流が惑星観測向き (2014/04/25)

今月も惑星観測好機

木星は夕空の中で観測
小型天体望遠鏡を使いデジタルカメラでパチリと撮影した木星の姿です

小型天体望遠鏡を使いデジタルカメラで
パチリと撮影した木星の姿です

今月も惑星の観測好機は続きます。
夕空の中に見られる木星は小型の天体望遠鏡でも写真のように縞模様が見られ、さらにガリレオ・ガリレイが発見した衛星すなわちイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4個の衛星も見ることができます。
もちろん、肉眼でも夕焼けが終わり、空が暗くなるころから1番星として明るく輝いていますので、誰でもみつけることができます。

火星の姿
天体望遠鏡にデジカメをつけて撮影

天体望遠鏡にデジカメをつけて撮影

今年、4月14日に最も地球に接近した火星は、だんだんと地球から遠ざかっていますが、天体望遠鏡で見ればまだまだその姿をとらえることができます。
もちろん、肉眼でもおとめ座の中にあって、明るく輝いていますので、肉眼でもすぐにみつけられます。
木星に比べたら赤く輝く姿が印象的で、天体望遠鏡で見るとさらに表面の明るさに濃淡が見られますし、デジタルカメラを用いてパチリと撮影することも可能です。

土星は環も見える
140415土星DSC_3104l

土星の環を持つ姿。
上の木星、火星の写真も含めて本年4月15日に撮影

てんびん座の中にある土星は、その形が独特で、まさしく宇宙的というか、宇宙の神秘を感じさせてくれる姿をしています。この姿は小型の天体望遠鏡でも充分に確認できます。
木星や火星に比べたらやや暗く感じますが、たとえば8センチ屈折式天体望遠鏡で観測すると50倍程度の倍率をかけて観察すれば環もはっきりと確認できます。
もちろん、デジタルカメラを用いて右の写真のように撮影することもできます。

金星、水星も見られる

金星は明けの明星として明け方の東方の空に見られますが、その輝きは夕空の一番星として輝いている木星よりも明るく、夜明けになって他の星々がだんだんと青空の中に消えていく中にあっても金星の光はおとろえずに輝き続け、しばらく見続けることができます。
水星は、太陽の周囲を巡る惑星で最も太陽に近い位置を公転しているために、地球から見ると太陽からあまり離れない方向に見え、金星と同様に明け方か、夕方の空にしか見ることができません。
そうした条件から観測しにくい天体ですが、今年の5月は夕暮れ時から西北西の低空に比較的見やすい条件となります。
ぜひ、太陽が西空に沈んだあとに、輝く水星をさがしてみましょう。
天体望遠鏡では真ん丸に見えず、楕円形に近い形に見られますが、低空の気流の悪い条件では、水星の像がゆらゆら揺らめいて見られることでしょう。
なお、天体望遠鏡で太陽は直接覗かないでください。大変危険です。

5月の水星の見られる位置

5月の水星の見られる位置です。
この図は午後7時40分頃に見られる水星の位置を示しています。
水星の高度角は10度以下の低空ですが、視界が開けた場所でぜひ探してみましょう。

5月連休は月の位置と欠け具合に注目!

5月は1日が月齢1.9から始まり、15日が月齢15.9(満月)となります。
月の満ち欠けの様子や日にちがちがう同じ時刻にどの位置に見られるかといった位置を観察したりするのに今年のゴールデンウイークは好機といえます。
5月1日から5月5日までの月の位置をシミュレーションして下図に表現してみました。
月は、肉眼で観察できますので、観察に特に道具を必要としなくてもできるのですが、きちんと記録をとるのであれば筆記具とノートなどにその位置や月の形状を記録していくといいでしょう。
また、デジタルカメラで撮影することも貴重な観測記録となります。
実際の撮影では、露出の補正をかけてみたり、ズームレンズで拡大したり広角にして地上の景色を一緒に写したりといった工夫をこらして撮影を楽しみましょう。
空が暗くなり、露出時間が長くなって画像がブレるようであれば三脚を使ってカメラを安定させましょう。
月は私たちの生活においても潮の満ち引きの影響や、月明かりの恩恵など、大きな影響を持っている地球の衛星です。
観察することによって、より身近な存在として感じていただきたいと思います。

