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ちあきの星空コラム

第229回 天の川ってなに? (2022/08/01)

夏の大三角と天の川

夏の大三角と天の川

夏の星空で代表的な星といえば、「夏の大三角」という回答がもっとも多いのですが、たしかに夜空を実際に眺めてみると夏の大三角の星が目だって明るいことがわかります。
それもそのはず、いずれもが1等星で、こと座のベガ、わし座のアルタイルそして、はくちょう座のデネブから構成された大きな三角形です。
特に日本ではベガは七夕まつりで有名な織姫星、アルタイルは彦星に相当しますので、無数に輝く星々から、このふたつの星を探し出すのは楽しみとなります。
この星と星の間には、天の川が流れていますが、実際の星空で確かめると、写真でもおわかりのように、たしかに天の川が存在します。
都会地では、光害の影響から天の川を見ることができない地域もありますが、郊外地では天の川を挟んで二つの星の輝きをみつけることができます。
夏の大三角からは、織姫星と彦星が見られるほかに、その周囲にある夏の星座も星図と対比することによってみつけやすくなります。
夏の夜空では、まっ先に夏の大三角をみつけることから星座さがしを行う基本となります。

天の川

天の川は、見た目には雲のようにも見えますが、じっさいは星の集まりです。
海や山に出かけるチャンスがあれば、天の川はみつけるのが容易ですが、光害の多い都会地では淡い光のため、みつけることはできません。
関東地方でも少し都会から離れて郊外地まで出かければ、かすかな(あわい)天の川の光が認められます。低倍率(6倍から10倍程度)で口径が比較的大きい(3センチから5センチ程度)双眼鏡を使ってその淡い光(天の川)を見ると、多くの星から構成されている星の集まりだということがわかります。
天の川は、夏の大三角のあたりもかなり濃く見えますが、南の空のいて座やさそり座付近はさらに濃く見えます。じっさいの星空で確かめてみましょう。
次の写真でその濃さ、広がりを確認しましょう。

天の川の中心部(いて座、さそり座付近の天の川:オーストラリアにて撮影)

天の川より外側の宇宙を見る

宇宙にはいろんな天体が存在しますが、天体望遠鏡などで見られる天体には、私たちの太陽系を含む銀河(天の川銀河と呼ばれている)の内側に存在する天体と天の川銀河の外に存在する天体があります。
天の川銀河の中にある天体には恒星のほかに惑星、彗星、星雲や星団などがあり、肉眼や天体望遠鏡などでその存在を確認できますが、天の川銀河の外にも多くの銀河がたくさん存在し、じっさいに天体望遠鏡でその存在を確認できます。
夏の星座が見られる方向に見ることができる星雲や星団は、天の川銀河の内側に存在している天体なのですが、深夜に見られる秋の星座の中に天の川銀河の外側にある銀河をみつけることができます。
秋に見られる銀河ではっきり確認できる天体は、アンドロメダ座に位置するM31アンドロメダ銀河と、さんかく座の中に見られるM33渦巻き銀河です。
夏休みを利用して、深夜まで星空をながめていると星空が日周運動で東から西へ移動していく様子がわかり、秋の星座も見えてきます。夏の星座と秋の星座の位置関係なども確認することができます。
M31は、光害のない星空環境(6等星の恒星が見えるような星空)の中では、肉眼で容易にみつけることができます。
M33は、光害のない環境では肉眼で見えるといわれていますが、私はまだ肉眼で見たことがなく、7×50双眼鏡(倍率7倍、口径50ミリ)でさがして見たことはあります。
もちろん、このふたつの天体とも天体望遠鏡を使えば、明快に確認できます。
写真に撮りたい時は、望遠レンズや天体望遠鏡を使って撮れば当然よく写りますが、下の写真のように標準レンズでもデジタルカメラを使って、容易に撮影することができます。
もし、肉眼でM31とM33をさがしてみつからない時も、写真撮影してみると写るかもしれません。秘訣は、アンドロメダ座のβ星をみつけ、その星を画面の中心に入れて、数秒の露光で撮影してみると天体が写っている可能性がありますので、ぜひ、チャレンジしてみることをお奨めします。
カメラ三脚で固定して撮影することもお忘れなく。

アンドロメダ座β星をはさんで、M31とM33が見られる(標準レンズで撮影)

M31アンドロメダ銀河を600mm望遠で撮影した姿.200mm望遠でもそれなりのサイズに写ります

M33渦巻き銀河の姿(600mm望遠レンズで撮影)

土星が見える

今年の春は、明け方に惑星が集合して見られましたが、土星は午後8時頃から見えるようになってまいりました。東の空から土星が昇ってきますのでさがしてみましょう。
土星は低空に見えるため、気流の影響を受けやすく、天体望遠鏡を使えば環の存在もわかると思いますが、高度が高くなるまでは、土星像が絶えず揺らめいて見えることでしょう。
深夜になれば高度が高くなり、土星の環がはっきり見えるようになります。楽しみですね。

土星の姿 撮影:川端孝幸

惑星情報

水星

水星は8月28日に東方最大離角となり、西の夕空の低空の中に明るく輝く様子が見えます。(明るさ-(マイナス)0.6等~0.3等)

金星

明けの明星として見えているが、太陽に近くなってきているので、夜明けの頃に東の空(低空)に見られます。(明るさ-3.8等~-3.9等)

火星

明け方には東南の空で輝いています。明るく、赤く輝いており、今年の12月1日に地球に最接近します。(明るさ0.2~-0.1等)

木星

明け方には南の空で明るく輝いていますが、間もなく夕空でも見られるようなります。楽しみですね。(明るさ-2.5等~-2.7等)

土星

夕空には東の低空に見られますが、徐々に高度が高くなって、観望に適してきます。天体観望会などに参加したら、ぜひ土星の姿を見てみましょう。
(明るさ0.4等~0.3等)

8月の星空

8月の星空では夏の大三角を中心に夏の星座が見られます。
夏休みのうちに光害の少ない海か山に出かけて、天の川も見ましょう。
星座をさがすときは、星座早見盤などを準備して方位を合わせて夏の大三角をみつけて、その後に大三角の周囲の星座をさがしましょう。

8月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
3.4スターウィーク(1日~7日)
4.4
5.4月が天の赤道を通過、南半球へ
6.4伝統的七夕(旧暦七夕)
7.4上弦の月
8.4
9.4立秋(二十四節気)
10.4
11.4月の赤緯が最南
1012.4
1113.4山の日 月の距離が最近
1214.4満月 月が土星に接近
1315.4ペルセウス座流星群が極大
1416.4
1517.4月が天の赤道を通過北半球へ 月が木星に接近
1618.4
1719.4
1820.4
1921.4下弦の月 月とプレアデス星団が接近
2022.4月と火星が接近
2123.4火星とプレアデス星団が接近
2224.4
2325.4処暑(二十四節気) 月の赤緯が最北 月の距離が最遠
2426.4
2527.4細い月とプレセペ星団が接近
2628.4細い月と金星が接近
2729.4新月
280.8水星が東方最大離角
291.8
302.8月が天の赤道を通過、南半球へ 月が水星に接近
313.8
8月の星空案内図
南の星空

8月の南の星図(背景黒)

8月の南の星図(背景白)

北の星空

8月の北の星図(背景黒)

8月の北の星図(背景白)

8月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ11」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。