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ちあきの星空コラム

第194回 台風シーズンの星空 (2019/09/02)

台風と空

9月になると真夏のような暑さは和らいで、快適に過ごせるようになります。特に夜は涼しさとともに虫の音(ね)も心地よさを提供してくれます。
しかし、心配の種としては、台風の時期で天体観測にも支障をきたすことです。
台風の雨と風は、各地に被害をもたらしますし、天文ファンは星空が望めなくて、困ってしまいます。
ところが、台風が通り過ぎた後の空は台風一過といって空気が澄み、青空の美しい空を望むことができます。
もちろん、星空もとても美しく望めます。台風一過のすがすがしい星空の見られる夜は、1年を通してそう多くはないもののとても感動的なクリアーな星空をもたらしてくれます。台風は嬉しくありませんが、せめて、その後の星空は十分楽しみましょう。

抜けるような澄んだ空気の星空は
空の高さを感じることができます

青空とプラネタリウム館 東京都足立区にあるギャラクシティ
まるちたいけんドーム(プラネタリウム館)の外観と台風一過の青空

 

中秋の名月

満月

今月は、中秋の名月が楽しめます。
カレンダーで確認してみましょう。すると9月13日が中秋の名月だということがわかります。
中秋というのは、明治の初期まで採用されていたこよみ(天保歴=旧暦)で、この暦では、7,8そして9月が「秋」に相当していました。
今年の9月13日は、この旧暦の8月15日にあたり、旧暦の秋の真ん中にあたることから中秋と呼び、この日の月を中秋の名月と呼んでいるのです。
ご存知のように旧暦では月の満ち欠けを暦の基準にしていましたから、旧暦の15日はほぼ満月となっていたわけです。
9月の月齢を見てみましょう。現在、用いている暦では9月14日が満月に相当し、中秋の名月は9月13日ですから満月の1日前であることがわかります。
旧暦は月齢を基準にした暦でしたが、じっさいの日にちと月齢とは1日程度の誤差は起きるもので、その理由は、月の満ち欠けの周期が30日ではなく、約29.5日であることに起因しており、満月の日は旧暦15日とは1日くらいの誤差が出ることがあるのでした。そうしたことから今年も1日の誤差がありますが、ほぼ満月に近い丸い月を中秋の名月として鑑賞することになります。
なお、旧暦では現在の月に比べ、およそ1か月遅い数値の月(現在の9月の頃を8月としていた)になることが多く、今年も9月13日が旧暦8月15日に相当します。
旧暦では1年を13か月とした閏(うるう)月を加える年も3年に一度程度ありますから、閏月が入った年では中秋が現在、用いている暦でいうと10月になることもあり、来年(2020年)には旧暦では閏4月が加わることになるので、実質13か月となり、中秋の名月の日は10月1日となります。

9月の惑星の位置と見え方など

9月23日には秋分を迎えますが、すなわち、この日から昼よりも夜の方が長くなってくるということになりますので、星空を仰ぎ見ることができる時間帯が増えてくるともいえますね。
さて、今月も各惑星の見え方などを記載しますので、参考にしてください。

水星

水星は、おとめ座に位置しており、9月には太陽の向こう側に位置していて見られない時期が続きます。今度、夕空の西の空に見られるようになるのは11月になってしまいます。

金星

金星は太陽の光に邪魔されて観測できません。おとめ座に位置し、水星同様に11月に入ると西空にて太陽が沈んだ後の薄明の残る頃にかろうじてみつけることができるかもしれません。いずれにせよ今月の観測はできません。

火星

火星は水星、金星と同様におとめ座に位置し、観測は無理な状況が続きます。
昨年7月の大接近時とは違い、地球からの距離も遠いため、今年は観測は不適の年といえます。

木星

木星はへびつかい座に位置し、-1.9等級のとても明るい明るさで輝いています。夏休みには多くの方々が観測されたことでしょう。
9月に入ると20時頃には南西の空に傾きつつも輝いていて、まだ、観測が可能です。
ぜひ、天体望遠鏡で眺めて見てください。

土星

土星はいて座の中にあり、9月に入ってからも木星よりも高度の高い位置に見られ、観測の好機が継続しているといえます。

9月の星空

9月は、夕暮れが早くなり、星見ができる時間帯が多くなる時期です。
また、空気も澄みわたり、星空が高く見える日は、見ることができる限界の明るさ(等級)が何等星かチェックしてみましょう。
都会地では真夏の頃の肉眼で見える星の限界が2等星だったところでは、3等星が見られ、郊外地の4等星が限界のところでは5等星まで見られるかもしれません。
郊外地では天の川が見えるかどうかもチェックしてみましょう。
※秋の星座の中にも天の川がありますので、光害の少ない土地では見ることができます。

9月の天文情報
曜日月齢天文現象など
1.7二百十日
2.7月が天の赤道儀を通過(南半球へ)
3.7
4.7
5.7 
6.7上弦の月 月と木星が大接近
7.7
8.7白露(二十四節気) 月と土星が大接近  月の赤緯が最南
9.7
1010.7
1111.7
1212.7
1313.7中秋の名月 月の距離が最遠
1414.7満月
1515.7
1616.7敬老の日 月が天の赤道を通過(北半球へ)
1717.7
1818.7
1919.7
2020.7
2121.7
2222.7下弦の月 おうし座ζ星(3.0等星)が月に隠される(星食)
2323.7秋分の日 秋分(二十四節気) 月の赤緯が最北
2424.7
2525.7
26 26.7
2727.7
28 28.7月の距離が最近
290.4新月 月が天の赤道を通過(南半球へ)
30 1.4
9月の星図
南の星空

9月の南の星空(背景黒)

9月の南の星空(背景白)

北の星空

9月の北の星空(背景黒)

9月の北の星空(背景白)

9月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の範囲によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。