ちあきの星空コラム
第222回 2022年の天文現象など (2022/01/04)
今年も天文現象を楽しもう!
あけましておめでとうございます。
今年も興味ある天文現象や星空の情報をお知らせしますので、よろしくお願いします。
今月は、今年1年間の主な天文現象をお知らせします。
これを参考に、ご自宅などでの星見の計画や旅行先での天文現象のウオッチングを立てるときの参考にしていただければ幸いです。
1月4日しぶんぎ座流星群
3大流星群のひとつ「しぶんぎ座流星群」が1月4日に極大を迎えます。
現在、しぶんぎ座は存在せず、りゅう座の一部となっていますが、流星群の名称としては、過去の名称の「しぶんぎ座流星群」が使われています。
1月4日の朝が極大となりますので、4日の未明から明け方にかけて星空を眺めていると流れ星に出会うことでしょう。
観察する方角は、りゅう座のある北の方角にとらわれず、全天のいずれでも見える可能性がありますので、星空を仰ぎ見て流星の流れる様子を確認しましょう。
今回は、月明かりもない良い観測条件の夜となります。1時間に数10個以上の流れ星が見られることを期待しています。
水星を見る
惑星のうち、太陽にもっとも近い水星は、地球から見て太陽からあまり離れて見えることはなく、夕暮れ時か明け方の少しの時間しか見ることができません。西の夕空で太陽から最も離れて見える東方最大離角と、東の明け方の空で太陽から最も離れて見られる西方最大離角の頃が見るチャンスです。今年の水星の動きを確認してみました。
東方最大離角となるのは、1月7日、4月29日、8月28日そして12月22日です。西方最大離角には、2月17日、6月17日そして10月9日になります。
東方最大離角の頃は、太陽が西の空に沈んで夕焼けが残る薄明の頃に低空の空をさがしましょう。6倍~9倍程度の双眼鏡を使ってさがして見るのも有効ですが、太陽が沈んでしまう前には双眼鏡を使わないでください。万一、太陽が双眼鏡の視野に入ると眼を傷める危険性があります。注意しましょう。
西方最大離角の時は、明け方の東の空が白み始めるころに明るく輝く水星の姿をさがしましょう。双眼鏡は、日の出と共に太陽を見る危険性がありますので双眼鏡の使用を中止しましょう。
金星が明けの明星へ
昨年の後半は金星が宵の明星として、西の夕空に輝いて私たちの目を楽しませてくれましたが、今年の前半は明けの明星として、明け方の東の空に輝くようになります。
最も太陽から離れて高い位置に見られる西方最大離角は3月20日です。
ただし、最大光度になるのはそれより前の2月9日です。このころは-(マイナス)4.6等級の最大光度で輝きます。
1月の下旬ころから東の空で夜明け前に見られるようになり、日々、高度を上げていきます。2月に入ると見やすくなってきます。
早起きをしてぜひその明るい輝きにふれてみましょう。
月面Xが見られる
写真に示すとおり、XのほかにもL、O、V、E(月面LOVEといいます)なども見ることができます。
天体望遠鏡がないと見ることができませんが、チャンスがあったらぜひ、月面X及び月面LOVEを確認しましょう。
火星と土星が大接近
明け方の空で火星と土星が大接近をします。
4月上旬から中旬にかけてこの2星が大接近します。
日々、その位置関係が変わってくる様子を確かめましょう。
天体望遠鏡がなくても肉眼で両方の星が明るく見えますし、色の違いもわかります。
双眼鏡で見る場合は、対物レンズの口径は30~50ミリメートル程度、倍率は6倍~10倍程度のものを推奨します。もしお持ちの双眼鏡がありましたら、使用してみましょう。
天体望遠鏡で2つの星を見て対比する場合は、低倍率(30倍程度)でまずは見てみましょう。
次に高倍率(80~100倍程度)でそれぞれの星を確認しましょう。
火星は、今年12月月1日の地球最接近に向けて、だんだんと見かけ状の大きさが大きくなってきます。4月のころは、まだ小さな円盤状の姿に見えますが、12月に向けてだんだんと大きく見えるようになってきます。
土星は、本体のまわりをとり巻いている環の存在を確認することができます。これから今年の秋までずっと見ることはできます。土星は、環の存在はもとより環の中に見られるカッシニの空隙や衛星のであるタイタンも見ることができます。
金星と木星の接近
5月1日の明け方に見られる現象で、金星と木星が東の空で超大接近します。
肉眼で充分に楽しめる対象ですが、明け方に見られる現象なので、早起きが必要です。
数日前から現象の数日後まで観察して、その位置関係の変化をメモするといいでしょう。天体写真にも挑戦しましょう。携帯電話に付属しているカメラでも両星の接近している様子は撮影できます
