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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第45回 昼間に火星食

火星が月に隠されます

火星食の説明図

火星食開始の約2分前のシミュレーション図です。まず、昼間の月をみつけたら、月のそばにある火星を次にみつけます。火星は肉眼では無理で、望遠鏡を必要とします。なお、昼間の現象ですから太陽も出ていますので、決して太陽に天体望遠鏡や双眼鏡を向けないでください。失明の危険性を伴いますので注意が必要です。
なお、この図はアストロアーツのステラナビゲータV8から出力し、加工したものを使用しています。

4月14日(土)の昼間に火星が月に隠される「火星食」が見られます。昼間のできごとなので、まず、青空の中で月をみつけます。月がみつかったら、天体望遠鏡(あるいは双眼鏡)でじっくり月とその周辺を観察します。そうすると、月のすぐ近くに火星をみつけることができます。火星は午前11時19分頃には月に隠されてしまいますので、その前に火星をみつけて、徐々に隠されていく様子を観測することとなります。次に12時20分頃には、今度は月の反対側の黒縁から出現する火星の様子を観察できます。
月が地球の周りを公転していることがよくわかる現象ですから、晴れましたら見逃さずに観測しましょう。

天の川のないのは春だけ

4月になりました。新年度をむかえ新入学や新入社など、初々しいシーンが各地で見受けられます。入学祝いに天体望遠鏡とか、いよいよ定年退職を迎えたので、記念になる品物を買い求めようと天体望遠鏡ショップを訪ねるといったことも想像されます。じっさいに望遠鏡ショップは春休みに繁盛していたようです。
ところで、購入した天体望遠鏡で、早速夜空を見ようとするとき、まず星座さがしから始まりますが、その春の星座の中に天の川が見あたりません。
ご存じのように天の川は私たち太陽系を含んだ銀河という星の集団ですが、これは円盤のように星が集まって渦巻状になっている星の大集団です。当然のことながらその星の集団の内側に存在する地球から夜空を見上げれば銀河(天の川)が見えるわけで、夜空には天の川が一周して帯状に見られるということは想像にむずかしくありません。
それなのになぜ春の星座に天の川は見られないのでしょうか?
実はこの季節は、南半球の星空の方で天の川が見られ、北半球側では残念ながら夜遅くに夏の星座が昇ってきて、夏の天の川とご対面することができます。
南半球では、春に南十字座などの星座に天の川が見られ、コールサック(石炭袋)などの暗黒帯と一緒に見ることができます(右の写真を参照してください)。
この南天の天の川も日本から見る夏の天の川に負けず劣らず美しいものです。春にオーストラリアやニュージーランドにお出かけのみなさんはぜひ、夜空を鑑賞して、天の川や南十字をみつけましょう。

南十字と銀河

さそり座からケンタウルス座、南十字座と続く南天の天の川は、赤道帯や南半球の国に旅したときは、ぜひチェックしたいものです。日本からは見られない星座がいくつも見られます。

南十字座付近の星図

南十字座は明るい星で構成された十字型なので、比較的みつけやすいのですが、思ったよりも小さな星座なので、夜空に目をならし、天の川の流れをみつけ、それから、天の川の中にぽかんと空いた黒い空間「コールサック」をみつけるとそのすぐ脇に南十字をみつけることができます。

4月の星座案内

北斗七星

北斗七星をみつけるのは、春が最適です。全天の星の中でも、もっともみつけやすい星の配列といえるでしょう。

春の大曲線の説明図

北斗からこの図に基づいてたどっていくと、簡単にアークトゥルスとスピカをみつけることができます。

4月に入ると陽気が良くなり、空気中の水分が増すだけに星空の透明度は悪くなりがちですが、大きな高気圧が張り出してくるときがスターウオッチングのねらい目。
今月は月の半ばが月明かりもなく、星座を探すには適しています。逆に上旬と月末は月が明るく、残念ながら4月末から5月上旬のゴールデンウイーク中も月明かりの影響が大きい時期となっています。
春の星座で多くの方がみつけられる代表格が北斗七星ですが、この北斗のひしゃくの柄の部分はおおぐま座のしっぽにあたり、この先端をしっぽのカーブに合わせて、さらに南側にたどっていくと明るい1等星うしかい座のアークトゥルスにたどり着きます。さらにそのカーブを延ばしていくとおとめ座の1等星スピカをみつけることができます。これが春の大曲線です。
1等星のアークトゥルスとスピカ、それにしし座の尾にある2等星の「デネボラ」の3星を線で結ぶと春の大三角となります。
春の大三角との位置関係から、そのほかの星座、かみのけ座やコップ座などまでみつけられたら一人前ですね。

