ちあきの星空コラム
第214回 皆既月食を見る (2021/04/30)
5月26日に皆既月食が見られる
スーパームーンの皆既月食
今年は月食が2回見られる幸運な年です。
5月26日の皆既月食と11月19に見られる部分日食(食分98パーセント)です。
皆既月食とは、月の全面が地球の影(本影)の中に入って、満月の輝きがとても暗くなる現象です。
5月の満月は、今年の満月の中でも最も大きく見えるスーパームーンなのですが、その満月が皆既月食となるのです。
さらにこの月食の見られる時間帯が夕暮れどきから起こる現象なので、東の空から月が昇ってくる頃から欠け始め、部分月食を経て皆既月食となり、さらに部分月食となって、やがてかけ終わりを迎え、通常の明るい満月になる経過を就寝前の時間帯で観察できるのです。
夕空から見られる月食の経過と位置
月食観察は南東の方角が開けた場所を選びましょう。
関東地方では月の出の少し後から欠け始め、徐々に地球の影によって月食が進行し、20時9分には皆既月食となります。約20分間の皆既継続の後、20時28分にはまた部分月食となり、21時52分には通常の満月の状態に戻ります。
皆既中の空の様子ですが、過去の皆既月食の様子から、ほとんど暗くなって月面が見えないような状況になるときもあり、逆に比較的明るくて色は赤っぽいというか赤銅色などと呼ばれる色に染められたような月の姿としてとらえられることもあります。
月食の観察方法
部分月食は、月が欠けていく様子を観察し、たとえば10分おきに欠けた範囲を手帳やスケッチブックに描きこめば、時間と共に欠け行く様子がはっきりと記録できます。皆既月食中は、月食の色の様子や暗い部分とやや明るい部分との位置関係のスケッチ記録などを楽しみながら観察できるといいでしょう。
写真撮影するならば、スマートフォンなどの場合は、対象の月がなるべく大きく写るように望遠設定するといいでしょう。
一眼レフカメラなどのレンズ交換ができるカメラでは、望遠レンズを取り付けてなるべく大きく写るように工夫をしましょう。もちろん、天体望遠鏡をお持ちの場合は、撮影アダプターによりカメラを取り付けて撮影してみましょう。
5月の惑星
5月の宵の空では、火星がふたご座の中に見られ、水星は5月17日に西の低空に見ることができます。
金星も宵の明星となって夕暮れ時に見られるようになってきますが、5月中は高度が低く、なかなか観察には適しません。
明け方の空には、木星と土星が明るく輝いています。
次に各惑星の見え具合をご案内します。
水星
5月17日に東方最大離角となりますので、このころが観察できるチャンスとなります。5月17日頃は-(マイナス)1.1等級の明るさで見られます。
金星
宵の明星(よいのみょうじょう)として、西の夕空に輝きますが、5月はまだ太陽に近い位置に見られるため、観察は6月頃から行うといいでしょう。
火星
夕方の西の空、ふたご座の中に見られ、明るさは1.6~1.7等級で輝いています。今年は火星の接近はありませんので、来年の接近時にぜひ観察しましょう。
木星
明け方の南東の空に-2.1~-2.3等級の明るさで輝いています。
5月22日には西矩(せいく)となり、夜明けの頃には南の空に見えるようになります。
土星
明け方、南東の空に0.7~0.6等級の明るさで輝いています。
5月3日に西矩となり、明け方の頃は高度が高くなるために、天体望遠鏡での観察シーズンがスタートすることになります。
5月の星空
5月の星空は、春の星座の観察に適しています。
しし座のデネボラ、うしかい座のアルクトゥールスそれにおとめ座のスピカを結んでできる大きな正三角形は、春の大三角と呼ばれ、春の星座を覚える時の基準となります。北の空のおおぐま座の頭上高く輝き、こぐま座も北極星の位置からあまり動きませんが、この時期が見やすい時期といえます。
しし座やうみへび座、からす座そしておとめ座などは、南の空に向かって夜空を仰ぎ見てさがすと見つかりやすいことと思います。
5月の天文情報
(月齢は正午の値)
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 土 | 19.0 | 八十八夜 月の赤緯が最南 |
2 | 日 | 20.0 | |
3 | 月 | 21.0 | 憲法記念日 |
4 | 火 | 22.0 | みどりの日 下弦の月 月が土星に最接近 |
5 | 水 | 23.0 | こどもの日 立夏(二十四節気) 月が木星に最接近 |
6 | 木 | 24.0 | みずがめ座η流星群が極大 |
7 | 金 | 25.0 | |
8 | 土 | 26.0 | 月が天の赤道を通過、北半球へ |
9 | 日 | 27.0 | 土星が西矩 |
10 | 月 | 28.0 | |
11 | 火 | 29.0 | |
12 | 水 | 0.3 | 新月 月の距離が最遠 |
13 | 木 | 1.3 | 細い月と金星が接近 |
14 | 金 | 2.3 | |
15 | 土 | 3.3 | |
16 | 日 | 4.3 | 月と火星が接近 |
17 | 月 | 5.3 | 水星の東方最大離角 |
18 | 火 | 6.3 | |
19 | 水 | 7.3 | |
20 | 木 | 8.3 | 上弦の月 |
21 | 金 | 9.3 | 小満(二十四節気) |
22 | 土 | 10.3 | |
23 | 日 | 11.3 | 月が天の赤道を通過、南半球へ |
24 | 月 | 12.3 | |
25 | 火 | 13.3 | |
26 | 水 | 14.3 | 満月(スーパームーン) 皆既月食 木星が西矩 |
27 | 木 | 15.3 | |
28 | 金 | 16.3 | |
29 | 土 | 17.3 | 月の赤緯が最南 |
30 | 日 | 18.3 | |
31 | 月 | 19.3 | 月が土星に最接近 |
5月の星図
南の星空
北の星空
☆彡特別なお知らせ☆彡
「スーパームーンの皆既月食を見よう!」田中千秋講演会のお知らせ
5月26日に皆既月食が日本で見られますが、それに先立ち5月22日(土)に満月が地球の影に入り神秘的な赤銅色に変化する様子や月食の原理などを足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドームを使って本コラム執筆者の田中千秋さんが講演を行います。
- 日 時 5月22日(土曜日)午後6時から午後7時まで(途中入場不可)
- 会 場 足立区ギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム館)
- 定員等 80名(当日、講演開始前までに入場チケットを1階受付でお求めください。朝9時から無料でチケット配布が行われますが、定員になり次第配布終了となります)
- 入場資格 小学生以上(小中学生は保護者同伴)であれば足立区民に限らず入場できます。
なお、コロナ禍の影響を受けて中止となる場合があります。ご不明な点は、足立区ギャラクシティのホームページをご確認ください。
田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。