ちあきの星空コラム
第215回 コロナ禍での星見 (2021/06/01)
梅雨時でコロナ禍の星見
コロナ禍で困った星見
コロナ禍が続いています。
社会はコロナ禍の影響を強く受けていますが、星空はまったく変わっていません。
6月は、梅雨時でお天気が悪いといわれていますが、晴れた日には星空はむしろきれいに見られます。
梅雨の合間の星見は、空気中のちりやほこりが雨とともに地上に落ちて空気は澄みわたっています。ぜひ、梅雨の合間の星空を楽しんでください。
野外での天体観望会がことごとく中止に
コロナ禍の影響により、科学館などでの天体観望会やまちかどでの天体観望会がことごとく中止となっています。
私も毎月、天体観望会のお手伝いをしていますが、今年は1月に行って以来、ずっとコロナ禍の影響で中止となり、行なっていません。
月や星の姿を天体望遠鏡を使って「生」で見る天体観望会は本物の天体の姿を眺める機会として、とても貴重な機会ですが、それができない状況が続き、とても残念です。早くコロナ禍の収束を願うばかりです。
科学館やプラネタリウム館の休館と現在の対応
この原稿を書いている5月下旬の時点では科学館やプラネタリウム館は、休館になっており、残念ながらプラネタリウム投影などを楽しむことができません。
そこで、各館とも工夫をこらして休館中にインターネットのHP(ホームページ)を充実させています。
私の勤務する足立区のプラネタリウム館「ギャラクシティまるちたいけんドーム」でも、HPの中に星にまつわるお話や星座の情報などを盛りだくさん掲載しています。
コロナ禍でお家時間が長くなっている方々にそうした情報をネット検索することをお奨めします。お出かけできない今こそ、ネットでの楽しみを味わってください。
個人で楽しむ天体観望
実際に星を見て星座さがしや惑星さがしを楽しむときに、それが初めてのときは、その前に天体観望会などに出かけて講師の先生やボランティアの方に星座などを教えていただけるととても効率の良い星座さがしができますが、コロナ禍では自分自身だけ星見などとなってしまうことも多くなります。
個人の星見というと最初は大変なように感じますが、何度か星見を楽しむうちに自分一人だけでも星見が楽しめるようになってきます。そうなると次は家族などへの星の講師をつとめたりと楽しみを広げることができるようになります。
星を調べるのには、参考書籍やインターネットを利用した情報収集などを行うことになりますが、実際の星見では庭やベランダなど、野外での星見を楽しむこととなります。必要な道具として、方位を知る磁石や星座をさがす星座早見盤を用意しましょう。
肉眼で十分に星空は楽しむ要素を持っていますが、最初は苦労してみつけた星座も、次々と星座がみつかるようになると楽しみは最高潮に達します。
双眼鏡や天体望遠鏡があれば、それらも活用しましょう。
星座さがしや流れ星の観察などは肉眼で楽しみ、双眼鏡では星の明るさや色の違いが見てとれ、明るい星雲や星団も見ることができます。さらに天体望遠鏡があれば月や惑星を大きく拡大して見ることもできます。
コロナ禍で増えたお家時間を利用して、ぜひ天体観望を楽しんでください。
皆既月食速報
先月のコラムで5月26日に皆既月食が見られることをお伝えしましたが、全国的にお天気があまり良くなかったので、実際に見られた方は少なく、やや残念な月食となってしまいました。
私は天気予報を見ながら自宅のある茨城県南から県北の日立市まで移動して皆既月食を待ちました。海沿いのバイパス道路わきの駐車場に車を停め、明るい時間帯から水平線からの月の出を待ちましたが全く見られず、皆既食となる8時台になって、わずかに雲間から薄雲を通して現れた皆既食の姿を撮影することができました。
写真でご覧ください。
6月の惑星
6月は湿度の高い日が多いものの、天体望遠鏡で観測する惑星の姿は安定して明瞭に見られます。冬場はジェット気流の影響が強く、大気が揺らぐ現象により天体望遠鏡を使って観る惑星の姿は常に揺らめいてはっきりと見ることができません。
