つくばのこと、もっとわかれば もっとたのしい! 茨城県つくば市のケーブルテレビ局ACCSによる地域情報サイト
ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第48回 金星が三日月のように見える?

三日月のような金星

金星(欠けた様子)

現在、公転している金星がだんだんと地球に近づいてきているところで、8月16日の内合になる前の8月初めころまで夕空に見られ、天体望遠鏡ではこの写真のような細い月のような姿に見えます。

昼間の金星を見る

先月、千葉県鴨川市のお祭り(シーフェスタ)に出かけ、昼間の金星を多くの参加者に見ていただきました。昼間に星が見えること自体に多くの人々が驚かれ、大きな感動を与えることができました。

金星(宵の明星)は先月もご案内しましたが、夕空の中で今までにも増して煌々(こうこう)と輝く姿を見ることができます。この金星は、内惑星といって、太陽系の惑星の中で、地球よりも内側の公転軌道を回っていますので、地球から見て太陽と金星の位置関係があまり大きく離れることはなく、太陽から最大に離れた最大離角でも45度程度です。つまり、地球から見て、太陽の反対側に位置して見えることはないということです。西空での最大離角を東方最大離角と呼び、今年の6月9日にその日を迎えました。現在は太陽に日々、近づいていくように観測されます。

最大の光度になるのは、7月12日で、−(マイナス)4.5等にまで明るくなります。7月いっぱいは西の空に輝いて見られる金星の姿も、8月に入ると見かけ上、太陽に近づき観測しづらくなくなります。そして8月16日には内合といって、太陽と地球の間に金星が入り、夕方にも明け方にも全く見ることができなくなるのです。9月に入ると今度は明け方の東の空で輝く姿を見ることができるようになりますが、このときの金星のことを昔から明けの明星(あけのみょうじょう)と呼んでいます。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、輝く金星の姿を天体望遠鏡で観測すると、なんと三日月のような姿に見えるのです。これは、太陽の光を受けている部分が輝き、金星の夜の部分が暗くて見えないためにこうした姿で見られるのです。

昼間でも、最大光度となる7月中旬ころであれば、空気が澄んでいる日には肉眼でみつけられるチャンスがあります。私も群馬県の神津牧場天文台で昼間に肉眼で金星の輝きをみつけて小躍りしたことがあります。
肉眼でみつけられるのは、まれなことですが天体望遠鏡を使えば昼間の金星を容易に見ることができます。写真のように先月も、千葉県鴨川で多くの方々に昼間の金星を天体望遠鏡で見ていただきました。

天体望遠鏡や双眼鏡をお持ちの方は、ぜひ、昼間の金星さがしにチャレンジしてみましょう!ただし、付近にある太陽を決して覗かないこと。失明のおそれがあります。ご注意を!

7月の星座案内

7月といえば7月7日の七夕(たなばた)が頭に浮かびます。その七夕の星、牽牛(彦星=わし座のアルタイル)と織女(織姫星=こと座のベガ)はどのあたりに見られるでしょうか?
ベガが光害(ひかりがい)の影響を受けにくい天頂付近に差しかかるのは、七夕の7月7日では午後11時ころになります。ベガは0等星、アルタイルは1等星なので、夜空に光害があっても確実に見ることができますが、光害の少ない郊外地で見上げればこの2星の間には、天の川が見られます。天の川は淡い輝きなので、つくば市内の市街地ではちょっと無理かもしれません。私は空気の澄んだ夜に筑波山の北側や稲敷市(旧桜川村の区域)などで天の川を確認しています。
天の川を見るのは、別に7月7日に限る必要はありませんので、梅雨が明けたらその後の1週間くらいは比較的天気が安定し、空気も澄んで星もきれいに見ることができますので、ぜひ天の川を見るウオッチングに出かけてみるといいでしょう。

