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ちあきの星空コラム

第249回 ポン・ブルックス彗星を見るー皆既日食速報 (2024/04/18)

天文ニュース速報 4月18日追記

今年4月9日に見られた皆既日食は、メキシコ、アメリカ、カナダ等で見られましたが、私はアメリカテキサス州ダラス近郊で撮影を行いました。太陽から放出されるコロナの様子を撮影するのに雲が障害となりましたが、雲の切れ間から何とか撮影できましたので、写真でご報告します。

日食撮影共通データ
6センチ屈折望遠鏡(焦点距離500ミリ)を使用しデジタルカメラで撮影(説明写真参照)

皆既日食の様子月に隠された太陽の周辺にコロナが見られました。

皆既日食中には外部に放出するコロナと共に赤い紅炎(プロミネンス)が見られました。

撮影に用いた機材です。撮影は快晴ではなく、雲間からのぞく日食の撮影となりました。

ポン・ブルックス彗星の回帰

先月にもお知らせしましたが、ポン・ブルックス彗星が夕空に見えています。
ポン・ブルックス彗星はハレー型彗星に分類され、公転周期70年の楕円軌道をもっており、公転周期76年のハレー彗星に近い周期の彗星で、一生に一度は見られる可能性を持っています。
1812年7月21日にフランスのジャン=ルイ・ポン(1761-1831)によって発見され、4回目の回帰となります。
今回の接近では、彗星が太陽に最も近づく近日点を通過するのが2024年4月21日と計算されています。
彗星を見るチャンスは、近日点通過より前の4月14日に夕方の西空で木星に最も接近しているところを見ることができます。この日を含め、その前後の数日間が最もみつけやすいことでしょう。
彗星は本体に多くの氷を含む核を持っているために太陽に接近すると氷が溶けて蒸発し、水蒸気の大きな尾となって見られることが多く、ほうき星と呼んで私たちの目を楽しませてくれます。
1986年に接近したハレー彗星の時も尾が見られましたが、今回のポン・ブルックス彗星もすでに尾が確認され、写真にも撮影されています。

ポン・ブルックス彗星,3月3日黒野信也氏撮影

ここに掲げるポン・ブルックス彗星の写真は、今年の3月3日に友人が千葉県勝浦市で撮影したものですが、この時点ですでに尾が見られています。明るさは5等級だったそうですが、4月に入れば4等級台まで明るくなるのではないかと期待されます。
なお、1986年に見られたハレー彗星も最接近時は4等級の明るさで輝きました。

ポン・ブルックス彗星を見る

彗星の見られる位置を下図に示します。
この図でわかるとおり、西空の低空に見られることになりますが、4月14日前後に木星に近い位置を移動していきますので、みつけやすいことでしょう。
肉眼で観察するほか、双眼鏡や天体望遠鏡を用いて、彗星の姿を拡大して見られるといいですね。

彗星の位置:日々、彗星が移動していきます。日没後1時間ほどたったときの位置です。

先月も掲載しましたが、1986年3月に撮影したハレー彗星の写真(撮影:筆者)です.この時は明け方の東南の空に見られましたので、視界が開けて光害の少ない千葉県鴨川市に出かけて撮影しました。

春の星座

(春の大曲線から星座をみつける)

北の空にかがやく7個の星、北斗七星から星座をみつける方法があります。この方法は数年前にも掲載しましたが、春の星座探しの定番となっていますので今年も紹介します。
まずは、北斗七星を見つけ、北斗七星の柄の曲線を下図のように星空の中で南に延ばしていくと、うしかい座の1等星アークトゥルスが目にとまります。さらに曲線を延ばしていくと、おとめ座の1等星スピカにたどり着きます。この延ばした曲線のことを春の大曲線と呼んでいます。

春の星空では春の大曲線と春の大三角を使って、星座さがしを楽しみ
ましょう(図版提供:国立天文台)

次に春の大三角をみつけましょう。
明るく輝くアークトゥルスとスピカに加え、しし座の2等星デネボラをさがし、この3星を結ぶと正三角形ができます。これが、春の大三角と呼ばれる星の配列です。
春の代表的な星座は、おおぐま座(北斗七星のある星座)、こぐま座(北極星のある星座)、それにうしかい座、おとめ座、かに座などです。
星図や星座早見盤などを利用して星座をさがしていくときに、春の大曲線と春の大三角をまずみつけ、位置関係をよく確認しながらそのほかの星座も効率よくさがしていきましょう。

4月の惑星

水星

3月25日に東方最大離角を迎えましたので、4月の初めには夕方の西の空に輝いていますが、4月12日に内合となり、観測不適となります。4月の末ごろには明け型の空に見えるようになります。(明るさ-1.4~1.1等級)

金星

明け方の東の空に輝きますが、低空で観察がむずかしくなるでしょう。
(明るさ-3.8~-3.9等級)

火星

2025年1月に地球に接近しますが、今はみずがめ座からうお座に見られます。4月11日には土星と接近した様子が見られます。
(明るさ1.2~1.1等級)

木星

おひつじ座の中で輝いている木星は、夕空の西の低空に見ることができます。
5月15日に太陽の向こう側に位置する合を迎えます。今年の後半にはまた観測好機を迎えます。
(-1.9等級)

土星

明け方の南東の空で輝いています。みずがめ座の中にあります。
(1.1~1.2等級)

4月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
21.7月の赤緯が最南
22.7下弦の月
23.7
24.7清明(二十四節気)
25.7
26.7明け方に細い月と火星が並んで見える
27.7明け方に細い月と土星が並んで見える
28.7月が天の赤道を通過、北半球へ 月の距離が最近
0.4新月
101.4
112.4細い月とプレアデス星団が接近 火星と怒声が最接近
123.4
134.4
145.4ポン・ブルックス彗星と木星が最接近 月の赤緯が最北
156.4
167.4上弦の月 月面Xが見られる
178.4
189.4
1910.4穀雨(二十四節気)
2011.4月の距離が最遠
2112.4ポン・ブルックス彗星が近日点を通過
2213.4
2314.4
2415.4満月(ピンクムーン)
2516.4
2617.4
2718.4
2819.4月の赤緯が最南
2920.4昭和の日
3021.4
4月の星空案内図
南の星空

背景黒

背景白

北の星空

背景黒

背景白

4月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。この星図では、月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。このコラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ12」を使用しています。星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では副台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。