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ちあきの星空コラム

第153回  近い宇宙遠い宇宙 (2016/04/01)

国際宇宙ステーションISS

ISS国際宇宙ステーションの軌跡 浦辺守氏撮影

ISS国際宇宙ステーションの軌跡 浦辺守氏撮影

ISS(国際宇宙ステーション)の話題がときどきマスコミに登場しますので、その存在を知っている方は多いことでしょう。
日本人宇宙飛行士も搭乗することがありますし、物資補給に日本の補給機「こうのとり」が活躍していますので、なじみ深いことでしょう。
このISSが日本の上空を通過するときは肉眼でも見えるチャンスがあります。
右の写真は千葉県房総半島での撮影ですが、星座をかたちづくっている恒星よりも明るく見え、星々の間を音もなく移動していきます。
夜空にISSをみつけたらきっと感動することでしょう。
飛行機のようにチカチカと点滅する光ではなく、音もありません。
静かに音もなく、明るい星のような点光源が移動していくように見られます。
ではISSは宇宙のどのあたりを移動しているのでしょうか。
地球を周回する人工衛星だということは多くの方が知っているとおりですが、いったい地球のサイズから考えて、どのあたりにあるのでしょうか。
地上からISSまでの距離は、平均的には400キロメートル程度の上空を楕円軌道で飛んでいます。時速約28,000キロメートル、秒速に直すと約8キロメートルという高速で移動しています。
地上から約400キロ上空にあるISSに対して、地球の直径は約13,000キロメートルですから、地球直系の約30分の1程度の位置を飛んでいることになります。ほとんど地球のすぐそばといった感じですね。
したがって、地上からその存在をはっきり確認できますし、ISSからも地球上のさまざまな景色が見られるわけです。交信も時間差がほとんどなく、通常の会話すなわち、地上での電話の会話とあまり変わらない交信が可能なのです。

月は近いか遠いか

ISSの近さを理解したところで、次は月の距離と通話にかかる時間はどの程度なのか調べてみましょう。
地球から月までの距離はおよそ38万キロメートルあり、新幹線が時速300キロメートルで移動するスピードで計算すると約1267時間(約53日)かかります。
では、宇宙船ではどのくらいかかるでしょうか。
答えは、だいたい2日程度で月へ到達することができます。
次に電波や光の速度ではどのくらいかかるでしょうか。
答えは、約1.3秒で届きます。
ということは、ちょっとしたタイムラグがありますが、交信はしやすく、地球から月にある宇宙船を遠隔操作することなども比較的容易だということがわかります。
月は、宇宙の中ではとても身近でこんなに近いのですから将来、月周回軌道などの月旅行が実現するかもしれませんね。

火星へ行くには

今年は、映画「オデッセイ」が上映され、火星が話題になっていますが、今年の5月31日には2年ぶりに地球に火星が接近し、火星観測が容易になります。
アマチュア用の天体望遠鏡でも比較的見やすくなります。
5月31日の火星最接近の日でなくても火星と地球の位置関係はだんだんと近づき、だんだん遠ざかるので、4月、5月、6月そして7月も天体望遠鏡で十分に観測できます。
今月の火星の位置は、さそり座の1等星アンタレス付近に輝いていて、アンタレスよりも明るく、また赤い色で輝いていて、赤い恒星のアンタレスと輝きを競い合っているようにも見えます。付近には土星も見ることができます。
これらの星は天体望遠鏡を使わなくても肉眼でみつけることもできます。
ところで、火星に現在の宇宙船で行くにはどのくらいの日数がかかると思いますか?
月までの距離が38万キロメートルなのに対して、火星は6,000万キロメートルも離れているのです。したがって、火星までは最低でも半年以上かかってしまいます。
しかも地球と火星の距離関係は、近い時は6,000万キロメートルですが、太陽の周りを地球も火星も公転していますから遠ざかった時は4億キロメートル近くまで遠ざかってしまうのです。
火星探査機の打ち上げは、地球と火星の位置関係が常に変化していることに着目して打ち上げ日などを決めなければなりません。
地球から火星へは大体、半年から9か月程度かかり、火星着陸後、1年近く地球との接近をおよそ1年程度待って、今度は火星から帰ってくることになります。結果的に地球での打ち上げから約2年半ほどかかって地球に戻ってくることになります。
距離が遠くて到着するのに時間がかかるということは、有人の宇宙船で火星を往復するには、燃料、酸素、食料や水などを大量に搭載して運ぶ必要があります。
では、電波による交信はどういった具合でしょうか?火星が地球に接近した状態でも電波が届くのに約4分かかりますから、往復では約8分かかります。
離れているときは約20分程度かかり、往復では40分もかかってしまいます。
地球からの宇宙船の制御にはタイムラグが生じ、それなりの苦労がついてまわります。