6月18日に見られた月と金星の接近

先月のコラムでお知らせした6月18日の月と金星の接近はご覧になりましたか?私は、好天に恵まれた仙台の駅付近の青葉通からこの様子をながめ、デジタルコンパクトカメラで撮影しました

夏の星座の中で、7月のうちに見ておきたい星座は、天の川を南に下った地平線近くに見られるさそり座、いて座、てんびん座などです。はくちょう座などは秋に入ってからでもしばらくは見られますが、天の南半球に位置するさそり座などはぜひ7月のうちに見ることをおすすめします。特に、今年の夏はさそり座付近には木星が明るく輝いていますので、目印になり、みつけやすいことでしょう。

7月の星座案内図

星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※この星図は、株式会社アストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータVer.7」から出力し、加工したものを使用しています。

天体望遠鏡がほしい(シリーズ第3回)

このシリーズも第3回目を迎えました。
今回は、よく見える望遠鏡のことを知るために、対物レンズの分解能について解説しましょう。

分解能とは?

天体観測をして、惑星を見たり二重星を観測したりするときに対物レンズを通った像がいかにはっきり見えるか。あるいは接近したふたつの星が分離して見られるかといったレンズの性能が気になりますね。
昔、イギリスの天文家ウイリアム・ドーズは、天体望遠鏡により見分けられる物体の解像力の限界を実験により導き出しました。接近するふたつの点像(二重星)を見分ける能力を分解能(ぶんかいのう)といい、角度の″(秒)で表します。

分解能は口径で限界がある?

ウイリアム・ドーズは対物レンズの口径ごとの分解能力の限界をつきとめました。これを現在はドーズの限界と呼んでおり、表のとおり、大口径ほど分解能は優れているということがわかります。
表(口径と分解能の関係)に掲げる分解能の数値までの解像力が市販の天体望遠鏡に本当にあるのかどうかは、その製品の個別の精度、品質管理などにより異なりますが、名の通ったメーカーの高級タイプの天体望遠鏡であれば、まず間違いなく分解能をクリアーすることでしょう。格安の天体望遠鏡などでは、そのカタログに分解能の数値が出ていても、それはドーズの限界値を示しているだけで、その数値を保証するものではないようですから気を付けてください。

分解能と二重星

二重星は、星空の中に数多く存在しています。市販の星図では二重星は記号が付いて分かるように表現されています。北斗七星のミザールやはくちょう座のアルビレオは有名ですが、他にもたくさんの二重星がありますので、天体望遠鏡をお持ちの方は実際に観測して星の分離の様子を確認するといいでしょう。

それぞれの天体望遠鏡の分解能がどれだけ優れているかを判断するには、二重星を実際に観測したり、他の望遠鏡と同一の天体を比較観測することによりわかります。

口径が大きいものを買えばいい?

口径と分解能の関係
対物レンズの口径
(単位:ミリメートル)
分解能
(単位:角度の″(秒))
80 1.45″
100 1.16″
150 0.77″
200 0.58″
250 0.46″

天体望遠鏡では、口径が大きいほど分解能がすぐれ、恒星像は小さく見えます。ごく接近した二重星を分離して見るためにも分解能のすぐれた天体望遠鏡が必要です。実際の天体望遠鏡を選択するときは、この理論上の分解能をクリヤーする高性能なものを求めましょう。

天体望遠鏡の対物レンズの口径が大きいほど分解能がすぐれていることは、前述のとおりですが、だからといって、とにかく大口径のものを選べばいいといった選択基準は、単純すぎ、単に口径が大きくてもレンズや反射鏡の精度が悪ければ、実際の性能は分解能どおりになりませんので、カタログ数値の分解能の数値にたよって天体望遠鏡を選ぶことだけに注目するのは好ましくありません。
天体望遠鏡を使用する際の持ち運びや保管場所のサイズなど、個々人では体力差や様々な都合もありますから、そうしたことも考えに入れて、性能が良く、自分の観測目的や可搬性など総合的に判断して選ぶ必要があるでしょう。

2007年7月3日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。