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ちあきの星空コラム

第142回 星見の環境(光害と月明かり) (2015/05/01)

光害

星空の見え方は、まち明り(街灯やネオンサインなど)が多いか少ないかで大きく変わります。
まち明りの少ない郊外地では星が良く見え、まち明りの多い都会地では少しの星しか見ることができません。
まち明りなどの光で夜空が照らされ、星が見えにくくなる環境のことを光害(ひかりがい)が多い環境といい、山や海辺などでまち明りの少ない所は光害が少ない場所といったりします。
まちの安全のためには街灯など必要な照明は大切ですが、不必要な光、たとえば夜空へ照射しているサーチライトなどは無駄な光をまき散らしているといえます。
街路灯なども道路を照らす以外に空側へも光が漏れている照明があり、飛行機などから夜間に下界を見るとそのことが良くわかるのですが、国道などの新設の街路灯は極力光が空側へ照射されないように配慮されています。今後、光害に配慮された公共照明や商業照明が増えてくれればいいなと願っています。
星座などの星を見るには、光害が少なく、晴れていて空気がきれいな夜が望ましい星見の環境といえます。
しかし、そうした条件まで整わない都会地でも、直接光源から届く光が目に入らない箇所を選んで観察をするといった工夫で、星座などもある程度はみつけられる条件をつくることができます。

まち明りが少なく、星座がたくさん見られる星空環境の空

まち明りが少なく、星座がたくさん見られる星空環境の空

月明かり

月明かりはどうでしょうか?
月の明かりは聡明感があり、すてきともいえますが、星座をさがすときには障害となります。
三日月の頃はあまり問題とはなりませんが、上弦の月くらいの明るさでは障害となります。上弦の頃は、深夜12時頃になれば月は西の空に沈んでしまいますので、それ以降の時刻になれば差支えなく星見ができるようになります。
満月はどうでしょうか。満月は午後6時頃、東の空から昇ってきて、深夜の12時頃には天高く輝き、明け方午前6時頃に西の空に沈んでいきます。したがって、一晩中月明かりに悩まされ、星見の環境としては最悪となります。
下弦の月の頃はどうでしょうか。下弦の頃は深夜12時頃までは月が昇ってきませんので、星見はやりやすいのですが、日付がかわり午前の時刻になる頃から明け方まではずっと月明かりに悩ませられます。
こうした月の位置と時刻のことを頭に入れておくと、星見の予定が立てやすくなります。

満月

満月は星空観察の大敵!
また、月面観測をする上でも太陽の光が正面から当たっているのでまぶしく、
クレータも観察しにくい条件になります。

今年は国際光年

今年は国際光年です。星の光から私たちの日常にある住まいの光などまで、あらゆる光が対象になり、天文学だけでなく、照明関係の業界などもこの国際光年をチャンスととらえて様々なイベントなどをしかけてくるものと思われます。
私たち、天文ファンにとっては、まち明りを一斉に暗くして、都会地でも星空がはっきり見られるイベントなどが成功すればいいななどと考えているところです。
どれだけこうしたイベントが盛り上がるかは未知数ですが、少しでも多くの人々が星空に関心を寄せていただければ幸いと考えています。

木星と土星を見る

木星が天高く輝くようになってまいりましたが、土星も午後9時ころには南東の空に昇ってきて、これからが見ごろとなってまいります。
惑星を天体望遠鏡で覗いて観察する眼視(がんし)観測では大気のゆらぎや空気の透明度などからなかなか鮮明には見られません。
そこで今回、画像処理機能によって写真表現力を上げ、鮮明に表現した写真と、一般的な天体望遠鏡で直接見た惑星像に近い写真を掲示して比較できるようにしました。
惑星を観察の際(特に初めて見るとき)の参考にしてください。

150317木星(浦辺守撮影)_03_bl150419木星(小口径)DSCN0791l
木星の画像です。
左の写真は多数撮影した写真を合成して得られた画像で、右の画像はとひとコマの撮影像です。
通常の天体観望会などで見る眼視観望では右側の写真のように見られます。

 

140601土星(浦辺守撮影)_02_bl 150419土星小口径での見え方DSCN0854l
土星も多くの撮影コマを合成した画像(左)ではよりはっきりと見えますが、天体望遠鏡では右の撮影画像のように見えます。(木星、土星とも左側の写真は浦辺守氏撮影。右側の写真は今年4月19日に筆者の撮影した写真です)

5月の天文情報

曜日月齢天文現象など
12.3水星とプレアデス星団が接近
13.3八十八夜
14.3憲法記念日 木星の衛星エウロパの影にガニメデが入る(部分食)
15.3みどりの日 満月
16.3こどもの日 月と土星が大接近
17.3立夏(二十四節気)みずがめ座η流星群が極大
18.3水星が東方最大離隔 月の赤緯が最南
19.3
20.3
1021.3
1122.3下弦の月
1223.3木星の衛星イオの影にエウロパが入る(部分食)
1324.3
1425.3月が赤道を通過北半球へ
1526.3月の距離が最近
1627.3
1728.3
1829.3新月
190.9木星の衛星イオの影にエウロパが入る(部分食)
201.9月の赤緯が最北
212.9小満(二十四節気) 木星の衛星カリストがイオを隠す(部分食)
223.9
234.9
245.9木星の衛星イオがガニメデを隠す(部分食)
256.9
267.9上弦の月
278.9月の距離が最遠 木星の衛星ガニメデがイオを隠す(部分食)
289.9
2910.9
3011.9
3112.9

5月の星空

5月の星空は、春の星座で埋め尽くされています。
おおぐま座、こぐま座といった北に見られる星座も天の高い位置に見られ、南の空にはうみへび座、からす座、コップ座、おとめ座などが見られ、天頂近くにはしし座やかに座が見られます。また、東の空にはうしかい座を見ることができます。
惑星は、木星がかに座の中にあり、天頂近くで明るく輝いています。土星はてんびん座の中にあり、南東の低い位置に輝き、付近のさそり座のアンタレスと明るさを競い合っているようです。
じっさいの星空で星座や惑星を確認してみましょう。

5月の星空(背景白)

5月の星空(背景白)

5月の星空(背景黒)

5月の星空(背景黒)

5月の中旬、午後9時ころの星空です。月の位置及び月明かりの影響は略しています。
画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。
このコラムに用いている星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。