ので、ぜひチャレンジしてみましょう。
惑星の接近ラッシュ
4月頃に金星、火星、木星、土星、海王星が大集合します。
明け方の空を見ると海王星を除く4星が集合している様子が見られます。双眼鏡を使えば海王星もみつけることができますし、時期によってはこれに月が加わって、見ごたえのある明けの星空となります。たまには早起きしてこうした現象も楽しみましょう。
なお、この惑星の接近している様子は4月だけでなく、3月から5月にかけて確認できますので、じっさいに観察して日々の変化を楽しみましょう。
さらに、6月上旬ころには火星と木星が大接近します。
これも早起きをして確認したいものです。
日中の金星食を楽しむ
5月27日には新月を3日後に控えた細い月が、金星を隠す現象が見られ、こうして隠される現象を食といい、今回は昼間に見られる金星食が見られるということになります。といっても全国的に見られるわけではなく、沖縄地方など南の方では金星食として見ることができますが、北の地域では、金星が月に大接近してまた離れていく様子が見られます。昼間の現象ですから、双眼鏡か天体望遠鏡を使わないと観察がむずかしいのですが、晴天に恵まれれば、観察と合わせて写真撮影にもチャレンジしましょう。この写真は、昨年の11月8日に金星食が見られたときに撮影したものです。
火星食
7月21日に火星が下弦すぎの月に隠される現象が見られます。
ただし、関東以西の地域では、月が東の地平線から昇りくるときには既に火星は月に隠されており、24時16分に月の暗い部分から出没する様子を見ることができます。つまり、出没時刻はじっさいは7月22日になってからの現象となります。
変光星ミラの極大
星座をかたちづくる恒星は、一見するところ、明るさは恒に同じだと思われるのですが、実際は明るさの変化する恒星があるのです。
明るさの変わることが観測された恒星は、変光星(へんこうせい)と呼んでおり、今では多くの恒星が変光することがわかっています。
くじら座にある変光星ミラは、およそ1年周期くらいの期間を経て明るくなったり暗くなったりしています。
2022年は、7月27日ごろに増光して2等級くらいの明るさで見られると思われますが、周期的に暗くなったときは10等級くらいまで減光しますので、とても肉眼では見ることができません。
ミラの名称は「ふしぎなもの」という意味の言葉が語源で、鏡を「ミラー」と呼ぶのも語源が同じではないかと思われます。
くじら座の詳しい星図は、インターネットで「くじら座ミラ」で検索すると出てきますので、調べてみましょう。
七夕
7月7日は七夕です。お願い事を書いた短冊を笹竹に飾りつける楽しい行事ですが、夜に星空を見上げようとすると、まだ梅雨が明けておらず、星が見られないことが多く、がっかりする年があります。
古くから伝統的に伝わってきたときの七夕は、旧暦だった頃は今よりおよそ1か月程度遅い時期の行事でした。それが、新暦(現在使用している太陽暦)では梅雨の時が多く、七夕物語の織姫星、彦星を見ることができません。
そこで最近、提唱されているのが旧暦の7月7日を伝統的七夕(今年は8月4日に相当)としてお祝いする行事です。
また、七夕のおまつり時期をひと月ずらして8月7日前後にイベントとして行っている都市(仙台市など)もあります。
こうしたことから、伝統的七夕もお祝いとして定着させ、夜空の星を見上げる行事として楽しんでいただきたいと思います。
ペルセウス座流星群
毎年、8月12日前後にペルセウス座流星群が見られます。
今年は8月12日がちょうど満月にあたり、流星観測に最も適さない環境となっていますが、まったく流星が見られないわけではありませんので、月明かりを建物の影やシートなどで覆い隠したりしながら、観察にチャレンジしてみましょう。
土星と木星の観測好機
夏休みの頃にちょうど木星と土星が観測好機となる年が最近続きましたが、今年はそれらの惑星を観察できる時間帯が遅くなっていて、9~10月ころが天体観望会に最適の時間帯(午後6時~8時ころ)となっています。
それぞれの惑星が見やすくなる時期の詳細は、毎月更新するこの星空コラムの解説を見逃さずに見ていただきたいと思います。
中秋の名月
9月10日は、中秋の名月です。
これは、旧暦にちなんだ名月のおまつりです。
旧暦の頃、春夏秋冬の四季を暦の中で区分し、1~3月が春、4~6月が夏、7~9月が秋、10~12月を冬と決めていました。
このうち、秋は7,8,9月。その真ん中の月(中秋)が8月であり、この月の15日(十五夜)を中秋の名月として、ほぼ満月のこの日の月を鑑賞しました。
