先月(10月)のお天気の悪さは、天文ファンに限らず、多くの方々が気になったことではないでしょうか。
農作物被害をはじめ、多くの影響を与えたお天気の悪さですが、星見にとっても星が見られない日が続き、梅雨時期のような最悪の星空環境となりました。
だからこそ、11月は晴天の日々を期待したいものですね。
11月は宵の闇が早くやってきて、午後5時ころでも既に暗くなり、星が見え始めます。したがって、夜空に星がきらめいて見える時間が長く、星空を眺めるのに最適な季節といえます。
おうし座流星群やしし座流星群も楽しめる11月の星空を満喫できる高気圧が日本列島に張りだして多くの人々が星空散歩を楽しめることを期待したいと思います。
日本ではおうし座のプレアデス星団を「すばる」と呼んで古くから親しまれてきました。平安時代に清少納言が著した「枕草子」にも登場し、「星はすばる」とうたわれています。
日本特有の「すばる」という呼び名は、ずっと語り継がれ、今日まで親しまれてきましたが、それには理由があります。
それは、他の星団よりも抜群に明るく、肉眼でその姿を容易にみつけることができるからなのです。
双眼鏡や天体望遠鏡を使えば数多くの星団や星雲をとらえることができますが、肉眼でこれほどはっきり確認できる星団はすばる以外にはありません。
通常、6個の星の集団として認められますが、視力が良い人はもっと多くの星が見分けられるともいわれています。比較的小型の6センチ口径の屈折望遠鏡を使用して覗いてみると、さらに多くの星々が見られ、30個以上の星を数えることができます。
しかも、赤道儀装置(星の日周運動を追いかける追尾装置)に望遠レンズ付きカメラを搭載して撮影すると、作例のように星の周囲を星雲が取り巻いている様子まで写すことができるのです。
目で見ても星の集団が輝いて美しく見えるのに、写真ではさらに星雲まで写り神秘的な姿が親しまれているのです。ぜひすばるをみつけましょう。
毎年、11月にはおうし座流星群としし座流星群が観測され、今年もまた流星を見ることができます。
夜空を仰ぎ見ていると、音もなく、スーと流れる流星の姿はとても神秘的です。
スッと早く流れるもの、ゆっくりスーと流れるもの、途中で色が変化しながら流れるもの、最後に爆発するように見えるものなど、さまざまな流れ方をする流れ星を楽しむことができます。
11月の前半はおうし座流星群で楽しみ、後半はしし座流星群で楽しみましょう。
流星群の名称 | 極大日 | 見られる期間 | 放射点 |
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おうし座南群 | 11月5日 | 10月15日~11月30日 | おうし座 |
おうし座北群 | 11月12日 | 10月15日~11月30日 | おうし座 |
しし座流星群 | 11月18日 | 11月5日~11月25日 | しし座 |
11月の星空は夕方、夜空が暗くなる時間が早いこともあり、午後7時頃に星空を仰ぎ見れば、西の空には夏の星座の名残を見ることができます。夏の代表的な星座のこと座、はくちょう座それにわし座を構成する夏の大三角をはじめ、夏の星座をこの季節でも見ることができます。
天頂付近や南の空に目をやると、秋の星座で埋め尽くされています。南の空には1等星フォーマルハウト(みなみのうお座)が輝いています。
天頂付近にはぺガスス座やアンドロメダ座などが輝き、北野方面にはケフェウス座やカシオペヤ座が輝いています。
東の空にはすでに冬の星座が昇ってきており、ぎょしゃ座やおうし座が見られます。
時間が経過し、午後9時頃にはオリオン座も姿を現しますので、ワクワクドキドキの星座さがしになることでしょう。
ぜひ、11月の星空をお楽しみください。
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
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1 | 水 | 12.3 | 後の月(十三夜) |
2 | 木 | 13.3 | 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
3 | 金 | 14.3 | 文化の日 はくちょう座χが極大 |
4 | 土 | 15.3 | 満月 |
5 | 日 | 16.3 | おうし座南流星群が極大 |
6 | 月 | 17.3 | 月の距離が最近 |
7 | 火 | 18.3 | 立冬(二十四節気) |
8 | 水 | 19.3 | 月の赤緯が最北 |
9 | 木 | 20.3 | |
10 | 金 | 21.3 | |
11 | 土 | 22.3 | 下弦の月 レグルス食 |
12 | 日 | 23.3 | おうし座北流星群が極大 |
13 | 月 | 24.3 | 金星と木星が接近 |
14 | 火 | 25.3 | |
15 | 水 | 26.3 | 細い月と火星が接近 月が天の赤道を通過(南半球へ) |
16 | 木 | 27.3 | |
17 | 金 | 28.3 | |
18 | 土 | 29.3 | 新月 しし座流星群が極大 |
19 | 日 | 0.6 | |
20 | 月 | 1.6 | |
21 | 火 | 2.6 | 細い月と土星が接近 |
22 | 水 | 3.6 | 小雪(二十四節気)月の距離が最遠 月の赤緯が最南 |
23 | 木 | 4.6 | 勤労感謝の日 |
24 | 金 | 5.6 | 水星が東方最大離角 |
25 | 土 | 6.6 | |
26 | 日 | 7.6 | |
27 | 月 | 8.6 | 上弦の月 |
28 | 火 | 9.6 | |
29 | 水 | 10.6 | 月が天の赤道を通過(北半球へ) |
30 | 木 | 11.6 |
田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。