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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第38回 部分月食を見よう

9月に入ると夜はぐんと涼しくなってまいります。星をながめる夜には虫の音も聞こえ、ロマンチックな気分に拍車をかけてくれます。
今月は8日金曜日の夜明け前に部分月食を見ることができます。たまにしか見られない現象ですから、ぜひご覧いただきたいと思います。

月食は、地球の影の中を月が通過するときに見られるのですが、そのときの月は必ず満月です。満月では、太陽と地球と月が概ね一直線に並ぶわけですが、完全な一直線に並んだときには月面の全体が影の中に入り、皆既(かいき)月食となります。今回の月食は並び方が完全な一直線ではないため、地球の影をかすめるように月が通り、シミュレーション画像のような部分月食として月の一部だけが欠けて見られます。

今回の部分月食が見られる時間帯は、午前3時過ぎ、正確には午前3時5分から地球の本影の中に月が入り始め、欠けていく様子が見られます。最大に欠けるのが3時51分。そして、食の終わり(欠けがなくなる)が4時37分頃となります。食分は0.189と予想されています。

夜中過ぎから夜明けにかけての現象なので、一度寝て、早起きして見るといいのですが、ちょっと起きるのがつらいですね。でも、月食はめったに見られませんから目覚まし時計を利用して、ぜひ起きていただき観測することをお勧めします。
見るときは、肉眼で十分楽しむことができますが、双眼鏡か天体望遠鏡があれば、さらに詳細に観測することもできます。
夜明け近くはかなり冷え込むこともありますので、温かい飲み物でも用意して、ぜひ、神秘的な月食の様子をご覧になってください。

部分月食
「部分月食の写真」
満月が欠けていく様子は神秘的で、太陽と地球と月の位置関係を実感することができます。

部分月食シミュレーション
「部分月食のシミュレーション」
食分の最大は約0.189。今回の現象は西空で見ることができます。

冥王星がなくなるの?

先月、IAU(国際天文学連合)はプラハで総会を開催し、8月24日に太陽系惑星の定義を修正し、冥王星を惑星から除外することを決定しました。
私たちは、惑星の配列を今まで、「水金地火木土天海冥」と覚えてきましたが、定義の修正によって9個あった惑星は冥王星をはずして8個に変更されてしまったのですからさあ大変。私も多くの方々から、「冥王星はどうなるの?」といった質問を受けました。
私のコメントを次のとおりまとめてみました。

  1. 冥王星がなくなるわけではありません。天体としての冥王星は今までも、また、これからもなんら変わりなく存在し、太陽の周りを回っている太陽系内の天体です。

  2. 大きさも形も何も冥王星に変化はありませんが、人類が惑星と定義づけるかどうかだけが変わったのであって、天体としての存在が否定されたのではありません。

  3. 太陽の周りを回っており、十分な質量があってほとんど球形で周囲の天体よりも特に大きいものを「惑星」と位置づけ、冥王星をはじめ惑星ほど大きくないものを「矮惑星」、それ以外の天体で衛星でないものを「太陽系小天体」と呼ぶとIAUでは決議しましたが、日本での学術用語をどうするかは、今後の課題となっています。

  4. 教科書ではどのように扱われるようになるのでしょうか?新聞では来年度の教科書から冥王星を惑星として扱わないように記述が変わるなどと報道されています。「惑星は8個(水金地火木土天海)あり、惑星以外にも太陽系には様々な天体が存在しています」といった主旨のことが述べられるのでしょうか。まだ学術用語が決まっていない中で、どのように教科書が変わるか興味のあるところです。

今回の冥王星騒動は、新聞やテレビなどで大きく取り上げられたことによって、多くの方々が天体に興味を示すきっかけとなりました。私をはじめ、天文普及につとめる関係者にはある意味うれしいできごとだったともいえます。このコラムの読者の皆様方にもさらに星や天体に関心をもっていただき、連続して毎月このコラムを愛読していただければ嬉しく思います。

9月の星座案内

9月の空では午後8時を過ぎると夏の星座が西空に傾き始め、東の空から秋の星座が見られるようになります。
夏の星座のさそり座はすでに地平線下に沈み、天の川と夏の大三角だけが夏の名残として西空に輝いて見えます。
天の川を南西から天頂をとおり北の方角へたどっていくこととしますが、よく見ると、天の川は、南から北まで天に大きな架け橋のように横断しているのがわかります。星図(黒)を見ていただくと、その様子が良くおわかりになることと思います。
では、天の川に沿って星座を順番にたどって見ていきましょう、夏の星座が南の方からいて座、たて座、わし座と見られ、天頂付近ではこと座やはくちょう座が見られます。秋の星座は、天頂から北東の空へケフェウス座、カシオペア座、ペルセウス座と見えてきます。天の川から目を東に移すと、東の空の方角には、ペガスス座、みずがめ座そしてやぎ座などが見られます。
秋の星座を全部見るのは夜半まで待つ必要があります。また、月齢にも注意して、できれば満月を過ぎて、5〜6日経過した9月中旬から月末までの方が月明かりによる光害(ひかりがい)がなく、見やすいことでしょう。

9月の星座案内図

星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※この星図は、株式会社アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています。

今月も星まつり

先月及び先々月には星まつりのお知らせをしましたが、今月もまたお知らせします。
9月末の9月29日(金)から10月1日にかけて、福島県石川町でスターライトフェスティバルが行われます。
福島県は茨城県と接していますが、石川町はJR水郡線で水戸から郡山に行く途中にあり、母畑(ぼばた)温泉、猫啼(ねこなき)温泉等の温泉もあって、星のきれいな町です。
ここでは毎年、母畑ダムわきの駐車場並びにグランドを利用して、スターウオッチングが行われます。昼間からコンサートやじゃんけん大会、模擬店などが出店してにぎわい、夜ともなると天文ファンや天体望遠鏡メーカーそれに望遠鏡ショップなどが持ち寄った様々な天体望遠鏡で星空を眺めることができます。
フェスティバルの入場は無料。私ももちろん参加を予定していまして会場内にブースを構え、手作り星座早見教室を開く予定です。もし、会場で見かけましたらお声をおかけください。
つくばからですと会場までは約160キロメートルの距離があり、車での参加であれば車中泊も可能ですが、ゆっくりくつろぐには付近の温泉付きのホテルを予約するのが最適です。また、会場内にテントを張ってキャンプもできます。
秋の夜長を利用して星空を満喫するこのイベントにぜひ、ご参加されますようお勧めします。

星まつりの概要

日 程 名称/会場 主 催 問い合わせ先
9月29日(金)〜
10月1日(日)
スターライトフェスティバル2006
/福島県石川町母畑(ぼばた) レークサイドセンター
主催:スターライトフェスティバル実行委員会
/後援:石川町、 石川町観光物産協会ほか
スターライトフェスティバル2006
実行委員長 青柳房夫
電話 0247-26-7774
同事務局 遠藤崇典
電話 0247-26-7736

2006年9月4日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。