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ちあきの星空コラム

第262回 春の星座 (2025/05/07)

春の星座のみつけかた

5月に見られる星座は、春の星座が中心です。冬の星座には7個も見られた1等星が、春の星座の中には3個しか見られませんので、ちょっとさびしい気がします。
惑星は、春の星座の中に肉眼で見られる惑星は1個のみで、かに座の中に火星が見られます。
さて、星座さがしですが、春の星空の中から星座をみつける方法として、北の空の高い位置にある北斗七星をまずみつけましょう。
北斗七星は、最も親しまれている星の配列なのですが、星空の中にその形をみつけることができるでしょうか?
実際に北斗七星をさがすときは、星座早見や星図などを使っておおぐま座の中の北斗七星をさがしましょう。日本では水を汲む「ひしゃく」の形だといわれてきましたが、今ではひしゃくにお目にかかれるのは、神社の手水にあるひしゃくくらいであまり見かけません。西洋ではスプーンの形だといわれています。
その北斗七星のひしゃくまたはスプーンの手で持つ部分から下図のように南に線を延ばしていくと、うしかい座の1等星アルクトゥールス(図ではアークトゥルスと表記)をみつけることができ、さらに延ばしていくと、おとめ座の1等星スピカをみつけることができます。
このように曲線的に星をたどってみつける方法は以前にも何度か登場していますが、春の1等星をみつける方法として「春の大曲線」と呼び、星をみつける際に利用されています。日本の天文学者が提唱して今では多くの国で実際に使われているようです。

春の大曲線の説明図

次に、1等星のアルクトゥールスとスピカに加え、しし座の2等星デネボラを結ぶとできる三角形を「春の大三角」と呼びます。春の大曲線での星のさがし方に続いて、春の大三角も覚えましょう。
1等星などの明るい星がみつかりますと、その星を含む星座がみつけやすくなりますので、次にはその周辺や星座と星座にはさまれた星座もさがしていきましょう。
春の代表的な星座は、おおぐま座(北斗七星を含む星座)、こぐま座(北極星のある星座)、うしかい座、おとめ座、しし座、かに座、うみへび座、かみのけ座などです。
一度にたくさんの星座を覚える必要はありません。星空を眺めるたびに少しずつわかる星座を増やしていきましょう。

北斗七星から北極星をさがす

夜に北の方角をさがすには北極星が目印になりますが、その北極星をさがすのに昔から北斗七星利用されてきました。北斗七星は春がもっとも見やすく、この機会に北極星をさがしてみましょう。
北極星はいつでも天の北極付近にありますので、方位を知る上ではとても大事な星です。特に、知らない町や高原などに出かけたときに、方位磁針がなくても方位を知ることができるとても便利な星なのです。
北極星の明るさは2等星で1等星ほど目立ちませんが、北斗七星からみつける方法を覚えれば難なくみつけられるようになります。
下図に示すようにおおぐま座にある北斗七星のα(アルファ)星とβ(ベータ)星を結んで、これを図のように5倍延ばしたところに北極星がみつかります。
やってみると案外、簡単にできるかもしれませんね。ぜひチャレンジしてみましょう。

北斗七星から北極星をみつける方法

土星の環の消失2回目

3月24日に環が全く見えなくなる土星環の消失がありましたが、2回目の環の消失が5月7日に見られます。
現在、土星は明け方の東の空に見られます。
3月24日のときは、地球から見てほぼ太陽の方向に見える位置関係にあって、じっさいには見ることができませんでしたが、今回は太陽の位置から少し離れていますが、太陽の光が土星の環の真横から照らすことになるため、環が消失したように見られると期待されています。
土星は、明け方に太陽が昇ってくる前にその姿を見ることができます。なお、土星環消失の確認には天体望遠鏡が必要です。
また、今年の秋になれば夕方の空に見られるようになり、その頃になってもまだ環が見えにくい状態が続いています。
環を持つ特徴的な土星の姿が、細い環あるいは消失することは一般的に想像する土星の姿とは異なります。今年のような細い環あるいは環の消失を見る機会はめったにありませんから、秋のシーズンに天体観望会などの天体望遠鏡を使って土星を観望する機会があれば参加しましょう。

