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ちあきの星空コラム 田中千秋(たなかちあき)


第75回 月の美しさ

中秋の名月は10月3日

今年の中秋の名月は10月3日(土)です。
中秋の名月とは旧暦(太陰暦)の8月15日に見られる月(十五夜)のことをいいます。
旧暦では7月、8月、9月のことを秋と定め、さらに7月を初、8月を中そして9月を晩と定義していました。したがって、8月は中秋となるわけです。
この旧暦8月15日を祝う風習は中国から伝来したもので、中国では月餅をお供えするようですが、日本ではススキをかざり、お団子をお供えするのがもっとも一般的なスタイルになっています。
今回の中秋の名月では月齢が14で、月齢15の満月は翌日の10月4日(日)になります。しかし、月の姿は満月の1日前でもほとんど満月に近い丸い月として眺めることができます。
月は暗い夜に星とは異なる丸い姿をして地球を照らすので昔から神秘的な存在として眺められ、風流に月を眺めたり、信仰の対象にしたり、あるいは月明かりがある夜は照明がいらずに夜間の外出が可能だったために生活にも密接して親しまれてきました。
月を眺めていろんな想像もされました。表面の模様からうさぎがお餅つきをしているとか、月には地球とは別の人々が住み、理想世界があるように西洋では想像され、さらにはその表面は水晶でできているとかいろんな想像がなされていました。
しかし、今からちょうど400年前に、初めて天体望遠鏡で月を観察したガリレオ・ガリレイは、月の表面は水晶のような輝きではなく、クレータや山脈などがあるデコボコとした地形であることを発見しました。
今、わたしたちは月探査船かぐやによって月の様子を詳細に観測することができました。月の詳細な映像をテレビやインターネットなどを通じて見ることができます。

けれども、中秋の名月くらいは、ゆっくりと自分の目で本物の月をながめましょう。
肉眼そのもので見るもよし、双眼鏡や望遠鏡で眺めてもよし、自由に月を眺め、ついでにお団子などをいただくと、とても充実したお月見になることでしょう。
それから、10月30日は十三夜を祝う風習の日で、後の月と呼ばれ、中秋の名月から約1か月遅れの日本独特の月のお祝いです。
満月のちょっと前の月を愛でるという日本独特の価値観(美意識)のあらわれだと思いますが、ぜひ、このときも月をながめましょう。

中秋の名月
昨年の中秋の名月(9月14日):
牛久自然観察の森で撮影

ガリレオの天体望遠鏡

今年は世界天文年2009として天体観測が脚光をあびていますが、その道具の天体望遠鏡は今から400年前にイタリアのガリレオ・ガリレイによって初めて空に向けられました。
ガリレオ・ガリレイは、1608年にオランダでレンズを使って遠くを大きく見ることができる器械「望遠鏡」が発明されたと知ると、すぐさま自分でも製作し、1609年に完成した望遠鏡で天体を観測したのでした。

天体望遠鏡
最近の市販天体望遠鏡の例:現在は、レンズも望遠鏡を支える架台、三脚部分ともガリレオ・ガリレイの使用した望遠鏡にくらべると格段の進歩により、高性能になっている。

ガリレオは、月のクレータだけでなく、天動説に異議をとなえ、現在では当たり前となった理論「地動説」を立証するために木星とその衛星なども観測したのです。
当時のガリレオの天体望遠鏡は、対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使用した、視野が狭くあまり倍率を高くできない、今ではガリレオ式と呼ばれているレンズの組み合わせをした望遠鏡でしたが、このガリレオ式望遠鏡で多くの天文学上の功績を挙げました。
現在の天体望遠鏡は屈折式の場合、ケプラー式という方式が採用された性能が格段に良い望遠鏡を利用しており、天体観測もガリレオ・ガリレイの観測よりもずっとすぐれた観測が可能な天体望遠鏡が手に入ります。
10月には木星が南の空で見頃ですが、天体観望会などに参加して高性能な天体望遠鏡で木星を眺めてみましょう。ガリレオ・ガリレイがはっきり確認することができなかった木星本体の縞模様もはっきりと見ることができることでしょう。

10月の天文情報

曜日 月齢 天文現象など
1 12.3  
2 13.3 木星の衛星ガニメデがエウロパを隠す(部分食)
3 14.3 中秋の名月 月が赤道通過北半球へ
4 15.3 満月
5 16.3  
6 17.3 水星が西方最大離角(明け方の東空)
7 18.3 月とプレアデスが接近
8 19.3 寒露(二十四節気) 月がプレアデスの一部を隠す(星食)
9 20.3 ジャコビニ流星群の極大
10 21.3  
11 22.3 下弦の月
12 23.3 月と火星が接近
13 24.3 土星と金星が接近 月の距離が最近
14 25.3 木星の衛星イオがエウロパを隠す(部分食)
15 26.3  
16 27.3 月が天の赤道を通過(南半球へ)
17 28.3  
18 29.3 新月
19 0.9 木星の衛星ガニメデがエウロパを隠す(金環食)
20 1.9  
21 2.9 オリオン座流星群が極大 木星の衛星イオがエウロパを隠す
22 3.9 月が最南
23 4.9 霜降(二十四節気)
24 5.9  
25 6.9  
26 7.9 上弦の月 月の距離が最遠
27 8.9  
28 9.9  
29 10.9  
30 11.9 十三夜(後の月) 月が天の赤道を通過(北半球へ)
31 12.9  

10月の星座

10月の空はすっかり秋の星座で埋めつくされ、夜長の秋にじっくりと星座さがしを楽しみましょう。
木星のあるおひつじ座の三角形のような星の配列や秋の空唯一の1等星みなみのうお座のフォーマルハウトは比較的簡単にみつけられることでしょう。
南の空では、くじら座やみずがめ座をさがしてみましょう。
天頂付近にはペガスス座やアンドロメダ座をさがしましょう。北の空にはカシオペヤ座やペルセウス座などもめだつ星の配列でさがしやすい星座といえます。
カシオペヤから北極星を探す方法も覚えておくと便利です。

10月の星座案内図

星図(黒地) 星図(白地)

※それぞれの図をクリックすると、大きい星図に変わります。印刷される場合は、A4用紙を横にしてください。

※このコラムで使用している星図は、(株)アストロアーツの天文シミュレーションソフトステラナビゲータ.8から出力し、加工したものを使用しています。

2009年10月1日

田中千秋氏の略歴

田中千秋(たなかちあき) 男
1953年大分県生まれ

子供の頃、オリオン座の日周運動に気がついたことから星に興味をもち、その後、中学生時代に天体望遠鏡を自作して天体観測や天体写真撮影を始め、以来、現在まで天体写真を継続して撮り続けている。
この間、各天文誌の天体写真コンテストに入選。天文雑誌での天体写真撮影の啓蒙記事を幾度も連載、また、天文雑誌「星ナビ」の前身である「スカイウオッチャー」誌でのフォトコンテストの選者もつとめた。
最近は、各地の星まつり等における天体写真コンテストの選者をつとめたり、天体写真教室や観望会の講師をつとめるかたわら、仲間と共同で建設した天体観測所(千葉県鴨川及び長野県東部町)や神津牧場天文台(群馬県下仁田町)に天体観測に出かけている。
主な著書に、「図説天体写真入門」、「図説天体望遠鏡入門」(いずれも立風書房刊)がある。
茨城県龍ヶ崎市在住。