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つくばでバードウォッチング 片山 秀策

第12回 タカの渡りを見に

残暑がまだ厳しい日が続いています。でも、日の出の時間がだんだんと遅くなり、日の入りの時間もだんだんと早くなって、どんどん秋が深まっていることがわかります。空気中の水蒸気も少なくなっているようで、筑波山がはっきりと見える日が多くなっています。

野生の動物たちは、日の長さを敏感に感じ取って、冬への備えを始めています。渡りをする野鳥たちは、越冬地へ向けて南下を始めています。小鳥でも数千キロの旅をする種類もいて、渡りはそれほど楽なものではありません。

今回はタカの渡りを見たいと思います。タカの中で渡りをすることでよく知られているのがサシバです。サシバは、焦げ茶色の地味なタカで、白い喉に縦の線が入っているのが特徴です。サシバは谷津田で、カエル、昆虫、ヘビ、ネズミなどを餌にして、繁殖しています。初夏に、「ピキューイ」と鳴きながら谷津の上を帆翔(はんしょう)している姿はなかなかいいものです。

サシバ♂
サシバ ♂(クリックで拡大)

サシバ♀
サシバ ♀(クリックで拡大)

日本各地で繁殖したサシバは、8月末頃からフィリピンなど南の越冬地に向かって移動を開始します。つくば市周辺では9月に一番多くのサシバが通過します。最新の情報によれば、水戸市の森林公園で8月下旬からサシバの渡りが始まっているようです。サシバの数百羽の群れが通過するサシバの渡りで有名な愛知県伊良湖岬は、10月初旬にピークを迎えます。

茨城県内のサシバの渡りのコースは幾つかあるようですが、その一つが北から筑波山を通り、つくば市上空を通過して南へ進むコースです。秋晴れの筑波山の上にできる上昇気流に乗って、どんどん高度をあげて筑波学園都市方向に滑空していきます。その時に沢山のサシバが上昇気流の周囲を旋回する様子を「タカ柱」と呼ぶことがあります。


帆翔するサシバ(中村道夫 龍ヶ崎市)

タカ柱には、サシバだけでなく、オオタカ、トビ、チゴハヤブサ、ハチクマなど他のタカが混じることがあります。これを見分けるのも楽しいと思います。

筑波山周辺のサシバ・ウォッチングポイントは、新治村の中央青年の家、朝日峠の展望公園、風返峠付近、筑波山頂になります。一番難しいのが日にちで、雨の日はもちろんですが、天気でも全く飛ばない日もあって、根気よく通うしかないようです。秋の日の一日を散歩のつもりで出かけて、双眼鏡で空を探して偶然大きなタカ柱に出会えたら幸せな気分になれること間違いありません。

サシバが筑波学園都市を目指す理由は、中心部でアスファルトとコンクリートの面積が多いので、太陽熱で暖まり上昇気流が起きやすいのではないかと想像しています。サシバは目が良いので、上昇気流が陽炎のように見えるのかも知れません。街の中で、天気の良い日に上空を双眼鏡で探して見ると、運が良ければ米粒のようなサシバが飛んでいるのを見ることができます。つくば市を通過したサシバは、利根川を渡って南へと進むようです。

筑波山周辺
【筑波山周辺】

日本野鳥の会茨城支部では、9月25日(日)に「ワシタカ類渡り観察会」を利根川・小貝川沿いの4会場で開催します。説明を受けながら観察すると、一層楽しさが増すと思います。詳細はつくばもんのイベント情報を確認して下さい。

2005年9月12日

片山秀策さんのプロフィール


北海道で暮らしていた時に、庭に来る鳥を見てバードウォッチングに開眼して以来、野鳥の虜に。

死ぬまでに日本で記録のあった鳥を全部見たいと不可能な企てに挑戦中。

日本野鳥の会茨城支部会員、NPO宍塚の自然と歴史の会監事、つくば農林野鳥の会代表幹事