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ちあきの星空コラム

第221回 月食が見られました (2021/12/01)

11月19日に見られた部分月食報告

11月19日に見られた部分月食。食分が0.98まで進み、ほぼ皆既月食に近い状態

今回の部分月食では、月の出の時にはすでに食が始まっており、雲も多くて月の出は見られませんでしたが、午後5時頃には雲間から姿を現し、半分欠けた様子を撮影することができました。(中央の黒い線は高圧線)

11月19日の部分月食は、全国で見られる天文現象でしたが、関東地方は雲が多く雲を通して見ることとなりました。
私は茨城県龍ケ崎市内で天体望遠鏡を準備して観測地まで運び、月食を待ちましたが、東の地平線から月が昇り来るところは雲に阻まれ、見ることができませんでした。
途中、雲の切れ間があるたびに撮影を行い、食分が最大の0.98となる午後6時過ぎには、薄雲を通してですが欠けた月面の様子をはっきりと見ることができ、撮影にも成功しました。
月が地球の影の中にすっぽりと入ってしまう皆既月食では、月の表面は真っ暗になってしまうように想像されますが、じっさいは、地球にある大気を通り越して月に到達した光が月を赤銅色に浮かび上がらせてくれます。今回は、食分0.98(98パーセント)の部分月食だったので、月表面がどのような色及び明るさで観察されるのか興味がありました。
結果としては、皆既月食同様に月面全体が赤銅色に見え、何とも神秘的な輝きが見られました。
読者のみなさまは、どんな月食観望だったでしょうか?

金星食が見られました

11月9日の午後、日中の金星食が見られました。
金星食は、金星の前を月が通過するように見られ、まるで金星が月に食われてしまうように見られることから、「金星食」と呼んでいます。月のうしろに金星が潜入し、やがて月の反対側から出現するように見られることから、観測用語としても、「潜入」及び「出現」という言葉が用いられています。
今回の金星食は肉眼でそのまま見えるものではありませんので、観測道具として双眼鏡と天体望遠鏡を用意して観察しましたが、月齢3の細い月と共に昼間の金星をとらえることができ、撮影にも成功しました。
写真をご覧ください。金星は表面の半分を太陽の光を浴びて白く輝いていますが、反対側の太陽の光が届かない範囲は月同様に暗くて見ることができません。
金星は13時46分頃、月の暗い部分の縁の後ろに隠れて見えなくなる潜入となり、14時37分頃、月の明るい縁から出現しました。
また、その日の夕暮れ時には細い月と明るい星(金星)が輝く景色が見られ、多くの方々がその美しさに感動されたのではないでしょうか。この時の写真も撮りましたので、ご覧ください。

 

金星食の潜入(左)と出現(右)の写真。金星の姿は、太陽に照らされている箇所は白く輝いて見られますが、夜に相当する部分は黒くて何も見えません。その結果、金星の姿は半月状に写っています。撮影には口径10センチの屈折望遠鏡を用い、カメラは最近では高級機として普及が進んでいるミラーレス一眼カメラを使用しました。

金星食のあった日の夕暮れでは、月の右下に金星が輝いて見られました

ふたご座流星群を見よう

12月14日は、ふたご座流星群が極大を迎えます。13日の夜から14日の明け方にかけてと、14日の夜から15日の明け方にかけて多くの流星(りゅうせい=ながれぼし)が見られますが、「連日の観察は無理!」という方は、どちらか一方の夜のみの観察でも十分です。ぜひ、流星を観察しましょう。両日とも月明かりがあり、観察に障害になりますが、月が西の空に傾く深夜以降から明け方までの間は条件良く見られることでしょう。

流星の写真:数分間、シャッターを開きっぱなしにして撮影すると流星が写ることがあります。

12月の惑星

今年の11月11日に撮影した南西の空です。西寄りに金星、南西に木星と土星が写っています。
ちょうどこの日は月が木星と土星の間に見られました。

夕空の惑星もいよいよ見納めのときが近づいてまいりました。
金星は宵の明星として西の空に一番星として煌々と輝いていますが、徐々に土星と木星に近づいていきます。日にちがたつとやがて高度を下げ、見えにくくなってしまいます。
今月の各惑星の見え方などは次のとおりです。

水星

11月29日に太陽の向こう側を通る外合となり、今月も見ることができません。

金星

宵の明星(よいのみょうじょう)として、夕方の西の空に一番星として輝いています。最大光度になるのは12月4日で、最大光度は-4.9等級になります。
それ以降は徐々に暗くなり、高度を下げていきますが、来年1月9日には、地球と太陽の間を通過する内合となります。内合の頃は見ることができません。
その後、太陽から離れ、明け方の空に登場し、見やすくなるのは来春3月頃です。

火星

火星は明け方の低空の空にありますが、まだ見やすいとはいえず、観測不適です。

木星

木星は、金星に次いで2番目の明るさで輝いています。
土星と共にやぎ座にあり、-2.1~-2.0等級の明るさで輝いて見えます。

土星

木星と共にやぎ座の中で輝いていますが、明るさは木星にはかなわず0.7等級で輝いています。天体望遠鏡を使えば環も見ることができます。

12月の星空

12月になっても秋の星座が見られますが、夜が更けるころになると、冬の星座が登場します。
東の空から昇りくるおうし座やオリオン座などをみつけましょう。
特に、おうし座の中にあるプレアデス星団(和名:すばる)は、肉眼でもはっきりと確認でき、目を引きます。
続いて昇るオリオン座の三ツ星は、東の空から昇ってくるときは三ツ星が縦に並び、とても印象的です。
また、やや北寄りの空には1等星カペラのあるぎょしゃ座(中国から日本に伝わった星座「二十八宿」の「五車」に相当する)が天高く輝いています。
チャンスがあれば秋の星座からぎょしゃ座に続く天の川を光害の少ない地域に出かけて、キラキラとまたたき輝く星々の姿をながめたいものです。

12月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
26.2
27.2
28.2火星食
29.2新月 月の距離が最近
0.8
1.8月の赤緯が最南
2.8大雪(二十四節気) 月と金星が接近
3.8金星が最大光度(-4.7等) 月と土星が接近
4.8月と木星が接近
105.8
116.8上弦の月 月面Xが見える
127.8
138.8月が天の赤道を通過、北半球へ
149.8ふたご座流星群が極大
1510.8
1611.8
1712.8金星と土星が最接近
1813.8月の距離が最遠
1914.8満月
2015.8月の赤緯が最北
2116.8
2217.8冬至(二十四節気)
2318.8
2419.8
2520.8
2621.8
2722.8下弦の月
2823.8
2924.8
3025.8
3126.8
12月の星空案内図
南の星空

12月の南の星図(背景黒)

12月の南の星図(背景白)

北の星空

12月の北の星図(背景黒)

12月の北の星図(背景白)

12月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ11」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。