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ちあきの星空コラム

第195回 今月も月を楽しむ (2019/10/01)

豆名月の13夜

先月は中秋の名月(旧暦の8月15日十五夜=現在の暦では9月13日)が見られましたが、今月は十三夜の月を親しむ行事(旧暦の9月13日=現在の暦で今年は10月11日)があります。
満月は満たされた丸い月ですが、その前の状態の十三夜(ほぼ月齢13)をかつての日本では好んでいたのだと思います。日本人の美意識が関係しているのでしょうか?
十三夜は、中秋の名月に対して、後(のち)の月と呼ばれています。
中秋の名月とあわせて二夜(ふたよ)の月という呼び名もあります。
後の月は、「豆名月」、「栗名月」などとも呼ばれていて、その頃の収穫された農産物をお供えすることになっていたので、こうした名前で呼ばれたのでしょうか。
中秋の名月を祝う風習は中国からやってきたものですが、十三夜の風習は日本独自のものだそうです。
鎌倉時代に吉田兼好が書いた随筆の徒然草(つれづれぐさ)には「八月十五日、九月十三日は、婁宿(ろうしゅく)也、此宿清明なる故に、月をもてあそぶに良夜とす」とあります。
したがって、旧暦8月15日の十五夜だけでなく、旧暦9月13日も月を眺める楽しみが古くからあったことがわかりますし、現在までその風習は受け継がれているといえます。

月の呼び名

月の形:左から三日月、上弦の月、満月。
その形は太陽からの光の当たる部分が見えていて、日々の変化が見る者を楽しませてくれます。

月の呼び名をいくつ知っていますか。三日月や上弦の月、満月などは誰でも知っている名称ですが、十五夜の翌日の月は十六夜(いざよい)、さらにその翌日の月は居待月(いまちづき)などと呼ばれていることについてはご存じない方もいらっしゃることと思います。
満月以降の月の呼び名は、満月の日は東の地平線から午後6時ころに昇ってきますが、その翌日以降、月齢が進むにつれて昇る時刻が遅くなってしまいます。そうした状況から、それぞれ名前がつけられたのでしょう。
月の名称を表にまとめてみました。ただし、月の名称も天文学的名称だったり、旧暦日による名称だったり、あるいは月の形状による呼び名だったりします。
それらをこの表では混在して使われていますので、そうしたことも考慮しながら備考欄も設けて各種名称を紹介させていただきました。
みなさんがもっとも親しんでいる名称をメインに、聞き及ぶ名称をなるべく多く、記載させていただきました。
毎夜、月を観察すると月の満ち欠けが理解できるだけでなく、眺める日の月の位置や形状、見える時刻などの違いがはっきりとわかります。
電気のなかった昔の時代には、月明かりは暗闇の夜を照らす貴重な光源だったと想像され、月を愛でながら生活をしていた昔の人々の暮らしが目に浮かんできます。

今年の9月に8日連続で撮影された写真です。  撮影:川端孝幸

月の呼び名の表
月の呼び名おおよその月齢旧暦の
日にち
備 考
新月(しんげつ)1日旧暦の1日の月は月齢0となり、新月と呼びますが、旧暦では朔(さく)といいました。
二日月2日旧暦日として、既朔とも呼ばれていました。
三日月(みかづき)3日旧暦3日頃に見える月のことをいいます。その形状から眉月とも呼ばれていました。
上弦(じょうげん)7日弓の形になぞらえて弦を張った側が上に見えることから上弦と呼びます。弓張月ともいいます。
1日から7日の月を見える時間帯から夕月とも呼んでいました。
十日夜の月
(とおかんやのつき)
10日上弦よりふくらんだ月で旧暦の十月十日には、「十日夜」と呼ばれる行事があったそうです。
十三夜(じゅうさんや)1213日満月に次いで美しいといわれてきた月です。
小望月(こもちづき) 1314日旧暦では満月の前日を小望月と呼んでいました。
また、宵待月ともいいます。
なお、14日から22日までの月を見える時間帯から宵月と呼んでいました。
十五夜(じゅうごや)1415日満月(まんげつ)あるいは望月(もちづき)ともいい、旧暦ではおよそ15日にあたります。
十六夜(いざよい)1516日満月の翌日の月。まるでためらう「いざよう」ように昇ってくる月という意味から名付けられました。
立待月(たちまちづき)1617日夕方、月の出を待った様子がうまく表現された呼び名で表現されました。
居待月(いまちづき)1718日居は座る意味のことで、座って月の出を待った様子からつけられました。
寝待月(ねまちづき)1819日横になって待つくらい、月の出が遅くなってきている様子をうまく表現しています。
更待月(ふけまちづき)1920日夜更けに昇る月なので、このような名前になりました。
下弦(かげん) 2223日上弦と逆側が欠けて見える。その形状から上限と同じく弓張月とも呼ばれています。
二十六夜月
(にじゅうろくやつき)
2526日旧暦日による月の名称です。眉月とも呼ばれていました。
有明月(ありあけづき) 23-28日夜明けの空(有明の空)に昇る月の意味で、およそ旧暦日で、23~28日に見える月のことをいいます。
暁月29-30日暁(あかつき)の空に見られる細い形状の月をさしてこう呼びます。
晦日月(みそかづき)2930日新月頃の様子。30日なので、「みそか」と呼び、別名「つごもり」。これは「つきこもり」が転じたもので、月が姿を見せない様子を表現したもの。

