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ちあきの星空コラム

第170回  アメリカで見られた皆既日食 (2017/09/01)

皆既日食(黒い部分が月、白いコロナの様子が見えました)

皆既日食(黒い部分が月、白いコロナの様子が見えました)

8月21日(日本時間8月22日)にアメリカ合衆国を西から東へ横断する皆既日食が見られました。
夏休みシーズンということもあり、多くの日本人が日食観測ツアーに出かけましたが、私もあるツアーのインストラクターとして参加してきましたので、今月はその報告を兼ねて日食写真をご披露します。

新月の時に起きる日食

先月は、部分月食のお話をしましたが、月食が満月の日に起こる現象であるのに対し、日食は新月の時に起こります。
日食は、月が地球と太陽との間に挟まって、地球から見ると月が太陽をさえぎって隠す現象です。
今回、アメリカ大陸の一部では、太陽をすっぽり隠してしまう皆既日食が見られ、皆既日食が見られる範囲(皆既日食帯)がアメリカ北部の西海岸から、1時間以上の時間を経て東海岸まで移動していくように見られたのでした。
皆既日食帯は、アメリカ西部では、オレゴン州のセイラムあたりで見られ、中部ではダグラス、アライアンス及びコロンビアなどを経て、東部ではナッシュビル、アンダーソン及びコンガリー国立公園などで順次見られる予報になっていました。

オレゴン州コーバリスで観測

今回、皆既日食観測隊として出かけた観測地は、オレゴン州立大学のある学園都市コーバリスで、宿泊したホテルの庭と遊歩道をじっさいの観測場所として使用しました。
その場所は、ウィラメット川の河畔に位置し、対岸の上に見える太陽の姿を追いかけることにしました。
最初は欠けていく様子が見られる部分日食ですが、これを見るには日食グラスという濃い特殊フィルター付きの眼鏡を使って観察し、太陽の全面が月に隠される皆既食中は肉眼で直接見ることになります。
私は写真撮影が忙しく、約1分40秒しか見られない皆既中のコロナの細部の様子は眼視観測ではほとんどできず、写真が確実に撮れたので、それで良しとしました。

皆既日食の写真を撮影中の筆者

皆既日食の写真を撮影中の筆者

遊歩道にて日食観測の様子。快晴の空の下、皆既直後には大きな拍手がわきました

前日の夜には日食観測のレクチャーを行いました

前日の夜には日食観測のレクチャーを行いました

ダイヤモンドリングとプロミネンス
ダイヤモンドリング

ダイヤモンドリング

皆既食になる直前と皆既が終わった瞬間に太陽の光が月の隙間からチラッと見える瞬間をダイヤモンドリングと呼んでいます。
この瞬間にプロポーズをした人がいたとかいなかったとか。でもとても感動的な一瞬の出来事です。
それから、皆既食中には太陽表面から赤い色をして、噴き出しているように見られるプロミネンス(紅炎)を見ることができました。
次に示す写真に赤く写っているのがその姿ですが、太陽の縁に真紅の輝きを見ることができたことは、自然現象としての奇跡のような美しさに感動してしまいました。

赤く輝くプロミネンスの様子

赤く輝くプロミネンスの様子

日食の連続写真

日食の経過を記録したものが、次の写真になります。
2時間以上にわたる日食の様子ですが、日本時間では8月22日。アメリカ太平洋時間で8月21日午前10時頃(夏時間実施中)に見られた様子です。
日食連続写真

9月の星空など

9月の星空は、黄昏時が終わって、満天の星空が見られる午後8時ころはまだ、夏の星座がひしめき合っているように見られますが、時間の経過とともに秋の星座が東の空から昇ってきます。
春には木星、夏には土星を天体観望会の時期には観望対象としてきましたが、残念ながらこれらが見られず、ちょっとさびしい星空になってしまいます。
秋の星座の中には、1等星もみなみのうお座のフォーマルハウトひとつだけですが、秋の四辺形(ぺガスス座、アンドロメダ座)をみつけたり、アンドロメダ座の中にあるアンドロメダ銀河をさがしたり(双眼鏡があればさがしやすい)、カシオペヤ座などの星座を線で結んではっきり確認するなど、楽しみはいくつもあります。ぜひ、秋の夜空をお楽しみください。

9月の天文情報

曜日月齢天文現象など
10.4二百十日 月の赤緯が最南
11.4
12.4
13.4
14.4海王星がみずがめ座で衝 水星が留
15.4満月
16.4白露(二十四節気)
17.4月が天の赤道を通過(北半球へ)
18.4
1019.4
1120.4
1221.4水星が西方最大離角
1322.4下弦の月
1423.4月の距離が最近 月の赤緯が最北
1524.4
1625.4
1726.4水星と火星が最接近
1827.4細い月と金星が大接近(明け方の空)
1928.4細い月と水星、火星が大接近(明け方の空)
2029.4新月
210.9月が天の赤道を通過(南半球へ)
221.9
232.9秋分(二十四節気)
243.9
254.9
265.9
276.9月の距離が最遠
287.9上弦の月 月の赤緯が最南
298.9
309.9

9月の星図

9月の星空(背景黒)

9月の星空(背景白)

9月の星空(背景白)

9月の中旬、午後9時ころの星空です。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。

この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。

最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。

主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。