5月1日~5日の月の位置

5月1日~5日午後7時30分頃の月の位置を表しています

星食が見られる

おうし座119番星(4.3等星)の星食。

4月5日に見られたおうし座119番星(4.3等星)の星食。写真は出現後に撮影

5月には明るい星が月に隠される星食が2夜連続して見られます。
上の写真のように先月も星食が見られましたが、今月は5月19日にいて座ρ(ロー)星が月に隠されます。星の明るさは、3.9等星で肉眼では月の明るさとの関係でみつけにくいかもしれませんが、双眼鏡や天体望遠鏡を使えば容易に観察できます。月に隠される潜入の時刻は地域によって異なりますが、東京では午前0時43分潜入、約71分後の1時54分に出現する予定です。
次に5月20日にはやぎ座β(ベータ)星(3.1等星)の星食が見られ、東京では午前1時4分潜入、約44分後の1時48分に出現の予定です。各観測地での予報時刻は、インターネットなどで確認するといいでしょう。
星が月に隠され、そして出現する様子は、天体の動きを実際に見て体験する臨場感あふれる現象の観測ですから、ぜひご自身で体験されることをお薦めします。

5月19日いて座ρ1星の星食の予報図

5月19日いて座ρ1星の星食の予報図

5月20日使用版l

5月20日やぎ座β1星の星食の予報図

5月の天文情報

曜日月齢天文現象など
1.9 
2.9八十八夜 
3.9憲法記念日 月の赤緯が最北
4.9みどりの日
5.9こどもの日 立夏(二十四節気)
6.9振替休日 みずがめ座η流星群極大 月の距離最遠
7.9上弦の月 
8.9月と小惑星パラスが最接近
9.9 
1010.9月が天の赤道通過(南半球へ)
1111.9月と火星が接近
1212.9 
1313.9 
1414.9月と土星が大接近
1515.9満月
1616.9天王星と金星が接近
1717.9月の赤緯が最南
1818.9月の距離最近
1919.9いて座ρ¹星(3.9等)の食(星食)
2020.9やぎ座β¹星ダビー(3.1等)の食(星食)
2121.9小満(二十四節気) 下弦の月
2222.9 
2323.9月が天の赤道通過(北半球へ)  
2424.9 
2525.9水星が東方最大離隔 月と天王星の接近
2626.9細い月と金星が接近
2727.9月と小惑星ジュノーが接近
2828.9 
290.3新月 
301.3月の赤緯が最北
312.3 

5月の星空

5月は春の星座をさがすのにもっとも良い時期です。
月明かりの影響のある月半ばの5月15日前後をさけ、日没後2時間以上経過した午後9時前後が観察に好都合でしょう。
南の空に目をやれば、細長いうみへび座、その上部にコップ座とからす座が見られます。さらにその上にはしし座とおとめ座(火星が位置している星座です)があります。
天頂付近にはおおぐま座(北斗七星を含む星座)とうしかい座(1等星アルクトゥールスが輝いています)があります。
また、北の空には北極星を含むこぐま座が見やすい位置にあります。
西の空にはかに座が傾き、時刻とともに西の空に低くなり、やがて沈んでいく様子も観察できます。寒さも和らいで夜の星空観察も快適な季節ですからぜひ星見を楽しんでください。

5月の星空(背景黒)

5月の星空(背景黒)

5月の星空(背景白)

5月の星空(背景白)

5月中旬、21時ころの星空です。月の位置及び月明かりの影響は略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。このコラムに用いている星図やシミュレーション画像は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ9」を使用しています
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。