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ちあきの星空コラム

第224回 春はあけぼの (2022/03/01)

明け方の東の空に見られる金星と火星

明け方の東の空に見られる金星と火星

明け方の空に注目!

昨年の秋には、夕暮れと共に夜空に見られた惑星(金星、木星、土星など)が、今は全く見られなくなりましたが、惑星たちはどこへ行ってしまったのでしょうか。
現在、惑星たちは、明けの空に見られます。
早起きをして、夜明け前の南東の空を見ますと、複数の惑星が輝いていることがわかります。
煌々(こうこう)と輝く金星(明けの明星)、赤く輝く火星、それに土星と水星(水星は3月上旬のみ見えます)も輝いています。
月末近くには細い月が加わって下図のようなにぎやかな明けの空となります。
春の明け方の空は、晴れた日にはとても美しく、だんだんと日の出に近づいていくにしたがって、空が明るくなっていく様子は、とても美しいもので、清少納言も「枕草子」の中で、「春はあけぼの」とうたっています。あけぼのの空には惑星たちが共演してとてもにぎやかです。
私たちも「春眠あかつきをおぼえず」ではなく、早起きをして美しい星空と、やがて白み始める星空の様子を楽しみたいものです。
惑星とともに細い明け方の月がつくる美しい光景は、3月下旬だけでなく、今後、4月25~28日頃、5月24~26日頃及び6月21~24日頃にも見られます。
チャンスを生かして、こうした光景を見て、さらに写真撮影にもチャレンジしてみるといいでしょう。高級カメラでなく、スマートフォンなどのカメラでも充分撮影することができますから、初めてのチャレンジでも、きっと美しい地上の景色と星の姿をともに撮影することができることでしょう。

3月28~29日に南東の空で見られる惑星と月の接近の様子

惑星情報

水星

2月17日に西方最大離角を迎えた水星は、3月初旬は明け方の南東の空で輝いていますが、徐々に太陽に近づいていきますので、中旬、下旬は見ることができません。

金星

3月20日に西方最大離角を迎え、明け方の空で最も見やすい時期を迎えます。
明るさは上旬が-(マイナス)4.7等ととても明るく、月末でも-4.4等の明るさで輝きますから夜明けの薄明の中でもはっきりと確認できます。

火星

火星も明け方の南東の空に見られます。
明るさは1.3~1.1等の明るさをもち、赤く輝いていますので、白い輝きの金星と対比してみるといいでしょう。
今年の12月1日には地球に最接近しますが、まだ期間がありますので、これからさらに明るさを増していく火星の輝きを見るのが楽しみです。明るく、また、赤く輝きますので、さがしやすいに天体となるでしょう。

木星

3月5日に合を迎えますので、見ることができません。
その後は、明けの空に輝くようになりますが、まだその位置が太陽に近いため、観察には適しません。

土星

明け方の南東の空に夜明け前に見ることができます。金星や火星と共に南東の空で輝く様子をご確認ください。

3月の星空

3月の星空は、夕方から星空をながめると、オリオン座を中心とする冬の星座が見られます。
やがて、日周運動で冬の星座は西の空に移動し、東の空からは春の星座が昇ってきます。
日周運動による星の動きはゆっくりですから直接目で見ていても星が動いているようには見えませんが、地上の景色と星座などの位置関係を確認しておくと、時間の経過とともに星々が動いたたことを確認できます。
明け方の空では、惑星が南東の地平線から昇ってきて、だんだんと天高く見えるようになることで星の動きがわかります。いったん惑星の位置を確認したのち、しばらく時間をおいて位置をチェックして、日周運動による星の動きを確認してみましょう。

3月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
27.9月が土星に接近(明け方の空で見られる)
28.9
0.4新月 水星と土星が最接近(明け方)
1.4
2.4啓蟄(二十四節気) 月が天の赤道を通過、北半球へ
3.4木星が合
4.4
5.4月とプレアデス星団が並ぶ
6.4
107.4上弦の月 月面Xが見られる
118.4月の距離が最遠
129.4月の赤緯が最北
1310.4
1411.4
1512.4
1613.4金星と火星が最接近(明け方)
1714.4
1815.4満月
1916.4月が天の赤道を通過、南半球へ
2017.4金星が西方最大離角
2118.4春分の日 春分(二十四節気) 水星と木星が最接近(明け方)
2219.4
2320.4
2421.4月の距離が最近
2522.4下弦の月 月の赤緯が最南
2623.4
2724.4
2825.4細い月が金星、土星に接近(明け方)
2926.4金星と土星が最接近(明け方)
3027.4
3128.4細い月が木星に接近(明け方)
3月の星空案内図
南の星空

3月の南の星図(背景黒)

3月の南の星図(背景白)

北の星空

3月の北の星図(背景黒)

3月の北の星図(背景白)

3月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ11」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。