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ちあきの星空コラム

第219回 金星が明るく見えます (2021/10/04)

金星が東方最大離角を迎えます

今年の秋は、夕空に金星の輝く姿が見えます。
昔から夕空に見られる金星は、宵(よい)の明星と呼ばれ、親しまれてきましたが、太陽系の惑星のうち、地球の公転軌道よりも内側を回る惑星は、内惑星と呼ばれ、金星と水星がその内惑星にあたります。
内惑星は、地球から見て外側を回っている木星や土星など(外惑星と呼ばれています)と違って真夜中に見えることはなく、太陽の付近にしか見ることができませんので、実際は夕方か明け方に見られるということになります。
夕空に見えて、太陽から最も離れた位置に見える時、すなわち西の空にあって太陽から東側に最も離れて見える時を東方最大離角(とうほうさいだいりかく)といい、明け方に見られる時期では、東にある太陽から最も離れた位置関係になった時を西方最大離角(せいほうさいだいりかく)といいます。
最大離角の頃は、太陽から離れた位置に見えるということになりますので、夕空ですと、日没後に空が暗くなってからもまだ余裕をもって見られるということになります。
夕方の西の空に輝く金星は、太陽からの角度で最も離れて見られる東方最大離角を迎えるのは10月30日になります。
この日は、夕方の西空の中にある金星が地平線からかなり離れた位置(角度)に見られることから見やすく、明るさも-(マイナス)4.6等級ととても明るく、星座をかたちづくる恒星の明るさなどとは比較にならないほど輝いています。
天体望遠鏡を向けると、月と同じように満ち欠けが見られるのですが、この時期には月でいう半月の形のように欠けて見えます。

宵の明星(金星)はとても明るく輝いています

水星は西方最大離角を迎え今年一年で最高の見やすさ

今年の秋は夕空に金星が見やすくなり、東方最大離角を10月30日に迎える旨をお知らせしましたが、明け方の空では水星が今年一番の見やすさになって観察することができます。
明け方の東の空に見え、最も太陽から離れた角度になることを西方最大離角といいますが、10月25日にその日を迎え、まだ水星を見たことがない方はぜひ見るチャンスといえます。
じっさいには夜明け前の東の地平線近くにみつけられるようになるのは10月20日頃からで、およそ11月4日頃までみつけやすい高度になります。

今年の1月に撮影した水星の画像 10月25日には-0.9等級の明るさになりますので、みつけやすいことでしょう。

明るさの等級で-(マイナス)って?

今月に見られる惑星は、金星が-(マイナス)4.6等級、水星が-0.9等級、木星が-2.6等級そして土星は0.5等級の明るさに見えています。
ところで、夜空に輝く星座をかたちづくる恒星(こうせい)は、明るい星を1等星、肉眼でぎりぎり見られる星を6等星と定めています。
6等星よりも2.5倍明るい5等星。5等星よりも2.5倍明るい4等星というように、等級が1等星異なると2.5倍の明るさの差があります。
6等星よりも1等星は何倍明るいのか計算をしてみましょう。1等級の明るさの差が2.5倍であることから、2.5×2.5×2.5×2.5×2.5といった計算になります。つまり、2.5の5乗ですから答えは、約100倍となります。
さらに、1等よりも2.5倍明るいと0等、0等よりも2.5倍明るいと-1等となり、さらに2.5倍明るいと-2等となるわけです。
ここまでの説明でお分かりになったかと思いますが、金星の-4.4等がいかに明るいか理解できることでしょう。夕空に太陽が地平線下に沈んだ直後にはもうはっきり見ることができる金星は、あまりの明るさからUFOと間違われたりすることも多く、また、見る者に感動も与えてくれます。

10月の惑星

10月に入ると宵の明星として輝いている金星や、やぎ座に位置する土星と木星が明るく輝きますので、とても惑星が目立ち、注目される時期となりました。
各惑星の様子は以下のとおりです。

水星

10月25日に西方最大離角となり、今年1年で最も見やすい位置関係になります。といっても、明け方の空に見られるので、早起きが条件になります。
明るさは、-0.9等級ととても明るい輝きになります。

金星

宵の明星(よいのみょうじょう)として、夕空の西の空に一番星として輝きます。
明るさは-(マイナス)4.3~4.6等級ととても明るく、10月30日には東方最大離角を迎えます。

火星

10月8日に合となり、太陽の方向と重なりますので、観測できません。年末には明け方の空に見られるようになります。

木星

やぎ座の中にあって、-2.6~2.4等級の明るさで輝いて見えます。
夕空の中にあっては、西に金星が明るく輝いていますが、南の空には木星が輝いて見られます。

土星

木星と共にやぎ座の中で輝いていますが、明るさは木星にはかなわず0.5~0.6等級で輝いています。

10月の星空

10月の夜空は、秋の星座でいっぱいになります。
といっても秋の星座には1等星がたった一つだけ、みなみのうお座のフォーマルハウトのみで、それ以外の星座をかたちづくる恒星は、2等星以下の星々で、ちょっとほかの季節に比べると地味な感じがします。
とはいうものの、秋の空は空気が澄んですっきりと晴れた夜の星空はキリリと引き締まった感じがして、光害の少ない郊外地では秋の天の川もはっきり見られて星空の美しさを感じることができる星空ともいえます。
星座でいうと秋の星座は「秋の四辺形」をもつペガスス座を代表格として、アンドロメダ座やカシオペヤ座など比較的みつけやすい星座がありますので、星図をたよりに星空散歩を楽しんで見てください。

10月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
24.1
25.1
26.1
27.1
28.1
29.1新月 月が赤道を通過、南半球へ
0.7
1.7寒露(二十四節気)
2.7細い月と金星が接近して見られる 月の距離が最近
103.7
114.7
125.7月の赤緯が最南
136.7上弦の月 月面Xが見える
147.7月と土星が接近
158.7月と木星が接近
169.7
1710.7
1811.7後の月(十三夜)
1912.7月が天の赤道を通過、北半球へ
2013.7満月
2114.7
2215.7
2316.7霜降(二十四節気)
2417.7
2518.7水星が西方最大離角 月の距離が最遠
2619.7
2720.7月の赤緯が最北
2821.7
2922.7下弦の月
3023.7金星が東方最大離角
3124.7
10月の星図
南の星空

10月の南の星図(背景黒)

10月の南の星図(背景白)

北の星空

10月の北の星図(背景黒)

10月の北の星図(背景白)

10月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ11」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。