ちあきの星空コラム
第218回 中秋の名月を楽しもう (2021/09/03)
中秋の名月は9月21日
毎年、中秋の名月には「お月見」の行事が行われ、ススキやお団子をお供えして月を眺める風習があります。
これは旧暦=太陰太陽暦(たいいんたいようれき)の8月15日に月を眺めてお祝いする行事です。
旧暦では7月、8月、9月を秋としていましたが、真ん中の8月を仲秋と呼び、8月15日の月は仲秋の真ん中にあたるので、「中秋の名月」と呼んでいました。
今年の中秋の名月は、現在の暦では9月21日の月になります。今年はこの日は満月にもあたります。ススキやお団子などをお供えして月を眺めて楽しみましょう。
月が土星と木星に接近
9月17日には月と土星が接近している様子が見えます。
下図の説明図をご覧ください。
月は、日々、その位置を変えていますが、17日にはやぎ座の中にある土星に接近して見られます。
肉眼で十分観察できますので、星座をかたちづくる星々と惑星の土星、それに月の相互位置を確認しましょう。
双眼鏡を使えば、肉眼では見えない星々も見えてきますので、月と土星の間にも星々がたくさんなることがわかります。
天体望遠鏡を使うと土星の環をはじめ、土星の衛星「チタン」もはっきりと見えます。
9月18日になると月は木星に接近します。
木星はやぎ座の中でやぎのしっぽに相当する部分の位置に見られます。
天体望遠鏡では、本体の縞模様のほか、周囲に木星の月である4個のガリレオ衛星が見られます。
土星との位置関係も確認しましょう。
9月の惑星
9月に入ると宵の明星の金星、やぎ座に位置する土星と木星が明るく輝きますので、とても惑星の目立つ時期といえます。
各惑星の様子は以下のとおりです。
水星
9月14日に東方最大離角となりますので、夕空に水星を見ることができるかもしれません。ただし、夕空の中にあって、西空で地平線に近い位置に見えるため、位置を調べてさがすと効率よくみつかることでしょう。
金星
先月に続き宵の明星(よいのみょうじょう)として、夕空の西の空に一番星として見やすくなってきます。明るさは-(マイナス)4.0~4.2等級ととても明るく、すぐに見つかることでしょう。
火星
10月8日に合となりますので太陽の方向に近く、観測には適しません。年末には明け方の空に見られるようになります。
木星
8月20日に衝となったばかりで、9月は観測に適しています。
明るさは、-2.7~2.6等級で、金星に次いで明るい天体としてみつけることができます。9月18日には付近に月の姿が見られます。
土星
8月2日に衝を迎えた土星は、木星と共にやぎ座の中に輝いていて観測に適しています。
木星ほどの明るさはないものの0.3~0.5等級で輝いていますので、やぎ座の中にあって、星座をかたちづくる恒星に比較するととても明るい存在です。
9月の星空
9月の宵の空では西の空を中心に夏の星座が輝いています。
南の空のさそり座やいて座は夕暮れ時のころにまず確認しましょう。
夏の大三角の星々(こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブ)はまだ天頂付近の高い位置に輝いています。
秋の星座は、カシオペヤ座やアンドロメダ座、ペガスス座などが見られます。
また、南の空には、秋の星座の中で唯一の1等星、みなみのうお座のフォーマルハウトが輝いています。
秋の虫の音と共に秋の星座さがしにチャレンジしてみましょう。
9月の天文情報
(月齢は正午の値)
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 水 | 23.5 | |
2 | 木 | 24.5 | 月の赤緯が最北 |
3 | 金 | 25.5 | |
4 | 土 | 26.5 | |
5 | 日 | 27.5 | |
6 | 月 | 28.5 | |
7 | 火 | 0.1 | 新月 白露(二十四節気) |
8 | 水 | 1.1 | |
9 | 木 | 2.1 | 月が赤道を通過、南半球へ |
10 | 金 | 3.1 | 細い月と金星が接近 |
11 | 土 | 4.1 | 月の距離が最近 |
12 | 日 | 5.1 | |
13 | 月 | 6.1 | |
14 | 火 | 7.1 | 上弦の月 水星が東方最大離角 |
15 | 水 | 8.1 | 月の赤緯が最南 |
16 | 木 | 9.1 | |
17 | 金 | 10.1 | 月が土星に最接近 |
18 | 土 | 11.1 | 月が木星に最接近 |
19 | 日 | 12.1 | |
20 | 月 | 13.1 | 敬老の日 火星が地球から最遠 |
21 | 火 | 14.1 | 満月 中秋の名月(十五夜) |
22 | 水 | 15.1 | 月が天の赤道を通過、北半球へ |
23 | 木 | 16.1 | 秋分の日 秋分(二十四節気) |
24 | 金 | 17.1 | |
25 | 土 | 18.1 | |
26 | 日 | 19.1 | |
27 | 月 | 20.1 | 月の距離が最遠 |
28 | 火 | 21.1 | |
29 | 水 | 22.1 | 下弦の月 月の赤緯が最北 |
30 | 木 | 23.1 |
9月の星図
南の星空
北の星空
田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。