しかし、今の時期は大気が比較的落ち着いた日が多く、そうした夜には惑星の姿もはっきり見ることができます。
ぜひ、晴れ間を狙って天体望遠鏡で観察してみましょう。
水星
水星は6月11日には、太陽の方向に位置する内合となりますから、実際には見ることができません。下旬になると明け方の東の空に見られるようになってきます。
金星
宵の明星(よいのみょうじょう)として、西の夕空に輝いて見える金星は。6月に入ってからは高度が高くなり、見やすくなることでしょう。明るさは-(マイナス)3.8等級で、とても明るく輝きますから夕空の中で探してみましょう。
火星
夕方の西空、ふたご座の中に見られますが、暗くなるころには高度が下がりみつけにくくなります。明るさは1.7~1.8等級と比較的明るく輝いていますが、夕空の低空となりますから、低空まで見られるところで探してみましょう。
木星
今まで明け方に見えていましたが、夜半頃には南東の地平線から昇ってくる様子が観察されるようになります。
明るさは、-2.3~-2.5等級ととても明るく輝いています。
天体望遠鏡を使えば木星本体の縞模様や周辺にある衛星の姿も見られます。
土星
木星よりも先に南東の空から昇ってきます。明るさは0.6~0.4等級で、天体望遠鏡で見ると環のある姿を見ることもできます。
6月の星空
6月は天候が悪く、星空を見るのには適さない時期といった先入観を持つ方が多いかと思いますが、天気予報から夜に晴れるチャンスがあればぜひ星空を眺めましょう。
夕空には宵の明星として金星が見えるようにもなってきますし、明け方にしか見られなかった土星や木星も夜半には見えるようになります。
星座は、春の星座から夏の星座の範囲が見られるようになってきますが、ちょうどこのころは、北の空には北斗七星(おおぐま座の一部)が天高く見え、こぐま座の中には北極星も見られますので、そうした北の空の星と星座を確認するのに適した時期といえます。
6月の天文情報
(月齢は正午の値)
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 火 | 20.3 | 月が木星に最接近 |
2 | 水 | 21.3 | 下弦の月 |
3 | 木 | 22.3 | |
4 | 金 | 23.3 | |
5 | 土 | 24.3 | 芒種(二十四節気) 月が天の赤道を通過、北半球へ |
6 | 日 | 25.3 | |
7 | 月 | 26.3 | |
8 | 火 | 27.3 | 月の距離が最遠 |
9 | 水 | 28.3 | |
10 | 木 | 29.3 | 新月 |
11 | 金 | 0.7 | |
12 | 土 | 1.7 | 細い月と金星が接近 月の赤緯が最北 |
13 | 日 | 2.7 | |
14 | 月 | 3.7 | 月が火星に最接近 |
15 | 火 | 4.7 | |
16 | 水 | 5.7 | |
17 | 木 | 6.7 | 月面Xが見える |
18 | 金 | 7.7 | 上弦の月 |
19 | 土 | 8.7 | 月が天の赤道を通過、南半球へ |
20 | 日 | 9.7 | |
21 | 月 | 10.7 | 夏至(二十四節気) |
22 | 火 | 11.7 | |
23 | 水 | 12.7 | 月の距離が最近 |
24 | 木 | 13.7 | 火星とプレセぺ星団が最接近 |
25 | 金 | 14.7 | 満月 月の赤緯が最南 |
26 | 土 | 15.7 | |
27 | 日 | 16.7 | 月が土星に最接近 |
28 | 月 | 17.7 | |
29 | 火 | 18.7 | 月が木星に最接近 |
30 | 水 | 19.7 |
6月の星図
南の星空
北の星空
田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。