おとめ座のスピカに行くには

春の代表的な星座のおとめ座にある1等星スピカと太陽との距離は約250光年といわれています。
もし、将来、光の速度で宇宙を移動する宇宙船ができたとしても250年かかることになりますし、光の速度で交信しても情報が届くのに250年かかってしまいます。返事をもらうまでには500年かかってしまいますね。
現在の科学技術ではとうていたどりつくことも交信をすることも無理と云わざるをえませんが、人の寿命以上の長きにわたって、代を重ねて宇宙を旅するという技術が可能となり、そうしたことに価値や意味が見いだせるときがやってくるのであれば、宇宙船での恒星間移動の旅が行われるかもしれません。

アンドロメダ銀河に行くには

私たちの銀河(天の川銀河)の外にある銀河のうち、近い位置にあるM31アンドロメダ銀河まではどのくらいの距離があると思いますか。
その距離は、約230万光年と云われています。つまり、光の速度で飛んで行ける宇宙船ができたとしても230万年かかることとなります。
これは、地球人類が文明を持った歴史よりもはるかに長い時間に相当しますので、今の常識では、決して交信することも行くことができない遠い世界のことと云わざるをえません。

星見に出かける

そうした星空は、手の届かない遠い世界のできごとになりますが、しかし行けるかどうかと考えるよりも、星空を眺めることで星は楽しむことができます。
遠い星の世界であっても、星座をながめ、天体望遠鏡で細部を観察することもできます。星空を眺めながら、遠く宇宙の世界に思いを馳せる時間も楽しいものです。
星を見たり、写真に撮ったりといったことで大いに楽しむことができます。文学さえ生まれてきます。多岐にわたる星の楽しみを皆さんにもご理解いただきたいと思っています。また、天文学等の学問も大切ですが、本物の星空を眺めて満喫する楽しみの実践を推奨いたします。

木星の観測シーズン

木星が観測シーズンになってきました。
しし座の中にあり、春の星座の領域で最も明るい星として肉眼でも見ることができます。

天体望遠鏡を使って見る木星の姿は表面に縞模様が見られます。撮影 浦辺守氏

天体望遠鏡を使って見る木星の姿は表面に縞模様が見られます。撮影 浦辺守氏

木星にある代表的な4個のガリレオ衛星と呼ばれる衛星も見ることができます。撮影:浦辺守氏

木星にある代表的な4個のガリレオ衛星と呼ばれる衛星も見ることができます。撮影:浦辺守氏

木星の位置はしし座のデネボラ、おとめ座のスピカそれにうしかい座のアルクトゥールスを結んでできる春の大三角の近くにあり、この付近では最も明るく輝いているので、すぐにみつけることができます

木星の位置はしし座のデネボラ、おとめ座のスピカそれにうしかい座のアルクトゥールスを結んでできる春の大三角の近くにあり、この付近では最も明るく輝いているので、すぐにみつけることができます

4月の星空

4月には春の星座が見られます。
特に今年は木星がしし座の後ろ足の近くに見られ、とても目立つ存在です。
そのほか、夕闇が迫りくる19時過ぎには西空に水星が見られます。
金星は見たことがある天文ファンでもこと水星となるとなかなか確認しにくいため、見たことがない人の方が多いと思います。
この4月には水星の位置に注目です。
夕空の西の空ので、ぜひ、さがしてみましょう。

4月の天文情報

曜日月齢天文現象など
23.0下弦の月
24.0
25.0
26.0清明(二十四節気)
27.0
28.0月が天の赤道を通過(北半球へ)
29.0新月
0.7月の距離が最近
1.7
102.7
113.7
124.7月の赤緯が最北
135.7
146.7上弦の月
157.7
168.7
179.7
1810.7
1911.7
2012.7穀雨(二十四節気) 月が天の赤道を通過(南半球へ)
2113.7
2214.7満月  月の距離が最遠  こと座流星群が極大
2315.7
2416.7
2517.7月と土星が接近、火星が並ぶ
2618.7月と土星が最接近
2719.7月の赤緯が最南  火星とアンタレスが最接近
2820.7
2921.7昭和の日 月と火星が接近
3022.7下弦の月 月と土星が接近

4月の星図

4月の星空(背景白)

4月の星空(背景白)

4月の星空(背景黒)

4月の星空(背景黒)

4月の中旬、午後9時ころの星空です。月の位置及び月明かりの影響は略しています。画面をクリックすると大きな星図を見ることができます。このコラムに用いている星図やシミュレーション画像は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。