土星の環の見え方の変化(3月号にも掲載した写真です)2020年(左)と2024年(右)
の違い(変化)に注目! 撮影:石川勝也

火星がプレセぺ星団のそばを通過

今年1月12日に地球に最接近した火星は、その頃はふたご座の中に見えていましたが、地球から遠ざかりつつある現在は、かに座に見えています。
火星が星座の中を移動していく中で、5月3日から7日にかけては、かに座の散開星団(プレセぺ星団。M44)の近くを通り過ぎていきます。連続して観察すると移動の様子が分かり、天体の動きを実感することができます。
双眼鏡や天体望遠鏡を使い、火星とM44との位置関係の変化を観察し、スケッチや写真で記録しましょう。とても興味深く臨場感をもって観察することができます。

5月6日に流星群

流星の姿:星空の中に一瞬の輝きを持って流れる

5月6日の夜明け前にみずがめ座η(イータ)流星群が見られます。
時間が夜明け前の午前3時から4時過ぎまでの約1時間、東の空に目を向けて観察しましょう。
東の空から昇ってきたみずがめ座の方向から四方八方に流星は流れます。右に左にあるいは上空に向けて流れる流星の姿をぜひ、観察したいものです。
天体望遠鏡や双眼鏡といった道具も必要ありません。
イスなどに腰掛けてゆっくり空をながめていれば観察できます。
流れた流星の数が、1時間当たり何個くらいになるか数えるといいでしょう。光害のないところでは1時間に50個程度の流星が流れると期待されます。
ぜひ、早起きして観察してみましょう。

5月の惑星

水星

明け方の東の空に輝いて見えますが、中旬以降はだんだんと見にくくなり、5月30日には太陽の向こう側に位置して外合となりますので、観測不適になります。
(明るさ0.0~-2.4等級)

金星

明けの明星として、夜明けの前に東の空で明るく輝きます。
東の空で輝いて、太陽との位置関係で最も角度が開いて見られる西方最大離角は6月1日となります。
(明るさ-4.7~-4.5等級)

火星

かに座の中で赤く輝いています。
5月5日前後にかけて、かに座のプレセぺ星団M44の中を移動する珍しい現象が見られます。
(明るさ0.9~1.3等級)

木星

日没後の西の低空に輝いていますので、宵の明星と勘違いする人が出そうな位置です。6月25日には太陽の方向と重なる合になり、見ることができなくなります。
(-1.8~-1.8等級)

土星

明け方の東の空に見られます
5月7日には本年2回目の環の消失が見られます。
明け方の東の空に天体望遠鏡を使って観察してみましょう。
(1.2~1.1等級)

5月の天文情報

(月齢は正午の値)

曜日月齢天文現象など
3.3八十八夜 月の赤緯が最北
4.3
5.3憲法記念日 深夜月と火星が並ぶ
6.3みどりの日 上弦の月
7.3こどもの日  立夏(二十四節気) 火星とプレセぺ星団が接近
8.3休日 みずがめ座η流星群の極大
9.3土星の環の消失
10.3月が天の赤道を通過、南半球へ
11.3
1012.3
1113.3月の距離が最遠
1214.3
1315.3満月(フラワームーン)
1416.3
1517,3
1618.3月の赤緯が最南
1719.3
1820.3
1921.3
2022.3下弦の月
2123.3小満(二十四節気)
2224.3
2325.3月と土星が接近 月が天の赤道を通過、北半球へ
2426.3明け方月と金星が接近
2527.3
2628.3月の距離が最近
2729.3新月
281.0夕方細い月と木星が並ぶ
292.0月の赤緯が最北
303.0
314.0細い月とプレセぺ星団が最接近
5月の星空案内図
南の星空

背景黒

背景白

北の星空

背景黒

背景白

5月の中旬、午後9時ころの星空です。南の空と北の空の星図がありますので、観察する空の方向によって使い分けましょう。この星図では月明かりの影響はカットし、月の姿も表現していません。
本コラムの中で使用する星図は、㈱アストロアーツの許諾を受け、天文ソフト「ステラナビゲータ12」を使用しています。
星図をクリックすると大きい星図になりますので、プリントアウトして星座さがしに活用しましょう。
田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男 1953年大分県生まれ
子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、足立区にあるギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)で星空の案内を行うほか、各地で天文に関する講演会や星空観察会を催している。
さらに、仲間と共同で運営している神津牧場天文台(群馬県下仁田町)では天文台長を務めている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。 茨城県龍ヶ崎市在住。