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ちあきの星空コラム

第235回 近づく月 (2023/02/01)

関東地方の2月は、1月に続いて晴れの日が多いので、夜空を見上げて星空や月を観察するのに適しています。防寒着を着てカイロなどで寒さ対策をおこない、ぜひ、夜空を眺めましょう。

ズィーティーエフ(ZTF)彗星速報

「2月の天文現象」の欄に記載しているズィーティーエフ彗星を撮影しました。
撮影地は霞ケ浦湖畔です。
星空の中で、肉眼では確認できなかったのですが、双眼鏡(口径30ミリ、倍率6倍)では、はっきりと確認できました。
彗星は本体の核は小さなものですが、ダストを広く拡散して(噴き出して)おり、恒星と違い、淡いものの面積を持った天体として観測することができました。
現時点(2月2日)では北極星に近い位置に見ることができます。
読者のみなさまもぜひ、観察してみてください。

ZTF彗星の姿(500ミリ望遠で撮影)

アルテミス計画で再び月へ

月面2022年11月5日撮影

身近な月

夜空を仰ぎ見たときに星空と同様に月の存在は大きく、日本では古来より月を眺める風流な行事が行われてきました。
月は、満ち欠けをくりかえしています。新月を1日目として月の変化を見ていくと、3日目が三日月、7日目頃に上弦の月となり、15日目頃に満月となります。
続いて、23日目の頃に下弦をむかえ、30日で一巡りとなり、新月に戻ります。
こうした変化が月を眺める上でとても興味深い対象として親しまれてきた所以ではないでしょうか。
月は地球の周りを公転しており、日数でいうと約30日で一巡するといえます。
昔は、月の満ち欠けの周期を観測して太陰暦(旧暦)をつくり、暦(こよみ)として利用してまいりましたが、現在は、地球が太陽の周りを回る周期を基準に定められた太陽暦(新暦)が用いられています。
明治時代初期までの長い期間、月の満ち欠けを基準にした太陰暦が用いられてきましたので、大昔から月の満ち欠けが生活に大きな影響を与えてきたことがわかります。
月は、太陽系の惑星である地球の唯一の衛星です。人工衛星などを除き、地球に最も近い位置にある天体ですから、肉眼で見ても球体に見えて表面にある模様を確認することができます。こうした天体はほかにはありませんので大変親しまれてきました。
月を題材にした物語もつくられましたし、海の潮の満ち干など日々の生活にも影響しており、私たちの生活になくてはならない存在ともいえます。

月に行く

現在、人類はISS国際宇宙ステーションによって、地球の外側(宇宙)にまで進出していますが、今、最も注目されていることは、宇宙ロケットにより、月へ人類を送り込む計画の実施ではないでしょうか。
かつてアポロ11号によって月着陸を果たしてから50年がたちますが、現在の科学技術を駆使して再び月に到達しようとアメリカを中心に多くの国が賛同し、もちろん日本も加わって、アルテミス計画が実行に移されています。
そのほか、民間の宇宙開発においても月への関心は高く、月周回軌道や月への着陸などチャレンジを進めています。
遠くない将来に、一般人でも少しの訓練を積めば月世界旅行に行ける世界が実現するかもしれないですね。

月を観察しよう!

月に大きく関心が集まる昨今ですが、みなさんもぜひ、月を眺め、月の満ち欠けや月面の地形などに関心を持たれることをおすすめします。
月は、夕空に見えるときだけでなく、深夜に東の空から昇りくるとき、あるいは明け方にしか見えないといったような現象が見られますので、多様な観察が可能です。
さらに月齢による形状の変化など、月と地球の位置関係や表面の地形など月の存在が気になることが多く出てまいります。
じっさいの空で月を観察すると、肉眼で観察するときは、月を見る時刻や見られる位置、並びに形状が変化していくことなど興味深いものがあります。
双眼鏡ではさらに月の海と呼ばれる地形が明瞭にわかり、主要なクレータの存在などもわかります。
天体望遠鏡を使えば、月の詳細な地形の観察ができて、月面観察をより楽しいものにしてくれます。
月探査のニュースなどとともに、実際に自分の目でおこなう月面観察をぜひ、おすすめします。

