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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第50回 夕暮れが早くなる

夕暮れが早い9月

秋の銀河(カシオペヤ座付近)

空気の澄んだ月明かりのない夜に見上げる星空は、天の川を含めて空に宝石を撒き散らしたようにきらきらと輝いて、飽きることを知りません。

つい先日までの猛暑がうそのように朝晩がめっきり涼しくなるのが9月。
8月の花火大会や盆踊りなど、宵(よい)の楽しみが多かった季節は過ぎ去り、9月に入ると日の入り時刻が日々、早くなり夜が早くやってくるようになります。
秋の夜長は星見をするには良い季節。さほど寒くなく、夏の星座のなごりが見られ、やがて秋の星座と天に橋をかけるように南西から北東に空を横断する天の川の姿。
静かな郊外地で一晩中、ゆっくり運行している天球の星々を眺めても飽きることがありません。

月を見る

先月、8月28日の皆既月食は、あいにくの天候で見られなかった方が多かったことと思います。私は、晴れ間を求めて岩手県花巻市に出かけ、写真のように皆既月食をとらえることができました。
皆既食の最中も月は真っ黒にはならず、赤黒くて丸いその姿は神秘的で、肉眼で見たり、双眼鏡を使ったり、また、天体望遠鏡で撮影したりと、ゆっくりと皆既月食を楽しむことができました。
その月は、今月は中秋の名月となります。
満月は9月27日なのですが、暦(こよみ)の上では2日前が中秋の名月となっています。したがって、今年の中秋の名月は、月のかたちがまん丸でなく、少し欠けているかたちです。この日の月は、夕方に見ると東の空に見られます。時間が経つにつれ、高度が上がり、深夜にはほぼ真上付近に見られ、地上を明るく照らします。昔からこの日は、お団子などのお供え物を縁側などにして、月の昇りくる様子を眺めたといわれています。


8月28日に見られた皆既月食

皆既月食は、地球の影の中に月が入り込むので、真っ黒になって闇に溶け込んでしまうかというと、そうではなく、大変暗いのですが、この写真のように色は赤黒く、闇夜の中に浮かんでいるように見られました。
撮影:8月28日午後7時46分、花巻市内イギリス海岸(北上川)にて口径10センチ屈折望遠鏡を用いて撮影(デジタル一眼レフカメラで8秒露出)」

現在は、住まいの形態も集合住宅になったり、縁側がない家屋が多くなったりしていますが、ベランダからでも公園からでもいいですから、月をながめてみませんか?
月の姿は神秘的で美しく、電気がなかった時代に月の明かりが生活に密接に関係した頃のことを思い浮かべたり、月明かりに照らされた風景を眺めたりしてみるのも楽しいものです。日々、忙しい現代人の方々も、星や月に思いを寄せて、ゆっくり月見を楽しむ余裕を持ちたいものですね。

9月の星座案内

9月に入ると、朝夕は涼しくなって、夜空もすっきりした星空が望めるようになります。
特に、夏に見た天の川の続きの部分が北東方向に伸びているのがわかります。天頂のはくちょう座から北東に伸びて、ケフェウス座、カシオペヤ座そしてペルセウス座と連なる秋の天の川は、銀砂を天上にばらまきちらしたように美しく見られます。
秋の星座には1等星が、みなみのうお座のフォーマルハウトただひとつだけで、ある意味さびしい星空ともいえるのですが、多くの2等星たちが、ペガスス座、アンドロメダ座、みずがめ座、やぎ座それにくじら座などの中で輝いています。
月明かりがなく、星座を見つけやすい時期は、月の前半、9月5日頃から9月15日頃なので、ぜひその頃に星座探しをしてみましょう。
なお、夕方は、まだ夏の星座が見られ、秋の星座は、午後10時ころに見頃となります。

9月の星座案内図

星図(白地)
白地星図
星図(黒地)
黒地星図

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※この星図は、(株)アストロアーツの天文シミュレーションソフトステラナビゲータVer.8から出力し、加工したものを使用しています。

天体望遠鏡がほしい(シリーズ第5回)

先月は、レンズの収差の中でももっともやっかいな色収差について述べましたが、今月はザイゼルの5収差について説明します。このザイゼルの5収差が色収差以外の代表的な収差で、天体望遠鏡に限らず、顕微鏡でもカメラのレンズでも、こうした収差を少なくすることがレンズ設計のカギとなっています。
(1)球面収差
球面のレンズでは、レンズの中心部を通る光と周辺部を通る光の焦点距離が異なるため、焦点が一致せず、ぼやけた像をつくり出すのが球面収差です。何枚かのレンズを組み合わせたり、非球面レンズを使ったりして、この収差を少なくする工夫を凝らしたのが実用的なレンズです。なお、放物面の反射鏡を使用したニュートン式天体望遠鏡では、この球面収差はありません。
(2)コマ収差
視野の周辺部に届く光が、レンズの中心部を通って周辺部に届く光と、周辺部を通って届く光とで、同一の場所に焦点を結ばず、像がぼけて見える収差です。
特に、ニュートン式反射望遠鏡ではこの収差が目立ちます。
(3)非点収差(ひてんしゅうさ)
レンズに入射してくるタテの光とヨコの光で焦点が一致せずに起こります。特に視野周辺部では発生しやすい収差です。
(4)像面の湾曲(わんきょく)
レンズの焦点位置が平面とならず、球面をしている収差で、この収差があると広い範囲を写す写真撮影では、写野中心部と写野周辺部で焦点の位置が異なりますので、ピント合わせがうまくできません。
(5)歪曲収差(わいきょくしゅうさ)
タイル貼りの壁面などを見たときに、目地の線はタテヨコともまっすぐ見えるべきところ、中心部が膨らんだように見える収差を樽型歪曲、周辺が伸びたように見える収差を糸巻型歪曲と呼びます。
これは広角アイピースと呼ばれる視野角度の広いアイピース(接眼レンズ)やズーム式双眼鏡などでよく見られる収差です。


ザイゼルの5収差の説明図

収差の少ないレンズが優秀!
先月説明した色収差も含めて、いろんな収差があることがお分かりいただけたと思いますが、こうした諸収差を少なくすることが、レンズの設計、製造には大事な要素となってきます。
天体望遠鏡で月や星を観測するとき、ピントの良い像を求めるのは当然のことです。レンズの出来が良くないと対象がはっきり、きりっとした像で見えません。特に高倍率での観測時にこの性能の良し悪しがはっきりとわかります。
ディスカウントショップで売られているような低価格の天体望遠鏡では性能も価格に比例して、あまり思わしくありません。
高額な天体望遠鏡を求めましょうとはいいませんが、粗悪品にはご注意いただき、名の通ったメーカー品を求めるようにしましょう。

2007年9月3日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。

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