この表に記載されていない呼び名もありますが、割愛させていただきます。
こうしたこととは別に、「月と地球が最接近するタイミングと満月となる瞬間が12時間以内」に見える場合の満月をスーパームーンと呼ぶことが多く、新聞やTVでも取り上げられることが最近は多くなりました。また、1か月に2回、満月が見られる時の2回目の満月をブルームーンと呼ぶことも一般的になりつつあります。
そのほか、1か月の間に新月が2回ある場合は、何と呼ぶのでしょうか?これはブラックムーンと呼んでいるようです。

10月の惑星の位置と見え方など

9月までは南の空に木星と土星が明るく見えて、天体観望会なども対象としてこの2惑星を観望対象として大いに楽しんだところですが、10月に入ると木星は夕空に見えるものの早々と西の空に沈んでしまい、ゆっくり見ていることができなくなります。今年の秋から冬にかけては惑星観測にはちょっとさびしい時期となりますが、それぞれの惑星がどの位置に何時頃見られるかを知っていることは大事ですね。

水星

10月の水星は、夕空の中に見えます。10月20日が太陽から最も離れた位置に見られる東方最大離角となり、日没後の西の空に見ることができますが、高度は低いので、注意深く観察しないとみつけられません。てんびん座にあります。

金星

金星は太陽の方角に近く、日没直後の西空に位置しており、-3.8等程度の明るさを保っていますが、まだ空が明るいうちにしか観測できず、観望に適さない条件といえます。おとめ座からてんびん座に移動していきます。

火星

今年は地球との位置が離れている条件となっていて、おとめ座に位置しています。天球上の位置関係でいうと、明け方の東天の低空に見えます。

木星

夕方の南西の空にみつけることができ、観測できるものの、日々、沈むのが早くなり、観測しにくくなります。星座でいうとへびつかい座に位置しています。

土星

木星よりも条件は良いものの、土星も木星同様に夕方の西空に沈むのは早く、それが日々早くなっていくものですから、観望会では暗くなる前から準備をして早めの観望を行いましょう。いて座の中にあります。

10月の星空

10月の星空では、秋の星座をみつけましょう。
真夏のように午後から入道雲がわき、星見の時間帯に雨が降るといったことは少なくなり、星座さがしがやりやすい時期だといえます。
まず、夏の大三角から北の空へ続く天の川を北へたどっていくとカシオペヤ座がみつけられ、付近には、ペルセウス座、アンドロメダ座なども見られます。
また、南の空には、やぎ座、みずがめ座、みなみのうお座などが、天頂付近にはペガスス座やうお座などをみつけることができます。

10月の天文情報
曜日月齢天文現象など
2.4
3.4
4.4
5.4月が木星に最接近
6.4月と土星が接近
7.4上弦の月  月の赤緯が最南
8.4
9.4寒露(二十四節気)
10.410月りゅう座流星群が極大
1011.4土星が東矩
1112.4十三夜の月(後の月)  月の距離が最遠
1213.4
1314.4月が天の赤道を通過(北半球へ)
1415.4体育の日  満月
1516.4
1617.4
1718.4
1819.4
1920.4
2021.4水星が東方最大離角  月の赤緯が最北
2122.4下弦の月
2223.4即位礼正殿の儀  オリオン座流星群の極大
2324.4
2425.4霜降(二十四節気)
2526.4
26 27.4月の距離が最近
2728.4月が天の赤道儀を通過(南半球へ)  月が火星に最接近
28 29.4新月
291.0
30 2.0月が金星と水星に最接近
313.0細い月と木星が接近
10月の星図
南の星空

10月の南の星空(背景黒)

10月の南の星空(背景白)

北の星空

10月の北の星空(背景黒)

10月の北の星空(背景白)

10月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の範囲によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ10」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。