月齢の変化によって見えている範囲が変わる月の姿は肉眼でも楽しめ、さらに双眼鏡や天体望遠鏡での観察など、楽しみの多い対象です

冬の星座のさがし方

2月に見る星空は、冬の星座で埋め尽くされています。
星座の見つけ方のコツは、その季節のもっとも目立つ、わかりやすい星座をまずみつけ、その星座を起点として周囲の星座を順番にひとつずつ、確認していくのが順当なみつけ方といえます。
冬の星座では、オリオン座をまずさがし、みつかったらオリオン座をスタートとして、周囲の星座を見つけていくというのが順当なさがし方といえます。
オリオン座は、南の空の高い位置にあります。まず、オリオン座の中心部にある3個の並んだ星(三つ星)をさがしましょう。次に三つ星がわかれば、星図をたよりに三つ星の上下に明るく輝く4個の星をみつけましょう。そうするとオリオン座の姿がわかってまいります。
オリオン座が見つかると次は、オリオン座の赤い1等星「ベテルギウス」から「冬の大三角」をみつけます。
冬の大三角は、オリオン座の東側に見られるシリウス(おおいぬ座)とプロキオン(こいぬ座)とを結んでできる正三角形で、夜空にこれを発見できればオリオン座に加えて、おおいぬ座とこいぬ座をみつけることができます。
次に、オリオンの右側(西側)におうし座を見つけます。今はおうし座には火星が赤い光を発して輝いており、他の星と違って明るく煌煌(こうこう)と輝く火星を見ながら、火星の色に比較的近いオレンジ色の輝きを持つおうし座の1等星アルデバランをみつけましょう。注意してよく見ると、青白い色で輝く「すばる」もこの星座の中にあることがわかります。

冬の星空:魚眼レンズでの撮影で、冬の星座のすべてが表現された写真です

ここまでわかると星図や星座早見盤と照らし合わせながら、オリオン座の周辺に存在するふたご座、ぎょしゃ座それからオリオンの足下にあるうさぎ座などもみつけることができるでしょう。
こうして星座がわかるようになると、次々と星座を見つける楽しさを覚えることができるようになり、この先、春になっても春の星座をみつけることができるようになることでしょう。
ぜひ、チャレンジしてみてください。

惑星情報

2月に観測しやすい惑星は、木星と火星それに金星です。
金星は、「宵の明星(よいのみょうじょう)」と呼ばれ、夕方の西の空で明るく輝いています。木星は秋の星座のうお座の中、火星は冬の星座のおうし座にあり、両星とも星座をかたちづくる恒星よりも明るく輝いています。
したがって、この3個の惑星をみつけるのは容易ですが、金星は西の地平線下にすぐに沈んでしまいますので要注意です。また、火星は日々の移動が大きいため、晴れた夜には星座の中の位置を確認し、星図に記入していくと移動している様子を観察できます。天体望遠鏡があればいずれの惑星も詳しく観察することができます。

水星

1月30日に西方最大離角を迎えましたので、月の前半は明け方の東の空に見ることができます。明るさは-(マイナス)0.2等級程度の明るさで見えます。

金星

宵の明星として、夕方の西の空に輝き、一番星として見つけることができます。
明るさは、-3.9等級ととても明るく、他の星を圧倒する明るさで輝いています。

火星

昨年の12月1日に地球に最も接近した後、地球から徐々に遠ざかりつつありますが、おうし座の中にあり、赤い色をして明るく輝いていますので、すぐにみつけることができます。(-0.3~0.4等)

木星

うお座の中で周囲のどの星よりも明るく輝いており、夕方の空に金星とともに明るく輝いています。
天体望遠鏡では、本体の縞模様のほか、ガリレオ衛星(4個)も見ることができます。(-2.0~-1.9等)

土星

2月17日には合となります、地球から見ると太陽の向こう側に位置し、観察には適さない時期といえます。

 

2月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
10.3
11.3月の赤緯が最北 ズィーティーエフ(ZTF)彗星が地球と最接近
12.3節分
13.3立春(二十四節気
14.3
15.3満月
16.3
17.3
18.3
1019.3
1120.3建国記念の日 ズィーティーエフ(ZTF)彗星が火星と最接近
1221.3
1322.3
1423.3下弦の月
1524.3ズィーティーエフ(ZTF)彗星とおうし座アルデバランが再接近
1625.3月の赤緯が最南
1726.3土星が合
1827.3
1928.3雨水(二十四節気) 月の距離が最近
2029.3新月
210.8
221.8細い月と金星が接近 月が天の赤道を通過北半球へ
232.8細い月と木星が接近
243.8
254.8
265.8月とプレアデス星団が接近
27 6.8上弦の月
28 7.8月と火星が接近
2月の星空案内図
南の星空

背景黒

背景白

北の星空

背景黒

背景白

2月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ11」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。