第24回 本物のディープインパクト
このコラムの読者の方々は、映画「ディープインパクト」を見たことがあるでしょうか?
地球に接近し、衝突が予測される彗星めがけて宇宙船を衝突させ、彗星を破壊して地球への衝突を回避するといったアメリカ映画ですが、今回、その映画と同様にNASAの探査機をテンペル彗星(9P/Tempel)に衝突させようという大胆な試みが、ついに実行されます。
といっても、このテンペル彗星は、地球に衝突する予報が出ているからではなく、純粋に彗星の科学的な調査をおこなうために衝突探査機をこしらえて、彗星が地球に近づく時期をねらってこの探査機を衝突させ、彗星に関するあらゆるデータを収集しようというものなのです。
これに似た試みは、1986年、地球に76年ぶりに接近したハレー彗星のとき、ヨーロッパ宇宙機構の探査船ジオットが彗星めがけて突入し、彗星核の写真撮影に成功したという経緯があります。
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ハレー彗星 ↑クリックすると拡大します
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今回の探査機は彗星に衝突を目的とするインパクターとその姿を観測するフライバイ機が存在し、インパクターの衝突は7月4日(月)、アメリカの独立記念日に決行されます。
そのとき、彗星で何が起こるか。また、地上からその様子は天体望遠鏡を使って見ることができるのかどうか。興味はつきないところです。数日前からの新聞やTVニュースでも報道されているので、ご存じの方も多いことと思いますが、この彗星の変化を天体望遠鏡でじっさいに見てみようではありませんか。
テンペル彗星は7月4日には、おとめ座の方向に見ることができます。といっても明るさは9等星ですので、肉眼で見ることはできませんが、天体望遠鏡を使えば、観測できる明るさです。日本からは衝突の翌日、7月5日の夜、天体望遠鏡で前日の彗星の姿とはどのような変化があるのか確認することになります。
インパクターの衝撃によって、彗星にどのような変化が生じるのか?彗星の部分的な破壊によって、彗星内部からジェットが噴射して、光度が明るくなっているか。興味は尽きないところです。
11年前にSL第9彗星が木星に衝突したときは、木星表面にその衝突のすごさを物語るような黒々とした衝突痕が認められましたが、今回はどうなるのでしょうか。
いろんな予測がありますが、私は、彗星の光度はかなり上昇し、しばらくの間は彗星内部から吹き出すジェットの影響で、彗星を明るく見ることができるのではないかと考えています。天体望遠鏡をお持ちの方はぜひ、継続観測をされ、明るさのチェックをされることをおすすめします。
なお、位置は「テンペル彗星の移動図」にプロットしておきましたので、参考にしてください。
テンペル彗星の移動図
7月の星空
クリックすると、星図が変わります。
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この星図は、(株)アスキー、(株)アストロアーツの許諾を受け、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています
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七夕の星座
7月7日は、1年間の星にちなむ行事のうち、もっとも知られている七夕祭りがあります。
笹竹に願い事などを書いた短冊や色とりどりの飾りを付けた七夕飾りを飾った経験はだれにでもあることと思います。
旧暦といわれる太陰暦の七夕の日は、今年は8月11日に相当し、梅雨は明けて真夏です。私たちが日常使用している暦では7月7日はまだ梅雨の真最中といったところで、残念ながら織姫星と彦星を鑑賞することは、ほとんど不可能に近い日となります。今年ははたして見られるでしょうか?
ところで、織姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)は、7月中旬ころでどのあたりに見られるでしょうか。星図をたよりに確かめてみてください。夜の10時ころにはこと座のベガはほぼ天頂に近い位置に見られます。わし座は天の川をはさんで反対側にありますので、光害(ひかりがい)の少ない場所で、ぜひ確かめてみましょう。
2005年7月4日
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