4月の星座案内図

星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※この星図は、株式会社アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています。

双眼鏡がほしい(最終回)

いよいよ双眼鏡がほしいシリーズの最終回です。
購入したときはぴかぴかのきれいな双眼鏡も、使っているうちにだんだんと汚れてきます。今回は、双眼鏡の手入れや故障したときの対応などについて述べます。

水滴がついた

寒いところで使用し、その後、暖かい室内に入れると双眼鏡のレンズはたちまち曇ってしまいます。もちろん、レンズ以外の本体も水滴がつきますね。
こうしたときはすぐに乾いた布で拭き取りましょう。
夜間の通常使用でも夜露で濡れることはありますし、冬場では霜が付着することもあります。防水型の双眼鏡でも濡れたまま放置しないで、使用後は乾いた布などで必ず拭き取るようにしましょう。
室内に入れる前に、ビニル袋に入れてから室内に持ち込むと室内温度にゆっくりなじみ、水滴の付着を防ぐことができます。

レンズの汚れをきれいにする

双眼鏡の外観の汚れは、シリコンクロスやセーム皮で拭くことできれいになりますが、レンズの汚れは決してシリコンクロスで拭いてはいけません。
レンズはまず、ブロアーブラシなどで、風をレンズに送り埃を祓います。次に脱脂された木綿布などでそーと汚れを拭き取ります。ごしごしと強くレンズを拭くと傷ついてしまいますので、注意しながらやさしく拭きましょう。
市販のレンズクリーニングキットなどを利用してもいいでしょう。
レンズの内側にゴミが付着したり曇ったりした内部の汚れは、メーカーに修理を依頼することとなります。ご自分で分解して拭くことはやめましょう。

光軸が狂った

双眼鏡の故障はたいてい落下によるものです。必ず双眼鏡にはストラップを取り付け、双眼鏡を覗くときはストラップを首にかけてからにしましょう。
落下させて左右の見える方向が狂ってしまうと、左右の目でみた像が合致しなくなります。
こうしたときはメーカー修理以外に直す手だてはありません。そのためにも購入時から名の通ったメーカー品をお薦めしているわけです。

レンズにカビがはえた

双眼鏡のレンズにカビを発見したらすぐに拭き取ることが必要ですが、レンズの内側に生えたときは、メーカーにクリーニング兼オーバーホールに出しましょう。
カビはレンズの表面の有機成分などから発生しますが、放っておくとやがて、レンズのコーティングまで痛めてしまいますので、早めに対処しましょう。カビは、通常よく見かける青カビや黒カビと違い、透明または白色で目立ちませんが、レンズ表面をよく見ると菌糸が広がっていくグニャグニャした模様が見えることがあります。
保管するときに、皮ケースなどに入れてしまいっぱなしにしてしまうとカビは生えやすく、しょっちゅう使用している双眼鏡には不思議とカビは生えにくいものです。
天体観測だけでなく、レジャーや散歩などのお出かけの時にも持参してレンズの向こう側の世界を楽しみましょう。そして、使ったら必ず最後にきれいにクリーニングしてからしまうようにしましょう。

双眼鏡の構造

双眼鏡の構造=この図ではポロプリズム式双眼鏡の構造が良くわかります :財団法人日本望遠鏡検査・技術協会のパンフレット「双眼鏡」の表紙から引用

双眼鏡のガイド冊子

双眼鏡の構造や取り扱い方、良い双眼鏡を求めるためのポイントなどが書かれた冊子が財団法人日本望遠鏡検査・技術協会から発行されています。
今回、この冊子を同協会から100冊いただきましたので、ご希望の方に差し上げます。
ご希望の方は、A4封筒に送り先(住所、氏名)を記入し、切手190円を貼った返信用封筒を同封して、お申し込みください。
締め切りは今月末(平成19年4月30日必着)とし、5月に発送いたします。なお、電話やメールでのお問い合わせはご容赦ください。

申込先

〒305−0032 つくば市竹園1丁目2番地1
財団法人研究学園都市コミュニティケーブルサービス(ACCS)内
つくばもん事務局双眼鏡冊子プレゼント係 宛

 

2007年4月2日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。