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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第46回 北斗七星を見る

北斗七星

おおぐま座とこぐま座の星座絵

おおぐま座とこぐま座は、北天で仲良く天を巡っているように見えます。天の大神ゼウスのお妃のヘラは、ゼウスがこの母子を星座にしたことに腹を立て、北の空で一年中、沈むことなく空の中を回り続け、休めなくしたとも伝えられています。

おおぐま座(北斗七星)

北斗七星はおおぐまの後ろ半分の部位に相当します。北斗七星はわかってもおおぐま座全体の星々をみつけるのは一苦労ですが、星図(星座絵)とこの写真を見比べながらじっさいの空でさがしてみましょう。。

春に見られる北斗七星は冬のオリオン座とともに人々にもっとも知られている星です。
星の講演や講習会で、「みつけられる星座は?」との問いに対し、「北斗七星」という回答はつねに上位に入ります。それだけ知られている北斗七星は、春の空では天高く、北の空というよりは北天の高い位置に見ることができます。

北斗七星は、北極星をみつけるための星として、昔から多くの国、多くの人々に知られていました。星座でいうと北斗七星はおおぐま座の一部となっていて、ギリシャ神話では次のようなお話しがあります。

女神のアルテミスに仕えたニンフ(森や泉の妖精)だったカリストは、ある日、天の大神ゼウスに愛され、子供を身ごもってしまいました。そして男の子が誕生しアルカスと名付けました。そのことを知ったアルテミスはたいそう怒り、カリストを熊の姿に変えてしまったのです。それから15年ほどがたち、息子のアルカスはたくましい青年狩人に育ちました。あるとき、狩りに出かけると森の中で熊に出会いました。その熊は母親のカリストだったのです。熊はすぐに自分の息子だと気づき、近寄っていきましたが、襲いかかる熊だと思ったアルカスは、自分の母親だとも知らないで弓矢で射ようとしました。あまりにもむごい運命に、大神ゼウスはこの親子を天にあげ、おおぐま座とこぐま座として、星座にしたのだといわれています。

こぐま座のしっぽの先の2等星はポーラスター(北極星)として、四季をつうじてその星を見ることができます。

5月も土星を見よう

5月にはいり、夕方の西空に見られる宵の明星(金星)は、ますます明るく輝くようになってきました。もちろん夕空の中では最も明るく見え、一番星となっています。その金星は、天体望遠鏡で見ると今月はまだ卵形のような形状で、あまり見応えがありません。

この時期、天体望遠鏡で見るにはやはり土星です。夕空の中では天頂近くにあり、地球の気流の影響も受けにくい高い位置ですから天体望遠鏡では、環がはっきりと見えます。
土星の環の傾き具合は、地球から見ると年々変化して見えますが、今年の見え具合は写真で示すようにスタンダードな形状に見えます。

天体望遠鏡をお持ちの方は、ぜひご家族や友人と一緒にその姿を見て感動していただきたいと思います。バードウオッチング用のフィールドスコープでも環の存在が確認できるかもしれません。ぜひチャレンジしてみましょう。

土星

この土星写真は、今年の4月14日に私の所属する神津牧場天文台において、天体望遠鏡の覗く部分に手持ちでデジタルカメラを近づけ、パチリとシャッターを切って撮影したものです。環の傾きもほどほどで、先月の写真(環の開き具合が大きかった2004年撮影のもの)と比較すると環の傾き具合の変化がわかります。

5月の星座案内

5月に入ると湿度が高い日が多く、低空の星は望みにくいのですが、比較的高度角のある星座を中心にみつけてみましょう。
巻頭に北斗七星のことを書きましたが、北の空ではおおぐま座とこぐま座が、ひしゃく星とミニひしゃく星としてみつけられるといいでしょう。さらに、北斗七星からおおぐまの全体像をさがし、暗い星まで含めて、おおぐま座の全貌がみつけられたときの感動は、夏のへびつかい座のかたちをみつけられたときと同様の達成感があります。
今月はゴールデンウイーク中は月が明るく、星座ウオッチングには不向きですが、中旬には月明かりがない夜を迎えることができ、星座もみつけやすくなります。
今月は、北斗七星にほど近い、りょうけん座やかみのけ座が天高く見られますので、ぜひみつけましょう。もちろん定番のうしかい座、おとめ座、しし座はもとより、こじし座、ややまねこ座にもチャレンジしてみましょう。

5月の星座案内図

星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※この星図は、株式会社アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています。

天体望遠鏡がほしい(初回)

このコラムでは、いろんな天体について、天体望遠鏡でどのように見られるか解説することが多いのですが、読者からは、双眼鏡がほしいシリーズに続いて天体望遠鏡がほしいシリーズの掲載リクエストが届きました。

双眼鏡は汎用性があり、一家に一台あっても場所もとりませんし、価格的にもそう高いものでもないので購入に関しては比較的家族の了解も得やすいことと思いますが、天体望遠鏡となると、そう簡単ではありません。それでも、家族の記念日や子供の成長に合わせて、天体望遠鏡のプレゼントなども、もしかしたら人生観や世界観を変える大きなできごとのきっかけになるかもしれませんよね。

まあ、そうした大げさなことを考える必要もないかもしれませんが、購入を考えるときは役立つようなアドバイスができればいいなと思っています。第14回(2004年9月)のコラムでも簡単なアドバイスをしていますが、今月から数回に渡って、天体望遠鏡の知識、使い方、購入アドバイスなどをおこないたいと思います。

天体望遠鏡を使う

ピンからキリまで
天体望遠鏡には玩具のような廉価版から本格的な観測に使える高級タイプまで、多くのメーカー、多くの製品が存在します。
気がはやって、とにかく購入!などと焦らないで、じっくり検討してから失敗のない買い物となるようにしましょう。
まずは、天体望遠鏡のことを理解すること。これには、天文雑誌や天体望遠鏡のガイドブックを読むといったことからはじめ、天体望遠鏡に関する基礎的な知識を身につけていくことが重要です。
次号からは、具体的なアドバイスをおこないたいと思いますので、ご期待ください。

 

2007年5月2日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。