この習慣が今でも残っているのです。
今年も伝統のお月見を楽しむ中秋の名月を祝い、月を鑑賞しましょう。
皆既月食
昨年は5月26日が皆既月食、11月19日が部分月食でしたが、お天気があまり良くなかったので見られなかった方々も多かったのではないでしょうか。
ことしは、11月8日に皆既月食が起こります。
夕方の空に見られる良い条件での皆既月食ですから、ぜひ、この天文現象をご覧いただきたいと思います。
火星接近
12月1日に火星が2年2か月ぶりに地球と接近します。
接近の度合いは、中接近程度の接近度合いですが、接近時の前後1か月程度は観測好機だといえます。
肉眼観測では、毎日の移動の様子を観察し、星座の中の火星が存在している位置を記録していきましょう。
天体望遠鏡を使った観測では火星表面を観察し、スケッチや撮影にチャレンジしてみましょう。
1月の惑星
先月に見えていた夕方の西の空に見えていた惑星は、金星、土星、木星とにぎやかでしたが、1月に入ると木星のみが見やすい高度で夕空の一番星として輝きます。
金星や土星は太陽に近い方角に見えるようになり、観察するのに不適となってきました。
今月の各惑星の見え方などは次のとおりです。
水星
1月7日に夕空の西の空で東方最大離角を迎えます。1月早々に水星を見られるチャンスです。肉眼で見られますので、ぜひ探してみましょう。明るさは最大の明るさのときで-(マイナス)1.5等級になります。
金星
先月は宵の明星(よいのみょうじょう)として、夕方の西の空に輝いていましたが、1月9日には、太陽と地球の間を通る内合(ないごう)を迎えます。
したがって、見ることができません。
太陽から位置的に離れて、今度は明け方の空に登場しますが、見やすくなるのは来春3月頃です。
火星
火星は今年末の12月1日の最接近に向けて徐々に視直径が大きくなり見やすくなってきますが、今月の火星はまだ明け方の低空の空にあり、見やすいとはいえませ。
木星
木星は、一番星として夕方の西の空に輝きますが、日を重ねるごとの低空に見えるようになります。太陽の方向に重なる合は3月5日で、日々、観測条件が悪くなってきます。明るさは-2.0~-1.9等級です。
土星
2月5日に太陽と同じ方向に位置するようになる合を迎えますので、観測には適しません。位置は、やぎ座の中にあります。
1月の星空
1月になっても夕空には秋の星座が見られますが、夜が更けるころになると、夜空は冬の星座でいっぱいになります。
オリオン座を中心に冬の星座さがしを楽しみましょう。
1月の天文情報
(月齢は正午の値)
日 | 曜日 | 月齢 | 天文現象など |
---|---|---|---|
1 | 土 | 27.8 | 元日 |
2 | 日 | 28.8 | 月の距離が最近 月の赤緯が最南 |
3 | 月 | 0.4 | 新月 |
4 | 火 | 1.4 | しぶんぎ座流星群極大 |
5 | 水 | 2.4 | 小寒(二十四節気) 月が土星に最接近 |
6 | 木 | 3.4 | 月と木星が接近 |
7 | 金 | 4.4 | 水星が東方最大離角 |
8 | 土 | 5.4 | |
9 | 日 | 6.4 | 月が天の赤道を通過、北半球へ 金星が内合 |
10 | 月 | 7.4 | 成人の日 上弦の月 |
11 | 火 | 8.4 | |
12 | 水 | 9.4 | |
13 | 木 | 10.4 | 水星と土星が最接近 |
14 | 金 | 11.4 | 月の距離が最遠 |
15 | 土 | 12.4 | |
16 | 日 | 13.4 | 月が最北 |
17 | 月 | 14.4 | |
18 | 火 | 15.4 | 満月(本年最小の月/ウルフムーン) |
19 | 水 | 16.4 | |
20 | 木 | 17.4 | 大寒(二十四節気) |
21 | 金 | 18.4 | |
22 | 土 | 19.4 | |
23 | 日 | 20.4 | 月が天の赤道を通過、南半球へ |
24 | 月 | 21.4 | |
25 | 火 | 22.4 | 下弦の月 |
26 | 水 | 23.4 | |
27 | 木 | 24.4 | |
28 | 金 | 25.4 | |
29 | 土 | 26.4 | 月が火星に最接近 |
30 | 日 | 27.4 | 月が最南、月の距離が最近 |
31 | 月 | 28.4 | 月が水星に最接近 |
1月の星空案内図
南の星空
北の星空
田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。