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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)

第58回 三日月を見る

さかずきの月

5月の三日月(みかづき)は、8日が月齢2.8、9日が月齢3.8ですからこの頃、夕方の西空に見られます。天文ソフト「ステラナビゲータ8」でシミュレーションした案内図を掲載していますのでご参照ください。日没の後、たそがれ時をすぎると明るい星から見え始め、やがて満天の星空となります。5月8日の西空ではちょうど冬の星座オリオン座が沈みゆくところです。
そうした中、三日月は真西よりも北寄りの位置に見られます。しかも、三日月の切先(きっさき=刀の先端に准えて表現してみました)の位置があまり傾いていない様子がわかります。「あれっ!もっと傾いていなかったかな?」というのが5月の三日月の印象だと思いますが、春の季節の三日月はなんと、天の赤道よりもずっと北寄りにあって、まるでお酒を注ぐ「杯(さかずき)」のように見えます。ただし、これは大人のたとえですので、お子さんからみれば別のものにたとえられるかもしれません。これが、秋に見られる三日月ですと杯からお酒がこぼれてしまうような傾きとなります。
お酒がこぼれない三日月を見るのはこの季節に限られます。ぜひ、確かめてみましょう。


少ししか傾いていない春の三日月はまるで伊達政宗公の冑(かぶと)を見ているような気がします

ボアッティーニ彗星現る!

昨年発見されたボアッティーニ彗星が明るくなってきています。
といっても1997年のヘール・ボップ彗星や昨年秋に見られたホームズ彗星のように肉眼でみつけられるまでには明るくなりませんが、5月上旬には5〜6等くらいの明るさに達するものと思われ、双眼鏡があれば簡単にみつけることができるでしょう。
特に、5月前半は月明かりの影響がなく、みつけやすい条件が整っていますので予想位置図を参照しながらぜひ本物の彗星を実感しましょう。


彗星の予想位置:午後8時頃の星空です。○の位置が星空の中の彗星の位置です。
この図を参考にしながら星との位置関係を双眼鏡で確認しながら捜しましょう

5月の天文情報

今月は、5月10日の夕空に火星と月が接近して見られます。
また、5月23日には火星とプレセぺ星団(かに座)が接近して見られます。双眼鏡を使うと星団の星の集団の近くに赤い輝きの火星が煌々と輝いている状況を確かめることができます。
5月の水星は夕空に観測好機が訪れます。夕闇の西空に輝いて見え、5月14日に太陽からもっとも離れて見られる東方最大離角を迎えます。その前後数日間は観測好機といえますので、西空に注目してみましょう。
また、5月6日前後の夜にはみずがめ座η流星群が見られます。流れ星がもっとも多く見られる日にちと時刻は5月6日午前3時頃と予想されています。その前後、数日間は流星を見ることができるのですが、もっとも好条件なのは5月5日の深夜から6日の明け方にかけてとなります。長時間の観測は体力を消耗しますし、深夜のことでもありますから無理をなさらずに、たとえば自宅のベランダから1時間だけ観測するといったメニューを考えるといいでしょう。

曜日 月齢 天文現象など
1 25.0 八十八夜
2 26.0 月が天の赤道を通過(北半球へ)
3 27.0 憲法記念日
4 28.0 みどりの日
5 29.0 こどもの日 立夏(二十四節季)新月
6 0.6 振替休日みずがめ座η流星群極大(出現4月25日〜5月10日)
7 1.6  
8 2.6 月の赤緯が最北
9 3.6  
10 4.6 月と火星が接近(ヨーロッパ方面で火星食)
11 5.6  
12 6.6 上弦の月
13 7.6 月と土星が接近
14 8.6 水星が東方最大離角
15 9.6 月が天の赤道を通過(南半球へ)
16 10.6  
17 11.6  
18 12.6  
19 13.6  
20 14.6 満月
21 15.6 小満(二十四節季)
22 16.6 月の赤緯が最南
23 17.6 火星とプレセぺ星団(M44)が接近
24 18.6 月と木星が接近
25 19.6  
26 20.6  
27 21.6 月と海王星が接近(アフリカ方面で海王星が月に隠される星食)
28 22.6 下弦の月
29 23.6 月が天の赤道を通過(北半球へ)
30 24.6  
31 25.6  

5月の星座案内

5月の星空は春の星座でいっぱいになりますが、もっとも目立つのはしし座に位置する土星です。恒星では春の大三角の中でもひときわ明るく輝くうしかい座のアルクトゥールスがめだちます。
北の空では北極星を含むこぐま座とりゅう座をみつけてみましょう。それに北斗七星として知られているおおぐま座が北天高く逆さになった熊の姿で見られます。今月は星座早見などを利用して北天の星座もぜひみつけてみてください。

5月の星座案内図

星図(黒地) 星図(白地)

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※このコラムで使用している星図は、(株)アストロアーツの天文シミュレーションソフトステラナビゲータVer.8から出力し、加工したものを使用しています。

2008年5月2日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。